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【短歌】移動動物園(2) #さるのうた



旅をするための蹄や翼さへ飼い慣らされてまどろむ荷台



ごっつんこするたびに擦り減ってゆく飴玉抱えひとりで運ぶ



こぼれ出す水溶性のさみしさをそっと配膳する飼育員 



外せずにいたモビールの原色が揺れて群れなす引越し前夜



餌をあげてはいけません猿たちはさみしさで満たされてゆくから



羚羊のなみだ西日に燃えていてわれも反芻する所在なさ



夕闇にオハヨウと云ふ鸚鵡たち移動動物園は今日まで



ことばにはしない無数のさよならがついばんでゆく想い出ばかり