思考メモ < 暗記は古い >
暗記というものが学習のある部分を締め、「これは暗記しておこう」「要暗記」などという言い方がまかり通っているわけですが、ようやくその部分に適当な言葉で光を当てられた気がする。
のでメモっておく。
例えば数学で、スキルがアップする、ある問題が解けるようになる、ということを考えると、
『問題を見た瞬間にざっくりと解法(その候補)が頭にうかぶ』
という状態が目指すところに思える。
で、瞬間的に解法を思いつくためには頭の中に一定のうまくやれるパターンがストックされていることが必要で、それを
「パターン暗記」
などと称したりする。
その事実自体は間違いではないのだが、問題はその事実とどう向き合うか、の姿勢の部分なのだ。
つまり、多くの学習者は
「問題を解きたい」
↓
「そのためにはうまくいく方法のストックが必要」
↓
「そのために解法パターンを暗記しよう」
このような思考回路に陥る。
これが根本的に誤っている気がする。
例として数学をあげているが、それは算数だろうが、国語だろうが、英語だろうが、どの学習にもあてはまりそうだ。
英語で言うなら、
「英文が読めるようになりたい」
↓
「そのためには文法知識や単語のストックが必要」
↓
「そのために単語を暗記しよう」
このような回路になる。
同じ意味で逆に述べると
「英単語や文法知識をたくさん暗記する」
↓
「意味がわかるところが増える」
↓
「英文が読めるようになる」
一見、あたりまえだし、私もそのように考えてきたし、
普通に
「その考え方の何がおかしいねん?」
となると思う。
さて、何がおかしいのか。
私が今回修正したいのは「暗記」というワード、学習において「何かを暗記する」という姿勢についてである。
****
端的に結論を言ってしまうと
「暗記する」
↓
「暗記しちゃってる」
に変えたいわけですね。
(これだけで話の全貌が見えるひとは、そうとう私と思考が近い笑)
そして
「暗記しちゃってる」状態は、ふつう「覚えた」という自覚を伴わない。
言語化すると「知ってる」という状態と同じだと思う。
例えば、私の場合
「琵琶湖を水源とし、滋賀、京都、大阪を通って、大阪湾に流れ込む一級河川の名称は?」
という問題に対して、即答で
「淀川」
と答えるわけですが、これは暗記したわけではない。
物心ついた時から淀川のほとりで生きてきたし、住所はもともと大淀区だし、生活の中に「淀川」ということが存在したので、それは暗記対象ではなく、単に「知ってる」という状態なのである。
ところが
「では、淀川が琵琶湖から流れ出す大津市においての名称を答えよ」
という問題には答えられない。
答えは
「瀬田川」
なのですが、ではこれは、「難しい」問題で「要暗記」なのかと問えば、
大津市に暮らしてる人からしたら「え?」となる。
くらしの中にある川の名前は、どんなに学がない人でも「暗記しちゃってる」わけですね。
*******
これまで、生徒が暗記を嫌がったり苦しんだりしているときに、なんとなくそのへんのものを指差して
「これ何色?」
「え?黄色だけど」
「そう、正解」
「なにそれ」
「で、これが黄色って色なんだけど、一生懸命暗記した?」
「してない」
「暗記してないのに、勝手に知ってたよね。この知識も、そういう風になったら楽だよね」
とか、しゃべってきたのですけど、
その会話で私が接触していた思考部分がなんなのか、
さっき自分でもだいぶ整理がつきました。
つまり
効率よく暗記するためには、「暗記」というワードから離れることがとても大切
暗記しようとして暗記するものは残らない
という、非常にシンプルなこと。
じゃあどうすんねん、というと
「知らないうちに『暗記しちゃってる』状態に至るシステムを構築すること」
言語化するとバカみたいだけれど、
学習能力の高い人はおそらくこれを無自覚にでもやってる。
「好きこそものの上手なれ」
という言葉がありますが、
その本質はなかなかみえてこなかった。
確かに結果論、好きなこと、はよく覚えている。
私はたとえば
・ペルーの首都はリマ
・ペルーには世界一高い場所にある湖「チチカカ湖」がある
・ペルーにはインカ帝国の遺跡「マチュピチュ」がある
このようなことは、暗記した記憶がないが今でも記憶の中に刻まれている。
なぜかと言うと、中学の社会の時間が退屈すぎて、基本的に「タッチ」か「地図帳」を読んで過ごしていた。
地図帳で、知らない国を開けて、脳内旅行をするのが楽しみだったのだけれど、一番何度も脳内旅行したのがペルーだった。
しょうもない授業のあいだ、まずリマに降り立つところから、マチュピチュ、クスコ、チチカカ湖、など(そのへんは地図帳に書いてある)をどのように旅行するか、ずっと妄想しているわけです。
そうして、何度も何度も脳内で旅をしたので、暗記ではなく、もう「何度も行った場所」として脳に刻まれてしまっているわけです。
また、よくある話ですけど、「暗記は苦手」などと言っているとある女子も、アイドルの名前はびっくりするぐらい覚えているわけですね。私はSnow Manの名前を誰一人知りませんけど、その子は全員完全に覚えてるわけです。
それは一生懸命暗記したのではなく情報と夢中に接触しているうちに、知らないうちに脳に刻まれていたはずなんですね。
1.火吹き山の魔術師
2.バルサスの要塞
3.運命の森
4.さまよえる宇宙船
5.盗賊都市
6.死の罠の地下迷宮
7.
8.雪の魔女の洞窟
9.地獄の館
10.
さて、これは今思い出して書いてみた、
ゲームブックFF(ファイティング・ファンタジー)シリーズの1~10巻のタイトルです。
地獄の館が10巻だったかもしれない。
でも、だいたい合ってるはず。
これは、私が小学生のころドハマリしたゲームブックです。
だからそれから30年以上たっても、こうして思い出せる。
答え合わせしてみます。
1.火吹山の魔法使い (×火吹き山→○火吹山、×魔術師→○魔法使い)
2.バルサスの要塞 (正解)
3.運命の森 (正解)
4.さまよえる宇宙船 (正解)
5.盗賊都市 (正解)
6.死のワナの地下迷宮 (×罠→○ワナ)
7.トカゲ王の島 (×)
8.サソリ沼の迷路 (×)
9.雪の魔女の洞窟 (×8巻→○9巻)
10.地獄の館 (×9巻→○10巻)
まあまあ。
やっぱ地獄の館が10巻か。
そんで、トカゲ王の島とサソリ沼の迷路については、聞けば「ああ、そういうのあったね」と思い出すわけですけど、他のと比べて駄作なので、あんまやりこんでないのですね。
これも面白いね。
やっぱつまらなかったものは、頭にあんま残ってない。
ほかは泣くほど繰り返しやったのでさすがに覚えてます。
こんなタイトル、暗記しようとしたことなど一度もないけれど、すべて覚えている。
これは何も私が記憶力いいです、すごいでしょ、という話ではなく、
みなさんも、他のジャンルで
洋楽のタイトルだったり
アニメの登場人物だったり
スーパーカーの名前だったり
ウィラポン・ナコンルアンプロモーションだったり、
ラタナポン・ソーワラピンだったり
何かしら、死ぬほど覚えてることあるでしょ。
誰にだって。
そういう状態に持ち込むことが、たぶん最も好ましい記憶の方法なのですね。
夢中になってやってたら「暗記しちゃってた」
*********
さて、とうぜん
「勉強に夢中になるのが難しんやろがい」
というツッコミが聞こえてくるわけですが
今現在の私の返答は
「夢中になれない勉強ならしないほうがいい」
これですね。
「楽しくないなら、その勉強は害悪」
またお話しましょう。
(画像は、バルサスの要塞のやばい敵キャラ「ガンジー」)
[2020.03.19 facebookから]