答えは常に変わり続ける、“壮大なアジャイル開発”への挑戦
NOT A HOTELは単なる不動産事業でもなければ、誰もが思い浮かべるホテルや別荘とも異なる。ソフトウェアチームもまた、壮大な構想が生まれてから今日に至るまで、正解のないプロダクトづくりに挑んできた。プロダクトマネージャーとして、NOT A HOTELの創業期からソフトウェア開発をリードする八代嘉菜は、その難しさを“壮大なアジャイル開発”と表現する。
ある意味で暗中模索ともいえる、答えが変わり続ける日々のなか、プロダクトマネージャーである八代嘉菜はどのようにしてゼロイチ開発に取り組んだのだろうか。NOT A HOTELのプロダクトづくりと背景にある想いを掘り下げていく。
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答えがないうえに、変わり続けるプロダクトをつくる
ーNOT A HOTELが目指すサービスは世の中にないので、ソフトウェア開発においても未知の挑戦の繰り返しだったと想像します。理想の体験を実現するために、ソフトウェアチームが取り組んだことから教えてください。
八代:NOT A HOTELのソフトウェアをわかりやすく言えば“表と裏”に分けられます。購入していただいたお客さま向けの体験設計(アプリやスマートホーム)を“表”とすると、それを実現するための社内向けの運営やシステム(宿泊情報の管理)が“裏”。私が担当しているのは、その“裏側”を支えるプロダクトです。
ー常に変わり続ける現地のオペレーションとセットでシステム設計を開発・改修しなくてはならないので、とても難易度が高そうですね。
八代:お客さま向けの体験をつくるだけでも大変ですが、NOT A HOTELでは両方を同時につくるんです。正解があるわけではないし、常に答えが変わり続けるなかで開発をしなければならない。しかも、開業時はホテル業界経験者もいなかったので、手探りの部分も多くありました。
いわゆるDXではない“壮大なアジャイル”
ー八代さんは前職からプロダクトマネージャーというキャリアを歩んでいますが、NOT A HOTELでの役割の違いをどう捉えていますか。
八代:プロダクトマネージャーとしてやっていることは前職と大きな違いはないものの、NOT A HOTELでは関わるステークホルダーの幅や見るべき範囲が広がったと思います。オペレーションがどこの拠点も同じというわけではないというのも難しいポイントの一つですね。運営を含めてベストな体験をつくるために、ツールは「変わること」を前提に開発しています。その点は、NOT A HOTELのソフトウェアチームの特徴かもしれませんね。
ー“変わることをよしとするソフトウェア開発”ですか?
八代:ソフトウェアチームだけじゃない、運営オペレーションも含めた“壮大なアジャイル開発”のようなイメージです。システムありきでNOT A HOTELしか提供できない体験をゼロから積み上げていっているような難しさや面白さを感じています。
ーNOT A HOTELの開業から現在にかけて、八代さんが一番葛藤したり苦しかったことはなんですか。
八代:開業後にいただく、運営メンバーやカスタマーサポートからの「こうして欲しい」という要望にすべて応えられないもどかしさですかね。中長期で改善させる目線は持ちながらも、足元ですぐに改修しなければいけないポイントを見極めなくてはならないんです。スタッフによって使う頻度や場所も異なるので、密にコミュニケーションをとりながらアップデートを着実に進めていかなければならない…。すぐに「YES」と言えなかったのは、とても苦しかったです。
「すべての人にNOT A HOTELを」の土台となるスケーラブルなシステム
ー運営メンバーとして働く仲間のなかにはシステム自体に明るくないメンバーもいますよね。どのようにコミュニケーションを図りながら、システムをつくりましたか?
八代:これは私自身というより、開業後に入社したプロダクトマネージャーの仲間の功績だと思いますが、現地に足を運びながら運営メンバーへのヒアリングを丁寧に重ねてくれたんです。ソフトウェアチームと現場との信頼関係が深まったことで、その後の改善に大きくつながりましたし、今その成果が出ているのを実感しています。
ー八代さん自身のマインドとして大きく変わった点はありますか。
八代:コミュニケーションの図り方は、強く意識するようになりましたね。以前に比べて「具体」をより聞くようになりました。「こういうことをやりたい」と言われたら、「なぜ」を最初に聞くのではなく「どんなことがあったんですか」と聞いてみる。ダイレクトに課題を聞くよりも、実際に起きた事象を教えてもらうことで、「なぜ」を聞くだけでは見逃してしまうような課題を掴めるようになりました。
ーでは最後に、2024年の“超えていきたい常識”を教えてください。
八代:“体験の常識を超えていく”ですかね。そのために、事業のスケーラビリティに耐えうるシステムをつくることです。運営において、人がサービスをする必要がない部分に関しては自動化し、人しかできない最高の体験に力を注いでもらう。良質な体験を、”裏側”の効率的な仕組みによって支えていきたいです。
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