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理想の30代への分岐点
仕事を辞めた理由は色々あるけど、
「今」辞めた理由は27歳になってしまったからだと思う。
■ 若さという免罪符を失う
私は大学を卒業して、22歳で就職した。
22歳の女はいろんな面でお得だ。ミスをしても「入社一年目だから仕方ないね」「まだ異動してきたばかりだもん、失敗して当然だよ」「まだ20代なんだから、色々できるよ」と周りが励ましてくれた。
でも、そうやって周囲が優しく接してくれるのは、私個人の人間性(性格や愛嬌、コミュニケーション能力など)に価値を見出してくれたからじゃなく、私の属性が「若い女」だからだ、という事を私は知っていた。
■ 年齢と属性
私は入社3年目に、管理職との関係性が上手く築けず、適応障害で半年間休職した。そのとき、私は25-26歳だったから、まだ仕方ないかと思えた。
もちろん、自分の状況を悲観して、
ダサいな~お先真っ暗だ~消えてぇ~とも思ったけど「入社3年目の女がメンタル不良をおこす」は良く聞く話だったから、そこに幾分救われた部分がある。私が35-36歳だったら、もっと精神的にキツかった。世間の目がもっと気になったはずだ。
それで私は、管理職を悪く言うことを躊躇した。
管理職を「サイテー糞人間なんです」と言うと、逆に惨めだったし、ソイツとのトラブルで負けて心身的に参ってしまった事が確定するから口に出せなかった。
そしてもう一つ、
「かわいそうになってしまった」という理由もある。
私はソイツが大嫌いだったけど、50代半ば・管理職・小デブでハゲ頭のその人は、属性が諸に糾弾される側だった。
私が「攻撃されました」と主張するのはなんだかグロテスクに感じて、人事面談では管理職との関係性を持ち出せなかった。
結局、最後まで「謎の体調不良」で押し切った。
■ 年齢コンプレックス
私は復職した。27歳になった。
私の属性の価値は目減りしていく。
それは恐ろしいことだった。
「これまで許されたことが許されなくなるかもしれない」「今まで優しかった人がもう優しくしてくれないかも知れない」「これまで求められていた以上に、実際的な価値が求められてしまう…」
そう妄想をする日が増えた。
27歳は、30歳のニュアンスをかなり色濃く含んでいる。危機感を覚えた。
■ 理想の30代って何だろう?
私にとって、素敵だなーと思える
「理想の30代」は3択だった。
①家庭に幸せを見いだす
②仕事に幸せを見いだす
③趣味に幸せを見いだす
このいずれかに該当していれば、なんとなく素敵な印象を受ける。
逆に、どれも持っていないと、ただ年齢を重ねてしまっただけのおばさんになってしまう気がした。幸福感が薄れ、他人を羨み、愚痴と世間話が唯一の人生の彩りであるかのようにペシャるおばさんだ。イヤだなーと思った。
もちろん「家庭に入らず、仕事もそこそこで切り上げて、無趣味な女」が駄目ってわけじゃないけど、自分がそうなりたいかと言われると、それはちょっと…と思った。
それで私は理想の30代になるための3択を検討してみた。もう答えは出ていたけど、一応ね。
1.家庭に幸せを見いだす
素敵な30代の女を想像するとき、
まずは家庭に幸せを見いだす方法がある。
27歳にもなると、同級生の中には結婚して、家を建てて、子どもが一人どころか二人いる人も出てくる。高校を卒業するくらいまでは同じペースで人生を進めていたはずなのに、なんでこんなに進捗が違うんだ?と焦ってしまう。
いや、よく考えたらあの頃から、学業と恋愛の両立を彼女たちはできていたのかもしれない。
私が部活に前のめりになる中で、将来を見据えて「素敵なお嫁さんになる」「若くてかわいいお母さんになる」「温かい家庭を築く」を目標に向かって、着実に駒を進めていたのかも知れない。
かなり出遅れてはいるけど、27歳の今から全力で婚活に踏み切るという道もあった。
恋活市場では年配かも知れないけど、婚活市場なら「20代と結婚したい30代の男」を中心にまだ引く手あまただろう。結婚相談所に駆け込めば、私は家庭に幸せを見いだすルートにいける可能性があった。
でも、対外的に「幸せそう」を演出することはできても、自分は幸せになれない気がして、却下した。
たぶん私は、自分が家庭に入ったら、子どもに嫉妬してしまうと思った。未来があっていいなー、何にでもなれていいなーって。
だから、やめた。家庭を持つのは、人生の主役を子に譲れるだけ、自分の人生を全うしてからがいい。
もちろん、妊娠可能な年齢は決まっているから、タイムリミットはあるけど。私はまだ、自分の事に必死になっていたかった。
2.仕事に幸せを見いだす
次に、仕事に幸せを見いだすという方法がある。
私が選んだのはコレ。
私は今の職場で事務を担当し続けても、きっと使えない人間になるのが目に見えていた。うちの職場は年功序列だったから、きっと役職だけが上がって、仕事は全然できない嫌われ女が爆誕するんだ。
「あの人には言ってもムダだから」と言われるんだろうなーというのが想像できてしまって、それはすごく苦しかった。
でも、広報の仕事はできた。
企画、取材、撮影、執筆、レイアウト、広報に係わる仕事でなら「あの人に任せとけば大丈夫じゃね?」と言ってもらえるナイスキャリアな女になれる気がした。
「仕事に幸せを見いだす」と言うと「大手勤務のバリキャリ」とか「自分でビジネスを立ち上げる女社長」とかが連想されるけど、私の規模感はもっと小さくて「仲間内で信頼される小器用なビジネスウーマン」くらいで十分だった。
「中途採用に年齢制限は無い」なんて論調もあるけど、実際はあると思う。「35歳転職限界説」なんてのも聞いたことがある。広報でキャリアを築く方に舵を切るなら、急がないといけないと思った。
ってかそもそも、35歳まで仕事ができない女として生存するのが無理すぎる。
私の中で、30歳はとんでもなく大きな区切りだから、30歳までに自分のキャリアの見通しを立てたかった。成功してなくても、正しい方向に向かっているという実感は30までに確保しておきたかった。
そのためには、今じゃん。今動かなかったら、私の人生オワリじゃん、そう思って、先行き不透明のまま、身投げするみたいに退職届を出した。
(今のところ、後悔は無い。)
3.趣味に幸せを見いだす
最後に、趣味に幸せを見いだす方法もあると思う。
「推し活女子」というやつ。
私はこの生き方もアリだなーと思っている。才能が無いから選ばなかったけど。でも、好きなアニメやアイドルを応援して、それをパワーに毎日を生きている人たちも十分幸せそうだなーと思う。
推し活勢の中には、結婚や子育てにまるで興味が無い人もいるし、周囲と比較して落ち込む機会も少ないかもしれない。家庭に入らなくても一緒に趣味を楽しんで日常を共有できる友だちがいれば社交欲は満たされるだろうし。家族と違って適度な距離感で接する事ができて、心地良さそうだ。
推し活女子の中には、二次創作に励んだり、オフ会をしたり、グッズをつくったり、コスプレしたりする人もいて、そのエネルギーたるや凄まじいなぁと感じる。
私は、そこまでの熱量を
作品やキャラクターに対して持てた事が無い。
たぶん、そういう人たちは外側に愛情を向けるのが得意なんだと思う。私とは意識のベクトルが真逆。
私の愛情は、自分に向きすぎている。
だから、お金を使うなら推しより自分に使いたいし、寧ろ「自分自身が推しです」とすら思う。
だから推し活女子になるのは諦めた。
私がそれを目指したら、ただのナルシストだから。
同様に、どうしようもなくペットが好きな人、ゴスロリファッションが好きな人、ZINEづくりが好きな人、農作業が好きな人……なんでも良いけど、とにかく好きなモノやコトがあってそれに没頭できる人生なら、それはそれで素敵な生き方だなと思う。
■ おわりに
退職するとき、上司に聞かれた。
「何も決めないまま辞めて不安じゃ無いの?」
私は、そのまま失敗する事が決まり切った人生に乗っかっている事の方が怖かった。でも、辞める事に不安が無かったわけじゃ無い。だから「時間帯によります」と応えた。
続けて上司は「これからどうなりたいとか、理想はあるんでしょ?一応。」と聞いてきた。私は色々考えたけど、今列挙したような頭の中身を全部口にするのも違うなと思って「なんか、自分の人生に誇りとかもちたいですねー」と応えた。
第三の私が頭上にモワンッと出てきて
「馬鹿馬鹿しいこと言うなよ」と苦言を呈してきたから、私は応えながら爆笑してしまった。
情緒不安定なヤバい奴に写ったと思う。
でも、本当の事なんだよな。
私は自分の人生に誇りとかもちたいんだよ。
その方法は、幸せな家庭を築くでも良いし、仕事で必要とされるでも良いし、趣味を充実させるでも良い。何か、見つけたかったんだ。
来年には、その輪郭が掴めると良いな。
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