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『食はインドにも在り』
2023年の初夏の一時、ヤエチカ(八重洲地下街)を頻繁に歩いた。まるで地下に果てしなく広がるショッピングモールのようなヤエチカ。東京生まれ・東京育ちでありながら全くのノーマークだった。必要に迫られて歩かなかったら今でも知らないままだったはずだ。
一日ヤエチカを歩いていると、遠目に一箇所だけ人集りが見えた。何だろうと思って近付いてみると、インドカレーのお店だった。
ランチタイムはとっくに終わり、夕食には早過ぎる時間にも関わらず、奥行きのない店内は満席。席が空くのを待つ人たちとテイクアウトを求める人たちで店の外は列ができていた。
ERICK SOUTHというお店だった。トラベラーの嗅覚が「訪れて経験してみよ」と指示した。
後日ERICK SOUTHを訪れてビリヤニを食べてみた。以前どこかで食べたことがあったかも知れないと思った。しかし、ほとんど初めてと言ってよかった。ビリヤニはインド、異文化、自分の中にあるインドに対してずっと抱いている遠い距離などを飛び越えてスッと入ってきた。
美味しかった。この「インド式炊き込みごはん」には食べ方があることを後で知った。「食べ方のある炊き込みごはん」は美味しいし、面白いと思った。
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このビリヤニを食べたことが、興味がありながらずっと入手しないままでいた本の購入の後押しをした。「食べ歩くインド」というタイトルの北・東編、南・西編の二冊からなる本だ。
インドは基本的に欧米好きの僕にとっては果てしなく遠い国・・・興味の対象としてという意味で。しかし、なぜかこの本には惹かれていたのだ。旅行作家のあの蔵前仁一さんの「旅行人」から出ているというのもあったかも知れない。
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ある週末から「食べ歩くインド 北・東編」を読み始めた。その週末は御徒町駅前での「インドフェスティバル」の開催と偶然重なっていた。あの「地球の歩き方」主催の野外イベントだった。
著者の小林真樹さんご自身が代表で、インドの食器類を取り扱っている「Asia Hunter」がブースを構えていらっしゃるという。蔵前仁一さんも「旅行人」で出店なさっているとのこと。久し振りに異国情緒を味わってみたくなった。行ってみることにした。
御徒町の駅前広場は、限られた一角だったが、そこはインドだった。物販などのブースとインド料理各種の屋台が並んでいた。場内は独特なスパイスの香りが広がっていた。漂っているその香りがイベントのいい演出になっていた。
案内を探すまでもなく、「Asia Hunter」のブースはすぐに見つかった。たくさん並べられた様々な大きさの銀色のインドの食器の中に小林さんがいらした。
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「北・東編」を現在読んでいることを伝え、食器類とともに並んでいた「南・西編」を購入した。インドの文字が並んでいる「ASIA HUNTER」の布製のバッグとインドの国旗を模したバッジも合わせて購入。
僕が持参したものも含め、小林さんは気持ちよく著書二冊にサインをくださった。僕も旅のストーリーを書いていること、以前蔵前さんの本がきっかけとなった話に蔵前さんからコメントをいただいたことなどを話した。
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屋台で買ったチャイを啜りながら本にいただいたサインを眺めて一息ついた。場内をぐるりと見渡すと、欧米系のイベントやパブなどでお目にかかる方々とは異なる層の方々で一杯だった。
蔵前さんのブースに立ち寄ってトートバックを購入してご挨拶をした。目の前に立っていらっしゃるのが蔵前さんだと分かりビックリしている方がいた。こういうパプニングがあるからイベントは面白いのかもしれない。
もう一度「Asia Hunter」のブースに戻って小林さんにご挨拶して会場を後にした。いずれ僕がこれまで経験してきた旅の話をゆっくりさせていただく日が来たら嬉しいと思った。
次の目的地への道すがら何となく自分がほんの少しだけインドに染まった感じがした。そうだ、都内でビリヤニを食べ歩いてみようと思った。僕なりの「食べ歩くインド」にはならないけども・・・。
後日仕事の帰りに久し振りにヤエチカのERICK SOUTHへビリヤニを食べに行った。かなり空腹だったのでラージを注文。ライスの下に立派なチキンレッグが三本も隠れていた。超満腹。食べ方をしっかりチェックしておいたので以前より格段スムーズに食べられた。
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調べてみると、何と住んでいる町にビリヤニが評判のお店があった。「灯台下暗し」とはまさにこのこと。早速行ってみた。数え切れないくらい前を通り過ぎていたそのお店のスタッフは全員インドの方の様子。
ERICK SOUTHでの反省を活かしてレギュラーサイズを注文した。しかし、これが「普通」なのかという量だったが美味しかった。自宅から徒歩圏内にこんないいお店があったとは・・・「灯台下暗し」。
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有給休暇の一日、インターネットで調べて食指が動いた神保町にある評判のお店に行ってみた。
ここもスタッフは全員インドの方の様子。一人だったので待つことなくカウンター席へ。ランチタイムを避けて訪れたが混んでいた。美味しかった。昼食時を過ぎても混むのも納得。ここも再訪予定。
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インド料理屋ではミックスグリル一辺倒だった。その存在を知ったのはロンドン。インド料理はイギリスでの食事事情を考えると外せない。ミックスグリルの他にこんなに親しみを感じられる「ごはんもの」があったとは。各地でインド料理屋を訪れていながら気が付かないでいた。
インドではレストランもホテルと呼ぶことを「食べ歩くインド」を読んで知った。
中国・中華系の都市では、飯店、酒店はホテルのこと。この共通点は興味深い。先人は「食は広州に在り」と言ったが、ビリヤニが中華料理のように身近に感じ始めたのか、「食はインドにも在り」と言えると思った。
息子がビリヤニを食べ歩いているのを見て、旅好きの母が興味を示した。
自宅から徒歩圏内のお店に案内した。最初は恐る恐る食べていたが、付け合せのライタで箸ならぬスプーンが進んでいた。後日一緒に再訪した。
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ビリヤニを食べに訪れたお店はどこも賑わっていた。自分が知らなかっただけで、いつの間にか日本で浸透していた。既にインドマニアが悦に入るだけの料理ではない。凄いな、インド。ちゃんと万人受けするメニューもインド料理にはあるのだ。
もう少しビリヤニに慣れてきたら、次はミールス(これは南の表現。北ではターリー。「インド定食」といったところだろうか)に親しんでみるつもりだ。こちらも「食べ方」があるようでなかなか面白そうだ。
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まさかここまでインド料理に興味を持つようになるとは・・・。もともと凝りだすと同じものばかり飽きるまで食べ続ける性質ではあるが、週末毎の「ウイークリー・ビリヤニ」は想定外。
インドはいまでも僕にとっては遠い国。ずっと「カレー、ミックスグリル、たまにチャイ」が精一杯だった。
それが、「カレー、ミックスグリル、ビリヤニ、たまにチャイ」になった。それにミールスが加わったときに、インドは自分にとってそれほど遠くはない国になるのだろうか。もう少しいろいろと食べ続けてみよう。
今回は久し振りに旅に出た話を書くつもりでいた。帰京が11月25日では12月1日の公開には間に合わない。少し先の予定だったこの話を今回書くことにした。ビリヤニとミールスをもう少し食べ続けたあとで続編を書くことになる気がする。
2023年も毎月ご笑覧いただき、どうもありがとうございました。2024年第一作となる次回はその旅の話を書きます。複数回になる予定です。来年もHave a nice trip!
追記:
1. 「インドフェスティバル」で撮影した写真の
使用を小林真樹さんは気持ちよくお許しくだ
さいました。「食べ歩くインド」は各位に是
非チェックしていただきたいです。
2. 公開(当時は掲載)のご連絡を差し上げると、
津久井英明様
拙著をお読みいただきありがとうござい
ます。ブログを拝見しました。ロンドン
のダブルデッカーいいですよね。私は香
港で初めて乗りましたが、見晴らしがよ
くて楽しい乗り物でした。そこで『旅が
くれたもの』をご紹介いただき、ありが
とうございました。またロンドンに行け
る日が早く来ますように。酷暑の夏を乗
り切って、お元気でお過ごし下さい。
蔵前仁一
…とお返事をいただいた2年前に書いた話はこちらからご笑覧いただけます。合わせてご笑覧ください。