『若き仕立て屋の恋 Long Version』(王家衛、2004)
ろくすっぽ見てないが世紀末の『花様年華』はやはり作家自身にとって画期だったと思わざるを得ない。なんせこの映画もIn the Mood for Loveである。
手技でヤられちゃったぼっちゃんと高級娼婦による階層のすれ違いだが、想像通り乗れない。人間が描けていないと言うのは簡単。じゃあ何が足りないのか、と聞かれると困るものの、無理やり捻れば王が何某かの変貌にちっとも興味ないところと言えるはずで、ふたりを隔てる長い時間が経った感じがまったくしないのも恐らくこれに拠ると思われる。まあチャン・チェンの視線はさすがだけど俳優に頼りきりってのは、ねえ。要はmood以外ないので好悪が割れるところ。フランスが『花様年華』と『マルホランド・ドライブ』好きってのもなんか頷ける。いや、この頃の香港だからコン・リーの宿痾も明らかにSARSなんだけれども、その程度でcontentは伴わないと痛感。
ところで断片集というかダイジェスト版の印象が拭えない(Long Versionなのに!)のはシークェンスとシークェンスの間に黒味が挿入されるからではないか。と過った瞬間に83年のカラックスやら84年のジャームッシュやら反例が直ちに浮かぶのでちょっとこれは宿題。逆に爆速70分で終わる三隅なんかからダイジェスト感がしないのはなぜか。
メモ。現時点での優先順位はかなり低いが同胞のアントニオーニ/ヴェンダースもそのうち見ねば(共同脚本グェッラ、『夢の涯てまでも』後なのに撮影ミューラー)。