間違っていたね、全部忘れてしまうね
子宮頸がん
癌だけど、原因は男の人の竿に生息しているバイ菌。それが女の人の子宮でどうにかなって、詳しくないけど放置すると死ぬ。
放置せずに早期発見できたら死ぬことなんてない、切除したり子宮口かどこかを抉りとるだけで済む
そんな病気
私がそれに気づいたのは18歳の頃
皮肉にも男と寝たくないから子宮が痛いと嘘をつき続けて見かねた男が私を無理やり病院に連れていった時、確かあの時も金で釣られた。病院行ったら3万円
検査結果、何も出ないと思って焦っていたら軽度異形成という子宮頸がんという診断の手前のステージだった
健康だと思っていた体がそうでもないことがショックだった
何より原因が避妊具をつけない性行為
私は金のためにしかそれをした事がなかった、確実に客からもらったというのが
いちばん悲しかった、好きな人ならまだ許せるじゃん、許せない?
私も許せないかも笑
20歳まで放置して、時々立てないほどの腹痛、不定期な性交痛以外何も無かった
今でもまだ治療は間に合うのになんでそうしないの?と色々な人に聞かれたけど死ぬ理由になるなら治さなくてもいい
もう私には自殺する勇気もない
死ねなかったことを考えるのが怖い
13階で足を掛けた時、泥酔してたけど怖かった、あと一歩が踏み出せなかった。リスカを辞めたのも死ねないのに、死ねないのにお金も稼げなくなるのが怖かったから、嫌なことがあってどうしようもなかったら瀉血をした、跡が残らないから痛くて可哀想で死ねない私にぴったりだと思った
死ぬ覚悟もないのに体に傷をつける
商品をダメにすることは出来ない
全部私のせいだった
季節を売って生計を立てたのが悪かった
人を騙したのが悪かった
人の身分証をあれこれしたのが悪かった
死ぬ覚悟がないのが悪かった
色々な人が私に
「本当に好きな人が出来た時に」困るとか辛いとかそういう説教をした
その時はうるさい死ねと思った
担当がいてくれたらいいと思った
担当は私を殺してくれると思った
愛してた
そんな担当はお金を愛してた
私は担当の好きなお金も好きだった
その人の好きな物を沢山あげたら好きになってくれると思った
けどそれは間違いだった
季節がすぎて担当は私の担当じゃなくなった
私は彼氏ができた
最初は好きじゃなかった、向こうもそうだったみたいだけど
ずっと担当と比べた
その人の足りないものを見た
至らないところを見て怒った
担当よりも分かりやすくて誰にでも優しい人だった
それさえも時々憎かった
恵まれているからだと妬んだ
私は元カノと自分を比べた
何も勝てなかった本当に何一つ
今も何も勝てるものは無いけど
その人は決して私と元カノを比べなかった、私のことを沢山褒めてくれた
人の劣っているところより素敵なところを見つけるのが上手で
なにより優しかった。
私のために元カノより、可愛い元カノより愛してると嘘でも比べてくれた
きっと彼は本当は比べたりなんかしない人なのに
優しかった、どんなにめちゃくちゃにしても見捨てなかった
服を醤油まみれにしても風呂場で瀉血しても優しかったよ
ご飯も作ってくれた
隠さず一緒に歩いてくれた
すっぴんでも素敵だと言ってくれた
気がついたらあんなに大好きだった担当のことなんて忘れていた
あんなゴミどうでもよかった
ただ私はその人が好きだった
気がついたら愛していた
心から好きだと思った
一緒に幸せになりたいと思った
昔からずっと言っていた「風呂屋を辞めさせたいなら私が稼いでくる額毎月払えるくらい稼いでから喋れよ」という金しか信じないそんな信条もその人といると忘れていた
仕事が苦痛だった
今までそんなこと無かったのに「好きな人にしか触られたくない」とか馬鹿みたいに初恋をしている少女みたいな発言をした
本当に好きだった
結婚したかった
昼職をしようと思った
中卒の5年間無職の女を採用するネイルサロンは東京のどこにもなかった。
自分って馬鹿だなと思った
その時に思い出した
「本当に好きな人が出来た時に」の子宮頸がんの話
私は金のために好きでもない男と生中を繰り返して貰った病気持ちですって
そんな人に誰かを心から愛する資格なんてないって
そういうことを思う時が来るって
みんな知っていたのかもね
後悔じゃない
後悔をすることはその時の自分を否定するのと一緒だから
ただあなたともう少し早く出会えていたらと思うと
神様ってちょっと残酷だよね
全部疲れたよ
何が残ったの
愛を得るためにずっと
頑張ってきた私は
何がいけなかったんですか
もう充分酷い目にあったよ
初めて金で買われた日、まだ覚えてるよ
その次の日騙されたことも、まだ覚えてるよ
黒人にホテル連れ込まれそうになったり
歌舞伎町でやり逃げされた日
家に警察が来て捕まった日
予防会で病気貰ったのを知って泣いた日
施設に入って爪を切られた日
羽田空港で携帯もないのに置いていかれてトイレで腕を切ったカミソリの色
それで残った薄い跡
母が泣いた顔も父の軽蔑した顔も
全部覚えてるのに
それを君は知らないのに
もう許してほしいよ
ごめんね。
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