スタンフォードMBA留学記(2024年卒業) ⑦日本の女性と海外MBA
日本から海外MBAに行く意味について書いてきましたが、ここで日本の女性が海外MBAに行くことについて触れます。
スタンフォードだけでなく、アメリカのMBAを見渡しても、日本の女性は男性に比して少ないです。
私自身、東大の学部時代を思い返せば、女性比率は約20%でした。その後、社会人になっても、総合職に占める女性の割合も低かったです。
スタンフォードMBA全体を見れば女性比率は45%とほぼ半分ですが、日本人でみると学部や社会人の頃と変わりませんでした。
日本の難関大学の受験と同じように、様々な障壁があって、そもそも海外MBA受験に挑戦しようという入口のところに辿り着く女性が少ないように感じています。自分は、MBAに辿り着くまでにあった数々の網にたまたまかからなかった幸運な魚のようなものだと思っています。
まず、社費で日本企業から留学させてもらっているのは、圧倒的に男性が多いです。金銭的・時間的にMBA留学のハードルが高いためか、日本からは社費留学の方が多いですが、そもそも総合職に男性が多いですし、男性ばかり派遣されている印象があります。
そうすると、そもそも女性社員が社費留学に申し込まないのだという話も聞くのですが、私のこれまでの観察では、女性が全く申し込んでいないわけではないです。日本企業が社費留学に出す30代半ばという年齢的なタイミングで、海外に憂いなく行けるのが男性になってしまっているという事情もあるかと思いますが、企業側が制度を変えて女性が申し込みやすいようにするといった話も聞いたことはありません。
スタンフォードMBAでみると、日本だけでなく、アジア全般的に女性比率が低かったです。大学側からMBA生の声としてインタビューの依頼があったときも、ジェンダーの話を取り上げられましたので、日本やアジアから女性がもっと増えてほしいのかなと思いました。
スタンフォードMBAで10年ぶりに男女ほぼ半々の環境に置かれた、私自身の経験を少しシェアします。
WIM (Women in Management) というクラブ活動があります。キックオフイベントで、大きな教室が目を輝かせている女性のクラスメイトたちで埋まったときにはじーんと感動しました。
1日かけてのイベントもありますが、定期的にグループごとに集まっておしゃべりするのが主な活動です。みんなリーダーになっていく女性ですが、キャリア、人生プラン、たわいもない悩みなど、ソファに座って話していると、こんな話をこれまでできなかったなと思いました。楽しかったですし、ためにもなって、こういう話をできる場は大事だと感じました。
女性が少ない環境にずっといるのは、きつい靴を履いていると慣れてしまうのに似ていると思いました。怖いのは、きつい靴に慣れてしまうと、履いていることにも気づかないことです。自分では堂々としてきたつもりでしたが、知らないうちに縮こまってしまっていたと気づきました。
そこから解放されたことで、久しぶりに伸び伸びできましたし、思う存分に息ができるような感覚で、とても癒されました。これまで思う存分に息していなかったことも自覚していなかったのですが。
日本ではその都度、最も強い女性との扱いを受けてきましたが、スタンフォードMBAでは自分なんかより破格にパワフルな女性たちに囲まれました。WIMで同じグループの女性に、私のことを「か弱いから守らなきゃという気になる」と言われたときにはびっくりしました。日本では強すぎると思われるくらいでも、世界レベルではまだ全然だったのだなと笑えました。
そうしているうちに、今さらきつい靴を履けと言われても無理というか、これまで受け流してきたようなことを受け流せなくなりました。受け流せないだけでなく、受け流したらいけない、声をあげていかなければいけない、と思うようになりました。
このような経験を踏まえて、日本から海外MBAに羽ばたく女性が増えたらいいなと願っています。みなさん、きつい靴を脱いで伸び伸びしてみませんか?