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プロレス&マーケティング第87戦 「スイカ固め」という究極の必殺技解説。
この記事を読んであなたが得られるかもしれない利益:世の中は「プロレスは予定調和」などとバカにするが、笑うほど浅はかだ。しかし、超一流レスラーともなると、勝負から試合展開から全部コントロールできる。でもプロレスの話でしょ?違うって、きのう僕が遭遇した「スイカ事件」は素人に偽装した超一流プロレスラーに、やられたんだって!
儲かるプロレスとは何か
嫌だねぇ、儲かるプロレスなんて下卑た言葉、いやらしい、お前はいつもプライドを持てないプロレスなんて、クリープをいれないコーヒーだなんて言っているくせに宗旨替えかよ、となじることでしょう。
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でも一応プロレス&マーケティングなどと大風呂敷を広げてる手前、マーケティング=儲けることと、単純化してみましょう。
今日のお話はきのうの「スイカ事件」に関係があります。
さて、僕のいう「儲かるプロレス」とは、予定調和のないプロレスのことです。
予定調和のプロレスとは何か
世間は「どうせプロレスなんて予定調和の疑似ファイトだろ」などとプロレスを軽く見ます。
予定調和つまり、あらかじめ勝敗とそこに至るまでの動きが決まっているんだろう、そういいたいわけです。
バカげた誤解です。
しかし、本当の予定調和とは、「勝敗も相手の動きも自由自在にコントロールしたプロレスラーの作品」、なのです。
実は一流のプロレスラーは、このスキルを持っているのです。
要するに、一流のレスラーならば自分が意図する絵を描ける、のです。
つまり自在に試合にテーマを持たせ、相手のどこを引き立て、どういう感動をつくるかを、ゴングが鳴って相手と手四つ(てよっつ。相手と自分の手を合わせること)した瞬間、イメージして、そのとおりに試合を運ぶことができるのです。
こレこそが本当の「予定調和のプロレス」なのです。
これはこれで素晴らしいですが、両者にかなりの力の差がないと、実現できないことも確かです。
世間はしばしばこういう試合を見て、プロレスには全部シナリオがある、などと誤解するのですが、プロレスを深く理解されている読者の皆様は笑っておられますよね。
予定調和のないプロレスとは何か
さて、一流の、いやこれは超一流の、と言い直しましょう。
超一流のプロレスラーは、もう一つのスキルを持っています。
それは「予定調和のないプロレスができる」というスキルです。
それは、観客の声なき声を聞き分け、時代の声に耳を澄まし、ビジネス状況の変化を察知し、相手レスラーのコンディションに合わせ、偶然いあわせた元カノの気を引こうと茶目っ気をだし、そのレスラーのビジネス感性と気まぐれそして創造者の類稀なインスピレーションを働かせて、自由にファイトするプロレスのこと、です。
予定調和のないプロレスが一番儲かる、といったのは、このプロレスこそ、一番ファンを喜ばせ、感動させて、結果最も大きな売上と利益につながった、という実績があるからです。
じゃあ一体その試合はなんなんだよ、教えろよ、と言われるかもしれませんが、それは秘密にしておきましょう。
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プロレスって「プロレスってこういうものだ」という枠に実はハマらないんです。
世間は「プロレスはこうなんだ」、マニアの方も「こうあらねばならない」とおっしゃいますが、「プロレスはあなたの知性と感性でいかようにもとらえられる」のです。
例によって僕の勝手な解釈ですがね。
ですから、もちろん、今日のプロレス論も、「これがプロレスというものなんだ」と押し付けるものではなく、単なる戯言とご理解ください。
スイカ固めというアドリブ
さて、前置きが長くなりましたが、きのうの「スイカ事件」は実はプロレスだったのです。
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スーパーのスイカ担当のシバタさんvs野呂、です。
どちらが超一流のプロレスラーで、どちらが、どんな技で勝ったんだっていうんですか?
一流のプロレスラーはシバタさんで、そして勝ったのは僕です。
フィニッシュホールドは「スイカ固め」(笑)です。
この勝負のポイントは、実はシバタ選手はわざと負けた、というところです。
試合展開は、こうです。
シバタは序盤、相手(野呂)の意図と技量を見抜き、中盤は相手に付き合い、終盤は実力通り組み伏せる、つもりだったが、インスピレーションが湧いて、野呂に勝たせた。
勝負は霊感に従え
解説をしましょう。
シバタ選手は、勝つつもり、つまり、僕に4700円のスイカを買わせるつもりで、勝負を仕掛けました。
その駆け引きは出たとこ勝負です。
でも、その前に相手(野呂)の実力を見なければなりません。
2500円の手頃なスイカを見せて、野呂のスイカ脳、つまりスイカに対する愛着と知識をチェックしました。
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しかし、商売の駆け引きは自分のほうが上です。
2500円のスイカはやめて、4700円のスイカのほうがいいことを力説して、力技で僕に高いスイカを買わせようとしました。
しかし、そこに突然インスピレーションが湧いたのです。
「いやここは、お店ファーストじゃなくて、お客ファーストにしよう。自分が負けて相手に勝たせよう。霊感がそうしろと言っている」。
「負けて勝つ」こそ最高のマーケティング
僕の拙い読みを披露しましたが、いかがでしょう。
思うに、シバタさんは若い人でしたが、プロレスファンだと思うんですよ。
それも、僕よりもプロレスをよく知っていて、それが体に染み付いているというかなりの手練れ。
だから、リングにあがって戦わなくてもこころは常在戦場、つねにプロレスラーとして、あらゆる局面で戦っているのです。
僕の想像に過ぎませんが、シバタ選手の「予定調和のないプロレス」は、結局お客に利益を与え、それがまわりまわって会社にも利益を与える流れを創ったという点で、大成功だったと言えるのではないでしょうか。
それにしても、いつも「プロレス命!」などとのたまってるくせに、まだ見ぬ強豪にころりとやられる、ざまあないな、と大いに反省した次第です。
「スイカ固め」で勝ったのは、実は僕ではなく、シバタ選手だったのです。
野呂 一郎
清和大学教授