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ルイアゲハ -涙を食べる蝶- その終わり

流れ星

「お星さま、きれいだね。おじいちゃん」

「そうだね」
 すっかり夜になっていた。老人と少女は帰ってこない蝶を気にしながらも、夜空の星に見とれていた。

 少女は星が動いたように思った。流れ星だと思い、とっさに何かお願いごとをしようとして、蝶が早く帰ってきますように、と祈った。
 しかしそれは流れ星ではなかった。

「あ、蝶だ! 帰ってきたよ! おじいちゃん! 流れ星かと思った!」

 それは、涙を食べて帰ってきた蝶だった。

「ああ、あれは……あの色は……」

「おじいちゃん。あれは何色? どんな涙? わたし、習ったことがない。私のクレヨンの色にないよ」

「あれが……あれがおじいちゃんが、もう一度見たかった色だよ」

 老人はあの時の蝶の羽の色を思い出した。日の光の中では、ほとんど変わらなかったように見えたから、きっと記憶に残らなかったのだ。

「でも、何色なんだろう。おじいちゃんにも分からないよ」
「わたし分かったよ! おじいちゃん! あれは星色だよ! まわりの星の色と一緒だもん」

 確かに言われれば、それは夜の闇の中に輝く星の色に見えた。

 老人は少女を抱きしめて、涙を流した。
 そしてこう思った。

 人が泣きながら生まれてくるのは、悲しみのせいではないのだと。

 帰ってきた蝶は、老人の涙を食べた。羽の色が、オレンジ色に変わっていく。
 
 終わり

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