ポカリスエットは陽だけで出来ていない
何気なく成分表を見てみると陽イオンと陰イオンと記載されており、うだるような蒸し暑さの雨後に、ガードレールに腰掛けながら色んなことを思った。
陽イオンの方が少し多い気がするけれど、見方すらわからない。科学には明るくないので、それが当然と言われればそれまでなのだが、素人からすると、給与として7万円くれた社長に、借りていたお金として4万円を返しているような感じがした。
3万円くれていればよかった話ではないのか。
陰と陽はプラスとマイナスみたいな意味ではないのかもしれない。
それも気になるが、そもそもポカリスエットに陰のものが入っている事に衝撃を隠せなかった。
ポカリスエットと言うのは、なんの権限なのか、仲間意識の強そうな制服を着崩した若手の男女が、学校のプールを掃除している合間に飲んだり、
大したことではない悩みを必要以上に重く捉えてしまった男子生徒が、カゴのない自転車で背よりも高い防波堤まで行って、腰掛け、海を眺めながら飲んだり、
引退後はいち早く髪の毛を伸ばし、染め倒し、女を抱きまくる事になる野球部が、先輩野球部に理不尽な叱責を受けながら焼けた腕で汗を拭い、一心不乱にトンボを掛けた後に部室で飲む飲み物じゃないか。
陰の要素が到底あると思えない。
いや、そうじゃない。恣意的に青春を揶揄した感じにはしてしまったが、よくよく考えると思春期なんてのは、春を思う時期で、つまりは性欲を象徴する時期だ。
明治時代以前のような性に奔放な時代にはおそらく存在してなかった概念で、現代社会では性とはすべからく恥ずべき欲求で、内に秘めたるものだ。
そうだとすると、思春期を代表するポカリスエットには少なからず陰のイメージが入り込んでいるはずだ。
スクールカースト上位みたいな仲間意識の強い男女が、プール掃除という行為に対して、きちんとプールをキレイにしたいと言う思いをもってやっているはずがなく、それであれば専門家や教師の監修の元、効果的な器具や薬品を使い、もっと清潔なプールにすることだってできるのに、恐らくそんなことはしたくなくて、青春を感じたかったり、仲間内の一人とどうこうなりたい。みたいな邪な思いが原動力となり、清掃行為をしているはずだ。陽の行動に見せかけて陰の思惑が入り込んでいる。
防波堤で悩んでる子も、人には言えないといういう悩みはそのまま陰の要素であると言えるし、野球部の彼もスタメン同級生に対し、妬みや嫉みを焦がし、彼女を持つサッカー部に対しても羨望の眼差しを向けているにも関わらず、その感情をスポーツの目標の中に必死に隠している。これはもちろん陰の部分である。
もし、そう言う感情がなく常に明るく何にも悩まない人間がいたとしたら怖いし、それはそれで人から見れば巨大な陰と判定されるだろう。
人間としては程よい陽と程よい陰が混じり合った不完全なものこそ美しいのだろう。
陽イオンと陰イオンが織りなす不完全で甘酸っぱく、ベトベトした人間に一番近い水。
それがポカリスエットだ。是非、そんなことを思って飲んでみてほしい。