政治家の最強イメージ戦略としての”犬”。
この記事を読んであなたが得られるかも知れない利益:アルゼンチン新大統領の困ったイヌ好き(笑)事例から考える、政治家と犬。あなたのイメージ戦略としての犬論。
アルゼンチン大統領と4匹の犬
自国の通貨ペソをドルにかえ、中央銀行を廃止すれば、インフレも貧困もなくなると過激な主張で、アルゼンチン新大統領に就任した、ハビエル・ミレイ氏(53)。
同国のインフレ率は160%、つまり1年前100円で買えたものが、260円になっています。
人口約4600万人の5人に2人が、貧困層だとされています。
そんな中で、元経済学者であるミレイ氏の電気ノコギリを掲げて、旧来の常識をぶった斬るというパフォーマンスが受けて、新大統領になったのです。
ミレイ氏の当選の理由は、もうひとつあるかもしれません。
それは彼がイヌ好き、ということです。
The Wall Street Journal電子版2024年2月24日号に載ったこの写真、クローンのイングリッシュ・マスティフとご満悦の様子ですね。
ミレイ氏のイヌ好きエピソード
・大統領就任後のインタビューで「人と犬どっちが好き?」と問われたところ、犬、と答えた。
・大統領就任式で披露するバトンに特注で4匹のイングリッシュ・マスティフを刻印させた。
・大統領就任後、ブエノス・アイレス郊外で犬をひいたバスの運転手を、法務大臣に命じて探し出させ、拘留し「いい仕事をしたろう?」と自慢した。
犬と国家リーダーのエピソード
フランス・マクロン大統領はラブラドールとグリフォンの異種交配で出来た犬をかわいがっていますし、プーチン氏も日本から寄贈された秋田犬を飼っていることで知られています。
しかし、ルーズベルト大統領の愛犬ピートは4匹のリスを噛み殺し、フランス大使を追いかけ回しました。
アイゼンハワー大統領の愛犬は、2万ドルのじゅうたんに粗相をして、訓練所に送られました。
バイデン大統領の犬、コマンダーもしつけが悪いせいか、20数名の側近を噛み、ホワイトハウスから追放の憂き目にあっています。
犬をうまく使えない政治家
日本で政治家と犬、と言えば、生類憐れみの令を発布し、「犬公方」として名高い徳川綱吉が思い浮かびますよね。
犬をやさしく扱え、という命令を国民に出したわけですが、賛否ありますが、現代の日本であれば、それはイメージ戦略としては悪くないと思います。
避難所ペット問題が取り沙汰されるのも、犬が家族の一員であることへの理解が広まっているからでしょう。
さて、しかし、あらゆることはTPO(Time, Place, Opportunity時と場所とタイミング)ですよね。
その意味でアルゼンチン新大統領の「オレっちは、ひとよりお犬のほうがすきだよーん」的なパフォーマンスはどうでしょうか。
アルゼンチン国民は貧困に喘ぎ、未曾有のインフレに苦しんでいます。
はっきりいって逆効果、なのは、この写真が証明しています。
「犬のマスクをしている女性が「お前は貧困をクローンしている!」と叫んでいる姿ですね。
これは、ミライ大統領の4匹の愛犬がクローン犬だったことに、あてつけて
大統領を「貧困をクローンした」と非難しているわけですね。
細部に神が宿る
僕がバイデン大統領がダメだな、と思うのは、例のコマンダーという愛犬が、悪さをする件を放置していたことです。
側近たちを噛むという行為は、有権者に「バイデンは本当は犬をかわいがってないから、コマンダーが噛み散らすんだわ」というシグナルを与えかねません。
仮にバイデンの愛犬が、お茶目でカメラ目線の笑顔をくれるワンちゃんだったらどうでしょう。
マスコミは犬に殺到し、心温まるショットを新聞に、雑誌に載せてくれるでしょう。
大統領選に勝つには、細部に至るまで目が行き届かないとなりません。
その意味で、バイデンさんは「神は細部に宿る」がわかってないなあ、そう感じるのです。
しかし、リーダーと犬の取り合わせは悪くないのです。
それは、犬を可愛がることで、「庶民と変わらない」というイメージが作られるからです。
しかし、それが全面に出すぎると、アルゼンチン新大統領のようにマイナスに働くのです。
さあ、愛犬家のリーダーの皆さん、犬とどんなツーショットを撮ってホームページのトップに載せるか、考えましょう。
これは案外、戦略の優先順位が高いアクションですよ。
野呂 一郎
清和大学教授
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