226.勝手に仏像の頭を変えるな!〈仏像と著作権侵害事件〉
1.韓国でハローキティちゃんが勝訴した
2008年12月4日。ソウル中央地方裁判所は、訴えを起こした原告の敗訴の判決を下した。同裁判所の争点は、ハローキティのキャラクターが人気ドラマの主人公を想像させる衣装を着ている点などが無断使用になるかどうかという点にあった。
同裁判所は「著作権を主張するには、その人物の個性がなければならない」とし、『冬のソナタ』の主人公が着ていたコートやマフラーだけでは、著作権は発生し得ない」と判決理由を述べた。
さらに、チャングムなどに関しては「実際の俳優の外見と、キャラクターが韓国の伝統衣装を着ているイメージでは、受け取られ方にあまりにも差がありすぎる」とし、「実質的な類似性は認められない」とし韓国経済新聞が伝えた。
つまり、著作物を比較対照して「混同を生じるかどうか」「似ているかどうか」「類似性があるかどうか」という点に於いてすべて該当しないということだ。
購入する人々はチュモン人形を買うのではなく、キテイちゃんを買う。
キテイちゃんがチュモンぽい、ヨン様ぽいから買っているのであって、まったく異なる異質の著作物だということは誰にでもわかるということ。
おそらく、原告側はテレビドラマがヒットした便乗商法だと解釈したのだろう。
9・勝手に仏像の頭を変えるな!〈仏像と著作権侵害事件〉
東京・文京区の光源寺の観音像 ( 駒込大観音として知られている ) を巡って著作権裁判が行なわれた。
この仏像は仏像彫刻家の故西山如雲氏の弟、西山三郎氏が制作した浄土宗「光源寺」の十一面観音菩薩立像 ( 高さ約8メートル ) の仏頭をすげ替え、拝観させているのは著作権侵害に当たるとして、三郎氏が寺などを相手取り、仏頭の復元を求めていた訴訟の判決。
平成21年5月28日に東京地裁で著作権侵害を認め、仏頭を戻すよう命じた。
しかし、この仏頭のすげ替えはなぜ起こったのだろう?
また、仏頭に著作権が本当にあるのだろうか?
この観音像は江戸時代の1697年に建てられ、地元では「駒込観音」と親しまれていた。しかし、1945年5月の空襲で焼失したため、如雲氏らが1987年に再建を引き受け、1993年に完成させたもの。
判決によると、寺側は檀家などから観音像の睨めつけるような表情を変えてほしいという要望を受けて、2003年から如雲氏の弟子だった仏像彫刻師の岩渕俊亨氏が頭部を作り直した。
この事件にはいくつかの面白い部分がある。それは、江戸時代に制作された仏像に著作権はないはずだから。
しかし、裁判では著作権侵害を認めた。
ここでわたしたちも気をつけねばならない点がある。
東京地裁の大鷹一朗裁判長は「仏頭が、如雲氏の思想や感情を表現する上で重要なのは明らか。すげ替えは重要部分の改変に当たる。仏頭は寺で保管されており、元に戻すことは可能だ」と指摘した。
裁判ではあまり細部に渡っては記録されていないが、江戸時代に作られた著作物には著作権はない。
それなのに、なぜ著作権侵害として扱われたのか?
ここで全体を解説、整理してみよう。
当然、著作者の死後50年で著作権が切れているわけだから、誰もが自由に使用することができる。ただし、お寺に保存されているものは、そのお寺に所有権があるわけだから、その仏像を使用する場合は、そのお寺の許可が必要になる。
また、そのお寺に所有権があったとしても著作権があるわけではない。あるのは所有者としての所有権だけ。
ただし、この仏像の創作者の如雲氏がこのお寺に著作権譲渡をしていたなら著作者はこのお寺にあり、所有権と著作権と同時に持っていることになる。
しかし、現実的に著作権を持つお寺はほとんどないかもしれない。
なぜなら、この法律ができてからまだ100年を超えたぐらいだから。
では、著作権が譲渡されていないのに、なぜ著作権の侵害なのだろう?
この観音像は1697年に建てられ1945年に空襲で焼失し、如雲氏らが1993年 (平成5年)に再建し、新たに完成したわけだから、著作権は如雲氏にある。
さらに、如雲氏の兄弟がこの制作に加わっていることから、共同著作物といえるかという点もあるが、実質、この著作物に関わって創作した者は如雲氏個人であると思われる。
また、その著作権が譲渡してあったとしても、著作者人格権が残っているわけだから、元の著作者の許可なく無断で改変、改良することは著作者人格権侵害になる。
この場合、無断で頭をすげ替えてしまったのだから、著作権侵害及び著作者人格権の同一性保持権の侵害行為となる。判決によると、この観音像は同寺の先代住職の依頼により平成5年に完成。
その後に継いだ現住職が、如雲氏の弟子だった彫刻家に頭部のすげ替えを依頼した。訴えは、亡くなった如雲氏の遺族からだった。遺族は2006年ごろすげ替えを知り、2007年に提訴に踏み切っていた。
このように、著作者の死後に著作権が侵害された場合は、遺族が原状回復を請求することができる。
この著作権侵害事件は非常にめずらしい事件のひとつといえる。
※注 この著作権noteは1999年からの事件を取り上げ、2000年、2001年と取り上げ続け、現在は2002年に突入。今後はさらに2003年から2020年~2022年に向けて膨大な作業を続けています。その理由は、すべての事件やトラブルは過去の事実、過去の判例を元に裁判が行われているからです。そのため、過去の事件と現在を同時進行しながら比較していただければ幸いでございます。時代はどんどんとネットの普及と同時に様変わりしていますが、著作権や肖像権、プライバシー権、個人情報なども基本的なことは変わらないまでも判例を元に少しずつ変化していることがわかります。
これらがnoteのクリエイターさんたちの何かしらの参考資料になればと願いつつまとめ続けているものです。また、同時に全国の都道府県、市町村の広報機関、各種関係団体、ボランティア、NPО団体等にお役に立つことも著作権協会の使命としてまとめ続けているものです。ぜひ、ご理解と応援をよろしくお願い申し上げます。
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