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【短歌】ひかりあるところかならずやみもある(1) #さるのうた


愛だとか夢だとかすり潰してさ なうまん象の虫歯に詰める


「歳相応になれ」との呪文反響し暗渠の水位いよいよ高く


から回るだけならいいよからからと風に吹かれてかわいいしらべ


ホチキスの針の数だけささくれた無駄な努力の最期を看取る


ざらつきの解像度だけいたづらに研ぎ澄まされて凍えてく肝


獏の仔の離乳食にはちょうどいい甘ったれてる夢を差し出す


どうしたのだろう運河にまどろんだ鴨の素描で途切れた日誌


きみは迷信を信じる?地蜘蛛の巣、魔除に飾っているのだけれど……


象の話をやめられず 嘘も吐きすぎた乾季の萎びた蕾


おはようもおやすみもない渕に立ちとおくで鯔が跳ねる音待つ


さるぼぼをひとつかついで里を出る夜ごと薄まる家郷の薫り