修羅の刻 酒呑童子編を読んだ感想
暫く漫画から離れており、新作が出てる事に気づかなかった。
項羽と劉邦が終わった後に刻が始まるとは予想してなかった。
今回、現状最古の陸奥、酒呑童子編。
弱い女は陸奥になれぬ。
そして斧鉞が決め手なのは雷電編と同じ。
雷電編でやりきれなかった構成を今回で消化したという印象。
海皇紀では散々やったチャンバラだが、修羅の刻では多分1番チャンバラしたんじゃなかろうか。
一応柳生十兵衛編と源義経編が陸奥以外のチャンバラをそれなりに描いていたが、これだけ主要人物が多く全員で総チャンバラした展開は無かった。
土蜘蛛を助ける場面はまんま出海で笑った。
刀や靴や地名などの注釈や後書きが多い。
攻殻機動隊ほどでは無いが、どんだけ書くねん。
川原正敏のアクションを支えてるのは背景アシスタント。
川原正敏のアシスタントはずっと優秀。
川原正敏の絵柄、特に顔が漫画過ぎるが、熊や馬や背景はとことん現実的で凝っている。
密度だけで言えば背景のほうが高い。
海皇紀の帆船の説得力もそれに支えられてた。
面白い漫画の要素は数あれど、自分は映画にも言えるが、背景美術や小道具がどこまで凝ってるかが評価軸にある。
登場人物だけで良ければ背景はずっと白くても構わないが、それだと文字通り白けてつまらない。
アイドルの写真集でも海外ロケなどのほうが圧倒的に被写体が映える。
どれだけ可愛かろうとソフマップの壁では萎える。
空間や場所というのは主役と等しい価値がある。
だから荒木飛呂彦やクリストファーノーランは信用出来る。
登場人物と同様に背景を大事にしてるから。
そして一見密度の低い絵を描く川原正敏も背景密度が高く信用出来る。
山の民、まつろわぬものに焦点を合わせたのは京極夏彦の巷説百物語シリーズと同じ。
平安から江戸までは山の民は無視出来ない存在か。
山の民に関して1冊でまとめた本とかあるんだろうか?
初代陸奥は誰編なのか長らく議論されていて、平将門か安倍晴明かで分かれていて、自分は後者だった。
なので今回安倍晴明の登場と予告があって、漸くここまで来たかという想い。
正直、斧鉞はまたかと思った。
それ雷電でやったやん。
九十九がレオン編で伏線を張ってやっとこ回収した展開じゃん。
それなのに何で今回も斧鉞で終わったのだろうか。
他に鬼の角を折る方法が思いつかなかったのだろうか。
漫画としては面白かったけど、既視感があり残念だった。
最後、終わりの見開きが格好悪いと思った。
ただ義務としての説明で、情緒に欠ける。
出海や雷や天斗あたりと比べると情緒が無い。
これまで修羅の刻は最後の頁に凝ってた印象だが、今回はいまいち。
ただ全体としては面白かった。
相変わらず歴史の穴を陸奥で埋めていき、今回は久々に格闘以外の歴史に関与する陸奥だった。
尺度も源義経編に次ぐ3冊。
次回の安倍晴明編は2025年から連載開始。
川原正敏との付き合いも30年くらいになる。
一時期は寒いギャグを差し込んだり作品の精神年齢が落ちて、ああ老いたなと思ったものだが、漫画の情熱はまだまだ消えてないと言う事が今回わかったので、最後まで付き合おうと思う。