Teenager Forever ①
【短編戯曲】
作・高山遥/登場人物:5人/時間:約5分
【場所】
地方 図書館のエントランス
【人物】
・ムネト
・マユミ
・サキ
・白川
・図書館の職員(司書)
場所は図書館のエントランス。
カフェのようなおしゃれな感じ。大きい窓がある。
同じ高校に通うマユミとサキが勉強している。
マユミ いやだからさ、分母も分子もn二乗で割ればいいの。
サキ 5は?
マユミ いや項数は関係ないもん。
サキ あ、そうだっけ。
マユミ うん。
サキ なんで。
マユミ なんでって、書いてあるから。
サキ ええ笑
マユミ 素直にならないと教科書には。
サキ ええええ・・・数Ⅲほんと無理。
マユミ ね。
サキ まだ例題しか解き終わってないよ。
マユミ ほんとに(笑)ぜったい終わんない。
間
サキ マユミって絶対文系行くと思ってた。
マユミ それめっちゃ言われるんだよね。
サキ なんか図書館似合うよね。
マユミ どういう事。
サキ なんかこう、おっきい本棚の前で、分厚い本開いてそう。
マユミ そんなイメージあるあたし。
サキ あるよ。なんか大学のパンフレットに乗ってそうな感じ。
マユミ 学部紹介のでしょ(笑)
サキ そうそう。文学部の。
二人、笑う。
そこへ本をかかえた図書館の職員が通り過ぎる。
間
サキ でもいいなあマユミは理系科目も出来て。
マユミ そんなことないよ。数学全然だめだもん。
サキ 私なんで理系来たのかなって感じ。
マユミ 私もたまに思う。それは。
サキ もう引き返せないよなあ。
マユミ あ、でもさ、知ってる?ケイスケ文転するって。
サキ そうなんだ。
マユミ うん、多分。中澤から聞いたもん。
サキ 中澤って。
マユミ あの三組の。
サキ ああ、あのサッカー部のいつも一緒にいるグループ。
マユミ そうそう。
サキ あーそうなんだ。え、文転するんだ。
マユミ らしいよ。
サキ え~今から文転して間に合うのかな。
マユミ でも二年生で文転したいってあんまならなくない?
サキ まあ、それはなんか早いかもね。
マユミ でしょ。
サキ でも文転できるってすごいよね。
マユミ なんで。
サキ なんか勇気いるじゃん。
マユミ ん~
サキ それだけ自分の意志がはっきりしてるってことじゃん。どうして
もこの道に進みたいっていうさ。
マユミ 確かにね。でもケイスケ割とそういうとこあるよね。
サキ そうなの。
マユミ うん。サッカー部の割にはね。
サキ サッカー部にどういう印象持ってんのそれ。(笑)
ここら辺でムネト登場。マユミとサキを気にしながら席に座り勉強を
マユミ なんかサッカー部の男子ってうるさいだけでなんも考えて無さそ
うじゃん。
サキ (笑う)
マユミ ノリとテンションだけっていうか、その割には勉強出来たりする
から腹立つよね。
サキ ちょっと、サッカー部員居るから(笑)
マユミ え。
サキ ムネト。
ムネト え。
サキ 今来たの?
ムネト あ、うん。
サキ え、課題出した?
ムネト 今出して、ここ来た。
サキ うわー、まじか。先越された。
マユミ え、サッカー部員て。
サキ ああ、ムネト。数学の補習で一緒なの。元サッカー部。
マユミ ごめんね、いろいろ言って。冗談だから。
ムネト え?
サキ ああもうなんでもないから。集中しよ集中。明日だよ。
マユミ はあ。もうだめだ私。
三人、静かになる。
間
サキが小声で話しかける。
サキ ねえ、これ分かる?
マユミ そこまだやってないんだよね。
サキ そか・・・ねえ、これ分かる?
ムネト ええと、ええ、これはね・・・(ここで白川が通りかかる)
マユミ あれ、白川さん・・・?お久しぶりです!
白川 あ!久しぶり~
かっこ「」内の会話は同時に起こる。
「ムネト ・・・f(x)が減少関数だから、4/xをxに代入すれば・・・いく
と思うけど
サキ ああ、そっか。え、じゃあやってみる。
ムネト うん。
間
サキ ねえ、ケイスケ文転するって知ってた。
ムネト うん。
サキ え、うそ。やっぱ知ってるんだ。
ムネト 割と有名じゃない?
サキ 私全然知らなかった。
ムネト サッカー部はみんな知ってるよ。
サキ そっか。・・・え、じゃあさ・・・彼女さんは。
ムネト ああ、なんか一説によると、彼女が自分と同じ志望校目指そうと
してるから、それでなんか色々幻滅しちゃって、彼氏の方が志望
校変えたっていう・・・
サキ ええ~そうなんだ。一説なんだ(笑)」
「マユミ 学校終わりですか。
白川 そうなの。え、期末?
マユミ そうなんですよ。
白川 ええ~頑張って。
マユミ もうこころ折れそうです。
白川 三年生だもんね。頑張って。
マユミ がんばります・・・
白川 今度の定演ていつ。
マユミ 多分九月だと思います。今年からちょっと変わるみたいで。
白川 そう。
マユミ 来てくれます??
白川 行く行く。時間あればだけど。
マユミ ほんとですか。伝えときますね。
白川 あんま期待しないでよ。バイト入るかもしんないから。
マユミ ああ、バイトか・・・でもぜひぜひ。お待ちしてます。
白川 うん。今さ、今井とかと集まってるんだけど、ちょっと来る?な
かなか会えないだろうし。
マユミ え、ほんとですか。行きたいです。
白川 じゃあ、研究室Aに居るから。」
白川、図書館の中へ。
ムネト 噂だよ噂。
サキ へえ・・・。
マユミ ・・・
サキ 先輩?
マユミ あ、うん。吹部の。
サキ ふーん。研究してるのなんか。
マユミ ああ、多分ゼミかサークルかの集まりだと思う。
サキ ふーん。
マユミ じゃあ、すぐ戻るから。
マユミ、図書館の中へ。
やや間、
サキ、ムネトの隣の席へダッシュ。ムネトに密着する。
つまり二人は付き合っている。
付き合いたてである。
サキのなかでは今、空前のムネトブームが巻き起こっている。ブームという事はつまりいつか終わるという事である。受験生の恋とは、そういうものである。
ムネト ちょ、近い。(嬉しい)
サキ 急に来るからびっくりした。(一瞬にして彼女モード)
ムネト 帰ったんじゃなかったの。
サキ いや、マユミが図書館行くっていうから。
ムネト そう。いや俺もびっくりしたよ。
サキ ・・・
ムネト 近いって。
サキしぶしぶ離れて自分の席で勉強を再開する。
ムネト いつも一緒にいるの、あの名前なんだっけ。
サキ え、ああマユミ?
ムネト うん。
サキ まあ割と、いつもってわけでもないかな。春から知り合ったから。
同じクラスになって。
ムネト そうなんだ。
サキ めっちゃ頭いいよねえ。
ムネト いや知らんよ俺は。
サキ いいんだよ(笑)早稲田行くから。
ムネト まじで。
サキ 行けるよ、ただねえ・・・。
ムネト ただね?
サキ いろいろ抱えてんのよ。心のなかに。
ムネト え?
ここで図書館司書が登場。
掲示板のポスターの張り替えを始める。
サキ ねえこれ分かんない。
ムネト いや数Ⅲは分かんないよ俺も。
サキ ええ~じゃなんでさっきのは教えてくれたのに。
ムネト いやあれはだって数Ⅱで解けるもん。
サキ ・・・
ここで図書館司書の携帯が鳴る。
司書 はい、ええ。あ、そうですか、ええ、ありがとうございます。あ、
そうですね・・・
と、電話越しで話始める。
マユミ戻ってくる。
サキ あ、お帰り~。
マユミ ただいま。
サキ 何それ。
マユミ なんかめっちゃおかし貰った(笑)
サキ 持ち込みダメなんじゃないの(笑)
マユミ いやでも普通に食べてたよ。
サキ だめじゃん(笑)
マユミ (お菓子を渡して)はい。
サキ あ、ありがとう。
マユミ 食べる?
ムネト あ、ありがとう。
マユミ いやほんとに懐かしい先輩ばっかでヤバかった。
サキ 吹部?
マユミ うん。
サキ ふーん。
マユミ ああ、大城先輩もいたよ。
サキ え、あの生徒会の?。
マユミ そう。
サキ おんなじ大学なんだ。
マユミ らしい。びっくりした。
サキ へえ~
ここで図書館司書、作業を終えてはける。
サキ ねえ、あの人川越先生にめっちゃ似てない?
マユミ わかる!
サキ だよね。あの、なんいうの、横向いた感じがまんまだよね。
マユミ そうそう。
サキ 川越チャン七組担任なの可哀そうじゃない。
マユミ たしかに。男子がヤバいんだっけ、あそこ。
サキ そうそう。大久保とかいるから。
マユミ こないだ廊下で野球してたよね。
サキ あれ五組じゃない?
マユミ え、うそ。この学校ヤバいでしょ。
サキ ほんとに。
マユミ しかも大体サッカー部だしね。
サキ あと陸上部。
マユミ そう。
サキ あ、ていうかマユミ時間大丈夫?
マユミ あ、ヤバい、けど大丈夫かな今から行けば。
ムネト どこ?
マユミ 塾。
ムネト ああ。
間
マユミ じゃあ。
サキ うん、ケイスケ一緒だよね。
マユミ うん。
サキ じゃあ詳細聞いといてよ。
マユミ いいよ。
サキ それでさ、もう告っちゃえば。
マユミ え。
サキ そんなに好きならさ。
マユミ ・・・
サキ ・・・
マユミ ・・・ちょっと、何言ってるかわかんないなあ・・・
サキ とぼけちゃって。
マユミ ・・・・・わざわざフラれに行けって?
サキ なんもしないよりいいじゃん。
間
マユミ じゃあね。
サキ ちょっと(笑)無視かよ。
マユミ ・・・そっちも、お幸せにね。
サキ え。
ムネト ありがと。
サキ ええ?
マユミ ・・・とぼけちゃって。
マユミ、退場。
サキ、ムネトの顔を見る。
終わり。