採用面接を5分で通過させたい人がどういう人かという話
面接に慣れている人なら、明らかにいい人に対して合格の判断をするのは5分あれば十分である。5分といえば自己紹介と少しの会話をした程度の時間である。希望者が殺到するコンサルティングファームならデフォルトが5分の面接ということもあるかもしれないが、一般的には20-30分くらいの時間が必要だ。面接官はわずかな時間で膨大な情報を読み取っている。僕は面接官としては駆け出しであるが、5分で何が起きているのかを書いていく。
まず、5分で通過する人は話す内容の解像度が抜群に高い。
話し方や説明がうまいだけでなく、会社のことや仕事内容をきちんと理解している。その上で自分がやりたいことをきちんと持っている。これは驚異的なスキルである。業務理解が正しく、自分がやりたいことが明確であればもう何も言うことはない。こういう人に入社後のギャップは起こらないし、どんな面接官にとっても入社後に活躍するイメージが描きやすい。中途採用で社会人経験があればまだしも、新卒採用でそこまで話せる人は天才の域だ。上位1%くらいがこの域に達する。(中途採用の方が話が下手な人が多いがその話は別の機会に書く)
具体的にはこんな感じだ。
「私は学生の頃にこういう勉強をしてITに興味を持ち、社会課題をITで解決することを企画する大会で入賞をしました。技術力を身につけてSIで働きたいのは、御社のこういう点が社会課題解決に繋がっていると感じたためです。私はクラウド基盤やセキュリティにも興味があり、御社のこのソリューションをやっていきたいです」
このくらいのことが言えれば学生なら満点だ。短い言葉で必要な情報がまとまっている。何がしたいのかもわかるし、自己アピールも盛り込まれているし、志望動機も滑らかにつながっていて説得力がある。他社ではなく弊社でという理由もうなずける。
面接は自己アピールが優れている人が有利だが、さらに強いのは理路整然とした人である。自分の実績をアピールするより、自分のやりたいことを整理して伝えられた方が面接官としては助かる。やりたいことが整理できてる人は実現できる可能性が高い。応募者のやりたいことは応援したいと思うのがほとんどの企業の面接官の気持ちだと思う。仮に学生がプロジェクトマネージャーをやりたいと言ったとしても、どういったマネジメントをやりたいのかきちんとイメージができていて適切に伝えることができるなら、将来できるだろうと評価する。解像度の高い説明をできる人は最高点で合格をだす。
また、理路整然と話がまとまってる人はそれゆえに選考が速く終わる。
しかし、普通はそこまでやれるものではない。
弊社のように名前が知れていない会社ならなおさらである。調べたってよくわからないというような状態で面接を受けるのが普通だ。むしろそういう状態で受けてもらって全く構わない。だから面接時間内で業務説明をするし、ギャップにならないように様々な会話をする。
その中で面接中に相互理解が果たされたうえで前向きな姿勢を示してくれれば十分に高い評価で通過していただく。中途で年齢が高いほど経験やスキルがマッチしているかも見るが、いくつになってもポテンシャルは見られる。
意思疎通がうまい人はたとえ経験がなくてもマネジメント適性ありと(40歳でマネジメント未経験でも)判断されるし、重度の緊張でうまく話せない人でも真面目で素直で志望度が高ければ中途でも伸びしろをプラス評価して通す。人の話を素直に聞いて吸収できる人は必ず成長する。
では、上記の高評価に至らない人は何が違うか。
「なんでもやります」と目を輝かせながら話す学生もいる。
その中でも弊社で何かやりたいことはないかと問うと「ありません」と答える。
「その回答だと落とすけどどうする?」と言えば炎上するかもしれないが、言いたくなるシーンの一つがこれだ。「やりたいことがありません」これは面接では言ってはいけない。双方ともに入社後のイメージが作れないからだ。この受け答えでも通す企業はあるかもしれない。どんな仕事も厭わない人がほしいという会社もあるだろう。が、うちのように定着率が高い会社は短期離職の懸念があれば通すわけに行かない。入社後に「やりたいことは違ってました」と言われても困る。
だが、彼は素直でキラキラしている。おそらく活躍する。面接で上手に話してくれさえすれば通る。何も用意してないから通せない。私が一次面接官なら、一緒にやりたいことを考えて次の選考でどう答えるべきかを時間枠いっぱい使って考える場にする。その上で二次面接に通すが付け焼刃だと通過率は高くない。
そう、つまり、高評価に至らない人は単純に「面接が下手」な人が多い。仕事力や人物の魅力の差などではなく「面接が下手」なのだ。面接している時点で、書類は及第点なのである。だからこそ惜しい。加えて中途だと「やる気がない」人も増えてくる。面接の準備に割くリソースが限られる人も少なくないし、ネガティブな理由で転職をする人は前向きに面接なんぞ頑張っていられない人もいるだろう。ただし、「やる気がない」に関しては私が受け付ける分には思いっきりモチベを引き上げるようなことをするのでどうにかなる。(素直さがなければ跳ね返されてしまうので面接モードを作れずに失敗するが)
面接が下手な人は自覚がない。面接が下手であることを指摘される機会はほぼ存在しないからだ。なので、面接不合格が続く人はエージェントに添削してもらうことをお勧めする。企業側はネットに変なこと書かれると命取りなので相手を否定するようなフィードバックはできない。でも面接が下手だと落ちる。能力があっても落ちてしまうのだ。企業側としても協調性のない人を採用して現場でコンフリクトになっても困る。応募者はそういった懸念があると思われないくらいの対策が必要だ。
個人的には「面接が下手」なだけで選考で落とすのは企業側にも問題があると思っている。僕はたいしたスキルもなく面接練習に全振りして現職に入社したが、高スキルの人を取りたいなら面接の受け答えが下手だから落としていいのだろうか。いろんな人が活躍する土壌を作るべきではないのかと思うときはある。もちろんリスクもあるが。
自分に自信がない人も想像以上に多い。これはこれで構わないし正直に打ち明けることはギャップを防ぐ意味でも正しいが、マイナスが強くなると選考では不利だ。技術者として活躍する未来を思い描けずに不安になる人は多い。中途でもマネジメントとかプライムの仕事に不安を感じる人は多い。
私にあたれば不安を払拭したうえで話を進めるが、できるだけ不安は小さくしてから臨む方が勝率が高いはずだ。こういうのも転職エージェントに頼って解決するのも手だ。
話を戻して5分で通過させるほど優秀な人の懸念についても書く。
誰の目にも明らかなほど優秀な人は、実は内定を得られるとは限らない。優秀過ぎて落ちるパターンは存在する。
すごく極端な例を書くと、他社の選考状況を聞いたときに「Googleの最終面接に進んでます」と言われた場合、どうするか。どう考えても弊社に来るような人ではないなと思われれば不採用となる。弊社に向いてないなと思えば優秀な人材でも見送る可能性が出てくる。優秀すぎるゆえの結果である。そこまですごい人ならマジでそっち行くべきだと思うし。
しかし冒頭の例のように、入社後のイメージがきっちり具体的に固まっていれば獲得に向かうかもしれない。私だったら5分で内心合格を決めても、残りの時間を志望度の引き上げに使う。Googleの方がいい会社だし給料も高いし周りも優秀な人多いと思うけど、弊社には別のいいところもあるよと。ギャップにならないように嘘をつかずに普通に他社のことも褒める。
そして最後に。面接で失敗して落ち込む必要はない。はっきり言って面接が下手な面接官もいる。弊社にもいる。そういう人に落とされたからといって気にする必要は全くない。また、面接がうまいことと入社後に活躍できるかということは別である。面接官の相性で決まることもあるし、一つ受け答えを間違ってしまっただけで落ちるなど、本質的に応募者の能力で選考されているわけではない問題もあると思う。
それに、あなたが面接官より優秀だったら、面接官はあなたを正しく評価できない可能性もある。
面接の合否を判断する側は偉くもすごくもない。正しくもない。採用面接なんてそんなものだと思う。僕だって、弊社の最終面接に通りそうな人を優先的に通す。自分の好みは二の次だし、僕が最終面接をする立場になったらおそらく通す層はがらりと変わると思う。僕が大好きな挑戦的な組織に変えていくと思う。
面接官がすごくもなんともないことは、Twitterで散々人事が炎上していることからもわかると思う。「ちょっと変」な面接官は普通にいる。なので、入りたい会社だったら面接官一人がおかしくても気にしないでほしいし、面接は儀式だと思って志望動機やら一通りの面接の受け答えは用意しといてほしい。通す理由がつけやすいことを言ってくれれば現場も助かるというもの。
余談。顔採用はないです。容姿端麗な人を入れればいい効果があるとかないです。だけど、死んだ目をしてる人を採用するわけにはいかないので、きちんと表情を作ってきてくれる人は通る可能性が高いし、そういう準備ができる人は社内にいい効果を持ってきてくれます。
だから大企業の受付とか広報が美女ばかりだったとしても、普通は社員としての能力を見てるはず。僕も4次請けにいた会社では女子しか採用しない変な人見たことあるから絶対ではないけど、何十人も面接すると普通は容姿とか性別とか気にしてられないと思うし、中身のない人は選考のどこかで落ちる。入社後のギャップや短期離職は企業側がもっとも恐れるリスクでもあるし、顔面など気にしていられないのである。