岩泉舞の初連載作品「ミレンの壺」を読んだ感想
本作は2月に発売された漫画だが、自分の都合で買わず読めず仕舞いだった。
しかし、七つの海を持っていた1読者としては彼女の新作を逃すわけにもいかず、漸く読む機会を得た。
さて、以下に良かった点と悪かった点の両方書く。
良かった点
話のバランスが良い。楽しい悲しい両方を抑えている。喜びは喪失を前提にしている、幸福は不幸が支えてる、というのを重くならず明るさも両立していて、これは七つの海の頃からそう。
色んな世代と立場がある。七つの海の頃から父親や祖父など目上の存在が大きく、登場人物の年齢も作品の精神年齢も高かった。
背景美術や小道具が凝っててちゃんと描いてる。女漫画家で少女漫画だと登場人物の服装や髪型や言動や静止画姿勢は凄く凝ってるが、場所や状況や背景がしょぼかったりする。しかし、岩泉舞は少年漫画畑だからか、作風に合った凝った背景美術と小道具だった。黒歴史のノートが某高級ノートだったのは笑ってしまった。また実写スキャンも少ない。錠剤やパソコンなど一部スキャンが見られたが、基本的に漫画絵の背景美術小道具だったので安心して読めた。これ作品の規模的にアシスタント無しで1人で描いたのだろうか?
作品のどんでん返しが小気味良い。あっと驚くという事はないが、古典的な叙述トリックが好きそうな感じ、読んでいてほっこりとニヤリとドキリがある。
充実したおまけ要素。裏話や4コマ漫画など。男向け作品を描きながら巻末などに4コマを描く女漫画家って多い気がする。自分が思いつくのはハガレンの人や伊藤悠。遊び心と同時に、登場人物が嫌われたままでいたくない悪を描ききれない感覚がある。
悪かった点
化け物に迫力が無い。フルーツバスケットの猫を思い出す。
爺と婆の顔が若すぎる。これも女漫画家にありがち。
価格が1430円。この頁数と判型でこれは無い。時代を感じる。
そんな所か。
かなり遅れたが彼女の新作を読めて良かった。
正直なところ売れないとは思う。
小気味良い作品だが全く売れ線ではないし。
しかし、彼女が好きであろうSFやミステリや古典芸能など幅広い興味が散りばめられていて、単行本1冊であるのがむしろ気軽に読みやすく、短さにマイナス要素は無い。
この作品を最後に彼女はtwitterなど我々から見える面では音信不通だが、彼女の新作を読める日がまた来るのだろうか?
プロの格闘ゲーマー、リジェクト所属のあきらが彼女をフォローしてたと知った時は大変に驚き喜んだ。
自分が知る限り、著名人も知人も彼女をしる人がいなかったから(きたがわ翔は例外)。
個人的には思い入れがある漫画家なので、是非とも新作を読みたい。