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天鬼vs六年生バトルシーン『劇場版忍たま乱太郎 ドクタケ忍者隊 最強の軍師』

これは天鬼と六年生のバトルシーンに特化した感想です。
鑑賞4回目の後にX(旧Twitter)に投稿したもの(5回目と6回目鑑賞後に追記)を、鑑賞10回を超えたのを機に加筆・修正のうえnoteにアップしました。
ネタバレしかないので鑑賞前の方はご注意ください。
なお、X投稿時に「ふせったーに入り切れない」と言っていましたが、勘違いでした。
ふせったーには最大10万文字まで入るそうで、単に私が使い慣れてなかっただけです。
この場を借りてお詫び申し上げます。
「恥ずかし~!」(CV松千代万)

また、バトルシーンの冒頭部分は公式がYouTubeにアップしてくれているので、このnoteを読むよりそちらをご覧になるほうがお薦めです。


六年生の出撃シーンは「見たかった」シーンの連続!

最初に「見られて良かった!」と思ったのが文次郎が袋槍を槍の形状へと仕立てる一連の流れ。

まず、柄にするための木を選び、切り取る。
ここで袋槍の切れ味がわかる。
なかなかの鋭さである。
アニメ本編ではいつも袋槍で留三郎とやり合っているが、こんな危険な武器を喧嘩に使っていたとは。
もんじおまえ、留三郎を殺す気か。

その後穂先のはめ口に枝を差し込み、釘で留め付ける。
口に咥えた釘を抜き取る文次郎がかっこいい。
仕立て方を知ってはいたが実際に動く絵で見せてくれたのは非常にありがたかった。

今回見られて良かったもののもう一つが、忍び装束の構造。
常の服装から忍びの服へと着替えるとき、留三郎の常の服の裏が忍び用の緑色になっているのがわかる。
また、忍び服に袖を通す伊作の、服の裏側がピンク色(常の服)であるのも見える。

彼らが表裏で違う姿になる服を着用していることは、原作小説はもちろんTVシリーズでも言及されていたと思う。
実に忍者らしい工夫のひとつだが、それを短い尺でさらりと説明する演出は素晴らしい。

素晴らしいといえば、このシーンの留三郎は信じられないくらいかっこいい。
脱ぐ担当?に留三郎を選んだ人は天才である。
X投稿時「4回見たが4回とも卒倒しそうになった」と書いたが、10回以上見た今もやっぱり卒倒しそうだ。
早く円盤出してください。
止め絵で見たいです。

各々装束を整え、得意武器を確認、軽くウォーミングアップする。
竹で縄鏢を試し打ちする長次。
袋槍もだが、縄鏢もその鋭さを実感できるシーンとなっている。
彼らがいかに危険な武器を使っているかを改めて思い知らされた。
忍者なんだなあ……。

ここで、映画化されたらぜひ見たい!と願っていた、苦無の輪に指をかけてクルクルする小平太が描かれてとても嬉しかった。
マジで! 小平太は劇場版になるとどのキャラにも増してかっこよさが爆上がりする、ずるい奴である。
いいぞいいぞ、いけいけどんどーん!

先に準備の整った5人は、話しながら文次郎の支度を待つ。
この間、伊作はずっと画面外に視線を送っている。

これは非常に巧みな演出で、映像に映っているキャラ達の会話を聞きつつ、観客は伊作の視線の先にいる文次郎の存在を意識出来るようになっている。
文次郎がどの位置にいるか、何をしているか、を無意識に感じ取れるのである。

大きなスクリーンさえも飛び出し、劇場という広い空間までをも利用した、見事な演出だと感じた。

それにしても、敵の真っ只中に忍び込もうという場面にあっても、伊作の表情は緊迫感からほど遠い。
このほんわかした柔らかさが彼の最大の魅力ではあるけれど、ちょっと心配になってしまう。

全員が揃い、走り出す一団。
そこに天鬼が襲いかかる。

突如現れた敵に対し、素早く前線に出る文次郎、小平太、留三郎の3人。
やはり近接戦を得意とし戦闘力も高い彼らが、率先して戦闘を請け負う役割なのだろう。

遠距離から攻撃出来るためやや後方に控える長次。
大勢を見極め指示を出せる冷静さと判断力、一発で形勢を変え得る武器を持つ仙蔵は後方に。
また、あまり戦闘向きではなさそうな伊作も表には出ない。

何も言わずとも自然に役割分担がなされる六年生がかっこいい。
長く共に過ごし、互いの能力・得手不得手を熟知している者同士の連携が感じられる。

ところで、伊作は一見戦闘向きではないものの決して“弱い”わけではないことも今作で描かれている。
これについては後ほど言及したい。

「(ここは私達が足止めするから)お前達は詰所へ」と指示を出すのが小平太であるのは超絶高ポイント。
前作「全員出動!の段」でもそうだったが、ふだんは塹壕を掘りまくり物を破壊しまくるしか能がない(←言い過ぎ)小平太が、たま〜に見せる意外な一面に我々はハートを撃ち抜かれるのだ。
まさにギャップ萌え極みの男である。

このシーンでは留三郎も軽く後ろを促す仕草をしているが、たったこれだけのやり取りで瞬間的に役割分担が出来てしまうのが六年生の凄いところ。
五年生だと行動を起こす前に言葉で意思疎通し合う様子がしばしば描かれる。
優秀な五年生だが、こういうところに一学年の差を感じる。

駆け出す後方組3人の行く手を天鬼が阻む。
怒濤のアクションシーンの幕開けである。

6対1でも圧倒的な力量差~バトル前半~

危ういところで天鬼の太刀をかわす伊作と長次。
仙蔵が手裏剣を打とうとするが、天鬼の棒手裏剣で牽制されてしまう。
仙蔵の身体にドスドスと刺さる棒手裏剣。
重みと衝撃を感じさせる作画が素晴らしい。
てか、予告編よりめっちゃ多く刺さっとるやんけ。
仙蔵の細い身体にこの刺さり方はエグい、やめて、死んじゃう。

縄鏢の攻撃をやすやすとかわし、さらに棒手裏剣を打つ天鬼。
長次も肩に傷を受ける。
尊奈門くんに投げたチョークが手裏剣にかわるとこんなにも恐ろしいものなのか。

流血が予告編よりかなり多いのには驚いた。
文次郎が倒れ込んだ際、竹の切り口で脇腹を切るシーンには肝を冷やした(血飛沫とび散ってるの怖)。

私が子供の頃の話で恐縮だが、友達が飛び降りた先に運悪く竹の切り口があったことがある。
竹は足の甲まで突き破った。
竹の切り口は非常に危険なのだ。
あと数センチずれていたら文次郎は死んでいたかもしれない。

閑話休題。

留三郎も文次郎も赤子の手をひねるが如くあしらわれ、すばしっこく勘が鋭いはずの小平太も天鬼の動きに追い付けない。

天鬼が文次郎、留三郎、小平太を同時に制圧するシーンは圧巻だ。
ここではまず天鬼が左手で袋槍の柄を掴み、槍の穂先を打ち下ろされた鉄双節棍の棍同士を繋ぐ輪に通したうえで、槍に巻き取っている。
そして右手の太刀を小平太に突き付け、動きを制する。

袋槍と鉄双節棍の絡みのカットは一緒に見た人が指摘してくれて初めて気づいた。
ここは何度見てもよほど注意しないと気づくのが難しそうだ。
小さな輪に一瞬で槍の穂先をくぐらせるとか……天鬼の動体視力はどうなっているんだろか。

三つ巴、四つ巴の戦闘の作画は本当に凄い。
目にも止まらない高速の場面転換に声を合わせられる声優さんたちも凄い。
さすがプロである。

仙蔵が力量の差を見極め退却命令を出すも、引くことすらままならぬほど矢継ぎ早の攻撃が繰り出され、翻弄される六年生たち。

留三郎は顔を蹴られ、文次郎は背中を踏まれ、小平太も二丁苦無で受け止めるのがやっと。

しかし伊作の投げた石礫(いしつぶて)により天鬼との間合いがあく。
不運が発動してしまうが、伊作のエイムの良さが光るシーンでもある。
文次郎、小平太、留三郎も投石し、仙蔵の打つ手裏剣や縄鏢も加わって、しばし天鬼も防戦体制となる(なんで竹の上に足だけで留まれるんですか天鬼さん)。

僅かに生じた隙を狙い、長次が天鬼の手から本を奪い取る。
が、天鬼はすかさず長次へと斬りかかって来た。

本の影からぬっと天鬼が現れる演出は怖い。
まるで「だるまさんがころんだ」をやってたら思いがけず近距離まで近付かれていた時のようだ。
遊びなら良いが今迫って来るのは確実にこちらを殺しにかかっている相手。
恐怖しかない。

すんでのところで留三郎が長次を庇いに入る。
小平太も二丁苦無で応戦する。

空中から振り下ろされる天鬼の刃を受け止めるのが留三郎なのが良い。
六人の中で一番背が高く、体格の良い留三郎でさえ、受け止めるのがやっとなほどという天鬼の攻撃の重さが伝わってくる。
片手で刀を振るっているにもかかわらず、である。

そして文次郎の突き出した槍によって、天鬼の正体が明らかになる。

殺意を明確にした天鬼の恐ろしさ~バトル後半戦~

ほっとする6人は師に呼び掛けるが、どこか様子がおかしい。

土井先生だとわかったときの六年生の反応には、キャラそれぞれの個性が出ていて面白い。

皆、何か変だと感じつつも事態がよく飲み込めないでいる中、仙蔵がいち早く危険を察知する。
だが、天鬼が真っ先に斬り掛かったのは伊作だった。

ここで天鬼が最初に潰しにかかるのが、殆んど戦闘に参加しなかった伊作なのが興味深い。
思うに伊作の投げる石礫がよほど厄介だったのだろう。
石礫のせいで間合いを取らざるを得なくなったからだ。
接近戦ならば敵ではない相手も間合いに入れないことにはどうにもならない。
一番邪魔な攻撃をしてくる者を真っ先に始末するつもりだったのだと思われる。

基本後方支援に徹し戦うイメージのない伊作だが、十分に優秀であることがうかがえるシーンだ。
状況に応じて的確に前線の仲間を支援できるのが伊作の強さなのかもしれない。

また、伊作は斬りかかられた際に咄嗟に刃をかわしている。
髷をバッサリやられるのだが、身を伏せなければ首を掻き切られていた太刀筋である(怖)。
注目すべきは他の六年生は天鬼の攻撃に反応が間に合っていない点だ。
既に臨戦態勢に入りつつあった仙蔵ならいけたかも知れないが、隣にいた長次(※1)は反応できておらず、小平太が庇いに入らなければ斬られていただろう。

※1:X投稿時は伊作の隣にいたのを小平太と誤認していました。正しくは長次、さらにその隣が小平太でした。

伊作は不運のせいで成績は悪いものの技や術のキレは良いと小説などで語られているが、実は“センス”は他の5人より秀でているのかも知れない。

尼子先生プロット回「若い人の段」で、池に突進して行く一年時六年生ズの中、伊作は眼前の池に気付いて仙蔵を止める素振りを見せている。
また、土井先生の動きを他の同級生より目で追えている節もある。

数々の不運に見舞われながらも六年生まで進級したのだから、やはり不出来なわけはないのだろう。
医学薬学に精通しているだけではない、善法寺伊作の強さがうかがい知れて嬉しかった。

さて、長次を庇った小平太は、天鬼の太刀を防ぎきれず胸元を大きく切られてしまう。
ここからの展開は高速すぎて、ひととおり流れが把握出来始めたのは鑑賞7、8回を数える頃だった。
いちおう流れを列記しておく(間違ってたらすみません)。

伊作が首を狙われ、避けて髪を切られる

続けて長次が狙われ、小平太が長次を守り、二丁苦無で刃を受ける

小平太、天鬼の刃を防ぎきれず胸元を大きく切られる

留三郎が後ろ手になりながら鉄双節棍で刃を受ける

その刀を文次郎が袋槍で抑える

天鬼が文次郎に目つぶし、左目をかすめる

その刀を留三郎が鉄双節棍で払う

袋槍の柄が切断される

留三郎が天鬼に鉄双節棍を振るが天鬼はジャンプ、向かう先は小平太と長次

小平太に覆いかぶさる長次。2人と天鬼との間に宝禄火矢が投げ入れられる

落ちてきた宝禄火矢を見て、慌てて四散する六年生と天鬼。
だが爆発したそれは見た目と違い、煙玉とでも言うべき代物だった。
騙されたと知り後を追おうとした天鬼の前に、再び宝禄火矢が投げ込まれる。
今度は光が強く、威力も高かったため、天鬼は6人を見失う。
こうして六年生はなんとか強敵から逃げ切った。

6人が忍術学園の者と知ってからの天鬼は殺意剥き出しで、速さも威力も格段にアップする。
あっという間に六年生を無力化していくさまは恐ろしい。
メタ的にそうはならないと分かっていても、伊作は斬首されたかもしれないし、文次郎は目を潰されたかもだし、小平太と長次は両断されていたかも……と想像すると、ほんと助かって良かった!と思ってしまう。

対して、わけがわからぬまま激しい攻撃に晒される六年生は本当にかわいそうだ。
白装束の男が土井先生とわかった途端、警戒心ゼロ、すっかり子どもの顔に戻ってしまった彼ら。
「先生!」と呼び掛けながら応戦する表情には、先ほどまでの“忍者”としての厳しさはない。
この時の劇伴のタイトルは『哀しい戦い』というそうだ。
どんなに悲しかったことか……。
天鬼/土井先生を演じた関俊彦さんも、雑誌のインタビューで「関俊彦個人としては、このシーンの六年生が可哀想すぎてね」「六年生の気持ちを思うと、言葉がないというのが僕の本音です」と語っておられた。(※2)
関さんって本当に優しい方なんだなあ……。
その優しさに救われます。

※2:「アニメディア2025年2月号」より

終盤の好きなシーン2選+α

宝禄火矢のシーンは仙蔵の冷静さが光る。
まず煙玉的なもので退路を開き、その後より爆発力を高めたもので敵を足止めする(うまくいけば威力を削ぐ)のだが、この緻密な作業を混戦の中でやってのけている。

そのうえ仲間をも騙す周到さ。
最初の宝禄火矢を放った際、仙蔵は「しまった!」というような表情をしている。
そんなつもりはなかったのに間違って着火させてしまった、との体を装っているのだろう。
文次郎も「バカヤロウ!」と仙蔵を責めており、完全に騙されている。
敵を欺くなら味方から。
しかも相手は強敵。
生半可な策では悟られてしまう。
こんな芸当ができるのは仙蔵くらいしかいない。
忍術学園一優秀で冷静な、仙蔵らしさが存分に発揮されたエピソードである。

少しシーンを戻して。

宝禄火矢の爆発寸前、切られた小平太を庇う長次が良い。
天鬼の刀を武器で受けることもせず、ただ小平太に覆いかぶさっている(長次は縄鏢使いなのでそれで刃を防ぐことは難しいとしても、苦無くらいは持っていると思われるのにそれも使わない)。
捨て身になってでも友を守ろうとする、長次の人柄が滲み出ている。
六年生キャストの舞台挨拶で小平太の中の人が「ズキュンとなった」とおっしゃっていたが、このシーンを見れば誰もが胸を熱くするのではないだろうか。
そもそも小平太が切られたのも、長次を庇ったからなのだ。
互いに身を挺して庇いあう2人。
六年ろ組の2人の絆の強さがうかがえる、今回の映画の中でも特に好きなシーンのひとつだ。

少々余談になるが。
このあと、髷を切られた伊作が動くたびに短い髪をピョコピョコさせているのがとても可愛い。
うさミミか、ポメラニアンの尻尾みたいだ。
留三郎とあまり変わらない長さなのに留のと比べてめっちゃ動くのは、それだけ髪質が柔らかくほわほわなのだろう。
可愛いが過ぎる。
伊作は最初から最後までひたすら可愛かった。

印象的なスローモーション演出から感じたこと

最後に、演出で印象的だったことをひとつ。

宝禄火矢の第一弾が地面へと落ちる場面は、天鬼vs六年生のバトルシーンの中で唯一(※3)ここだけスローモーション演出がなされている。

※3:X投稿時は「この映画の中で唯一」と書きましたが、実際は他にも何箇所か使われています。山田先生が桜木清右衛門を投げ飛ばすシーン、雑渡昆奈門が利吉にアッパーをお見舞いするシーン、八方斎が仰向けにひっくり返るシーン、きり丸が「あげる」に胸を撃ち抜かれるシーン等です。ただしどれも短く、一番尺をとってスローモーションが使われたのが宝禄火矢のシーンと思われます。

見せ場を作るのに効果的なスローモーション演出は多用されがちだが、一箇所に絞ったことで、非常に印象的なシーンとなった。

導火線から火を放ちつつ落下する宝禄火矢。
それを目で追う者の「やばい!」と焦る顔。

スローモーションによってキャラのただならぬ表情がしっかり見えるため、緊迫した状況であることが見ているこちらにも伝わってくる。

緊迫感が伝わるから、あの天鬼ですら思わず身を引いてしまうことに納得ができる。

さらに、切羽詰まった表情を見せることで、宝禄火矢が実際はひどく危険な武器であることも表現されている。
TVの厳禁シリーズでは景気よく爆発させまくっているが、リアリティーラインが上がればとてつもなく怖い武器なのだ。

余談になるが、体力がなく実技についていくことすらままならなかった仙蔵が、これほど強い武器で戦えるようになった経緯を考えるとエモが深い。

「最強の軍師」のアクションシーンはどれも動きが速く、目で追うのが難しい。
スローモーション演出はふつうにかっこいいし、観客に動きを理解させるためにもっと多用するという考え方もあるだろう。

ただ、制作陣は観客の目が追い付かないことを承知のうえで、このスピード感を貫いているように思った。
変に流れを緩めないお陰で作品全体のテンポがよく、疾走感にあふれている。
なによりキャラたちの素早い動きは実に“忍者”らしい。

これは「忍者映画」だ。

目で追えないほどのスピードは、一つひとつの動きを見せることより“忍者らしさ”を見せたい、との制作陣の思いの表れのような気がした。

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