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シングルオリジンの日本茶(1)コモディティから作品へ。

シングルオリジンの日本茶をご存じでしょうか。

通常、お茶はいくつかの農園で生産された茶葉をブレンド(合組「ごうぐみ」と言います)させて流通することが多いです。

対して、一つの農園で生産された、一つの品種の日本茶を「シングルオリジン」と言います。
(日本茶に限らず、コーヒー、紅茶、チョコレートなどでも使われる言葉だそうです)


「煎茶堂東京」

そのシングルオリジンの日本茶を扱う東京・銀座の煎茶堂東京さんにて、急須とお茶を買いました。

この透明急須、ガラスではなくトライタンという樹脂素材でできています。
1人前分、120mlと容量は少なめですが、毎回きっちり120mlで淹れられることで湯量で味が左右されず、様々な茶葉の違いを楽しむ事に適しています。

樹脂ですが安っぽさは無く、容器と漉し網のカーブが揃っていて綺麗ですし、手に持った感じも程よい重さでしっくり来ます。

そして、手入れが「超」簡単。基本さっと水で流すだけです。食洗機も行けます。落としても割れません。

今回、この透明急須に加えて、「釜炒り茶を試してみたいのですが」とお聞きしたところ釜炒り茶2種類と、同じ品種の煎茶を勧めていただきました。

お茶は収穫された後、加熱して酸化酵素による発酵を止めます、そうすることで綺麗な緑色が保たれた緑茶になります。蒸して加熱するのが煎茶、釜で加熱するのが釜炒り茶です。(ちなみに少し発酵を進めたのが烏龍茶、完全に発酵させたのが紅茶です。同じお茶の木からできているのですね。)

製法の違いと品種の違い、それぞれ楽しめますよということで、まず煎茶2種から比べたいと思います。

透明急須の取説に基本の淹れ方を載せてくれているので、こちらを参考にします。

かごしま八州たにば茶業「はるもえぎ」

はるもえぎ

まずは鹿児島県頴娃(えい)町産「はるもえぎ」です。

・1煎目 70℃  蒸らし1分20秒
 湯を注ぐと「え?お茶?」と驚くほど、ふかしたてのさつまいものような甘い香りが立ち上ります。味わいもふくよかな甘味が広がった後、爽やかな渋みと苦味が余韻に残ります。

・2煎目 80℃ 蒸らし10秒
 甘さが落ち着いて、軽く瑞々しい味わいに変化しました。

・3煎目 85℃ 蒸らし15秒
 甘さは後退して、よりスッキリしました。
 
甘さは春の花々を、苦味はふきのとうなどを連想します。「はるもえぎ」というのは言い得て妙な名前だなと思いました。

京都 童仙房 「かなやみどり」

かなやみどり

続いて京都府相楽郡南山城村童仙房産「かなやみどり」

高めの温度がおすすめとあります。

・1煎目 80℃  蒸らし1分
 こちらもさつまいものような穀物感のある香りです、やや渋みや土感も感じます。味わいは落ち着きのある苦味があり、ふくよかなはるもえぎに比べるととても端正な印象です。

・2煎目 85℃  蒸らし10秒
 よりドライな印象です。もう少し苦味の特徴を引き出してあげたら良いのかなと感じました。

・3煎目 90℃  蒸らし20秒
 2煎目とそれほど印象は変わりませんが、温度が高い分よりさっぱりとしています。食後によさそうな感じです。

この「かなやみどり」、お茶を淹れた後の葉の形が綺麗でした。
そして柔らかい。

試しにだし粉をかけて食べてみたところ、普通におひたしです。
3煎淹れた後だからかクセもなく、ほうれん草や小松菜に比べて歯ごたえのある食感です。

これ、ジャコと和えてご飯に混ぜておにぎりにしたら美味しそうです。

普通におひたし

コモディティからの脱却

「はるもえぎ」「かなやみどり」共に特に1煎目の個性はかなり驚きがありました。

個人的には「はるもえぎ」はハレな時に、「かなやみどり」は本を読むときに良いかなと思いました。

さて、シングルオリジンの意義ってなんでしょうか。

コーヒーを例に取りますが、ここに2本の映画があります。

「おいしいコーヒーの真実 / 2008年」では、コーヒー豆の価格は金融市場の先物取引に左右され、価格を決める力の無いコーヒー豆生産者は困窮している、と問題提議がされます。
その後「ア・フィルム・アバウト・コーヒー / 2014年」では、産地・品質にこだわって選別されたコーヒー豆を、価値を理解するバリスタ、消費者に適正な価格で届けていく「スペシャルティ・コーヒー」の動きが紹介されています。

日本茶も、急須で淹れる茶葉の需要の低下、逆に単価の安いペットボトル飲料の需要増化により、茶葉の平均単価が下がっている流れがあります。特に機械化や大量生産の難しい山間部などの生産地にとっては「安く、たくさん」の競争に生き残るのは厳しい。

であればこれだけ個性のある高品質なお茶に、きちんと価値をつけて届ける必要がある。シングルオリジンのお茶は、この流れにあると思います。

生産者さんの努力や個性と共に、洗練されたパッケージやキュレーションでその魅力を伝える煎茶堂東京さんなど、日本茶にハマり始めて調べていると、日本茶には新しい動きが色々生まれているのだなと気が付きます。

次回は釜炒り茶を試します、読んでくださってありがとうございました。


煎茶堂東京Webショップ「はるもえぎ」

煎茶堂東京Webショップ「かなやみどり」

※季節のもののため、執筆時点では「かなやみどり」は売り切れのようです。また来シーズン!




参考:






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