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『世界の約束』にあるたったひとつのメッセージ
ジブリ「ハウルの動く城」の主題歌である「世界の約束」に込められた、たったひとつのメッセージに私がどう辿り着いたか?の記録です。
まえがき
倍賞千恵子さんが歌うこの曲をはじめて聞いたとき、この映画で使われたこの曲の本質に気づいて身震いしました。
なぜそう感じたかわかりませんでしたが、あとで追考を繰り返してその理由と背景がわかったので書きとめます。
理論的にどうとか、感情移入してどうとかではなく、なんだろう、曲が音楽(歌を含む)の総合力を駆使して作られていればヘタな小手先のテクニックなど関係なしに「込められたメッセージが伝わる」ということでしょうか。
自分が音楽を専門にやってきたからか?と何度も思いましたが、追考を繰り返していくうちにやっぱりそうではないと確信できたので書き残します。
曲の背景
Copilotくんに聞きました。
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裏を取ったので👆の解釈はあっています。この曲を紹介した毎日Jukebox👇
でも作曲者の木村弓氏のバージョンを載せています。作詞・作曲とも「ハウルの動く城」とはまったく関係ないところで作られた曲です。
歌詞
谷川俊太郎氏が作詞。追考にあたり歌詞は大切なので引用します。
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この曲の本質はこの歌詞のなかにあるたった一つのフレーズにあります。
ハウルの動く城に採用したきっかけ
Colilotくんに聞きました。これも裏を取ってます。
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で、裏取り中に👇の記事を見つけたのでご紹介。
曲の構成
普通の3部形式でシンプルです。
イントロ→Aメロ→Bメロ→Aメロ→間奏→Aメロ→Bメロ→Aメロ→アウトロ
👆一部Bold体で太くしてますがこれは意図的です。あとで説明します。
ここではオリジナルバージョンのみ貼っておきます(Youtube 👇)
アレンジと構成部分詳細
クラシカル手法をうまく使った、ストリングスを効果的に移動させた久石譲氏らしいアレンジです。久石さんこの曲のアレンジ楽しかったろうなぁ。自分もこんな曲に巡り合ってみたい(笑)。
イントロ
少ない音数のピアノから始まる上昇下降コードに続いて、ストリングスオーケストレーションが壮大な曲を思い出させる
Aメロ
2小節ごとのコードの明暗順が 明→暗→暗→明 を繰り返し、それに歌詞の内容が合致
Bメロ
明、暗が入り乱れたパタンを繰り返し、歌詞の表現を一切邪魔しない。
Aメロ
最後のコードだけが暗になり、歌詞の内容と合致。
間奏
今までのメロディとは対照的な和声的な進行を使って壮大なスケールを醸し出す
Aメロ
最初のAメロに比べてベース音がない不安定感が歌詞の不安さを煽る。途中でベース音が入りBメロへ。
Bメロ
1回目のBメロと同じだが、最後のフレーズの一箇所だけが音が上がる
Aメロ
最後のコードがやっぱり暗。でもそのコードに行き着く前にゆっくりのテンポになり、最後の暗のコードに行き着いて倒れる。
アウトロ
暗のコードを回収し、ゆっくり昇華して終わる。
前に説明した「イントロ→Aメロ→Bメロ→Aメロ→間奏→Aメロ→Bメロ→Aメロ→アウトロ」の太字の部分は、この曲で特に大切なコードの音、フレーズの変化部分を指しています。
よくある歌謡曲じゃないかという声もあります。
しかし、
・歌詞の意味
・言葉の選び方
・音節のメロディへの落とし方
・メロディラインの動きと言葉の発音の自然さ
・歌詞の「意味と意図」が膨らむコード進行
・構成の単純さをものともしないアレンジ
これらの要素すべてが相乗効果を出しているこの曲の存在は、すごいとしか言いようがない。音楽教科書に載ってもおかしくない。この曲は後世に伝えていくべき一つの曲。
そして👆すべての要素は、この曲に含まれたたったひとつのメッセージに行き着くためのお膳立てに過ぎません。
込められた「たった一つ」のメッセージ
この曲は4分22秒。曲としては短くも長くもない。
その中に強烈なメッセージが含まれています。それは一番最後のフレーズ・・・
「いつまでも 生きて」
この『て』部分のコードは暗です。最初のAメロも暗で終わってますが、その暗とこのフレーズにかかった暗は(表現的に)別モノです。
宮崎駿氏はこの曲をハウルの動く城の主題歌に選んだとき、世界観がぴったりだということを言われていました。もしかしたら最後のフレーズにも何かを感じられていたのかもしれません。
もしそうだとすると、自分の考えが宮崎駿の感性とクロスしたことになるからうれしい。
この最後のフレーズが「ハウルの動く城」のテーマの一つだったんですね。
あとがき
もう発表されてからかなり時間が経っているのでいろんな人がカバーしています。
👆の記事では、歌っている人がどこを大切に歌っているか?を気にしながら選んだ、オリジナルとは別の10パタンをご紹介しています。
同じ曲ばかりですが、一つの曲を別の解釈でやればどうなるか、のとてもいい例なので、時間が許す限り聞き比べてみてください。