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プロレス&マーケティング第107戦 デビ婦人とウナギ・サヤカの奇妙な符号。

この記事を読んであなたが得られるかもしれない利益:里村vsウナギのワンマッチが成功したのは、時代の要請だ。ときを同じくしてあのデビ婦人がワンニャン政党を旗揚げ、参院選に打って出る。この2つの出来事の共通項とは何か。木村vs藤波の秘話もあるよ。トップ画はhttps://00m.in/SXFso

女子初のワンマッチ興行

先日、”女子プロレス界の横綱”こと里村芽衣子と”お騒がせ女子プロレスラー(東スポ命名。ダサい?)”ウナギ・サヤカが後楽園ホールでワンマッチ興行で激突しました。

大方の予想に反してウナギ・サヤカが25分も粘り、最後は脳天へのカカト落としでスリーカウントをとられましたが、大熱戦で観客も札止めの1600人を動員して、大成功の興行でした。

ワンマッチ興行と言えば、後にも先にも、今から38年前の1987年に同じ後楽園ホールで行われた、木村健吾vs藤波辰巳があまりに有名で、僕は、前売り券が変えずに当日券を求めてホールに3時間前に駆け付けたのですが、当日売りもすでになくなっていました。

ダフ屋がいなくなった

ところで、皆さん、ダフ屋ってご存じですか。

プロレス用語と言ってもいいのですが、券がなくて右往左往しているファンのところにやってきて「兄ちゃん、木村vs藤波みたいんやろ、3万円でどや(なぜか関西弁)?」と言い寄ってくるいかにもいかがわしいおじさんたちのことです。

さすがに3万円は手が出なかったのですが、いまって「ダフ屋」が出るような興業は絶対ないですよね、でも昭和にはあったんです。

ダフ屋登場が、この試合の価値を物語っていたのです。

”集中”というマーケティング価値

「ドーム観戦」ってつらくないですか。

12試合もあるし、結局大きなスクリーンみるだけで、熱狂が間接的に伝わるだけだし。

https://00m.in/dAFBP

それに、お目当ての試合を見るために、8人タッグみたいな明らかな員数合わせのマッチメイクをしのがなきゃならないし。

そこにあるのは、「分散」なんですね。興味の分散、興奮の分散、期待感の分散等々・・。

ファンが求めているのは分散じゃなくて「集中」なんですよ。

お目当ての試合だけに集中したい、そんな声なき叫びを、僕はいつも東京ドームで心の耳がつんざくほど、聴くんです。

はい、そこで「ワンマッチ興行」です。

絶対みたい試合がそこにある。

そしてそれだけしか演らない。

いさぎよいというよりも、その見たかったイベントだけに集中させてくれる仕掛け。

ワンマッチに集中するからこそ、スタッフも全力をそのマッチだけに注げ、演出も念が入ったものになる。

そして、ワンマッチ興行をやった二人のプロレスラーとしての価値は上がり、伝説になる。

ただ、誰かれかまわずワンマッチをやればいいというのではなく、

1.戦う必然性
2.時代の要請
3.大きなリスク

この3つが必要です。

1.の戦う必然性については、ウナギが「引退前にお前とやりたいんだよ」と言ったセリフがすべてでしょう。

2.の時代の要請は、要するに女子プロレス界の明日を、里村がウナギに託した、ということです。

3のリスクに関しては、たとえば、純粋に負ければレスラーとしての大きなものを失う、ということです。

木村vs藤波の場合、藤波にそのリスクがありました。格下と思われていた木村に一敗地に塗れるようなことがあれば、「藤波は終わった」となるからです。

藤波vs木村は”デスマッチ”だった!

またこの試合はリングの設営にもリスクが忍んでいました。

通常リングの骨である板の上に置く緩衝材を取り外し、その上に薄いカバーを覆うだけにしたのです。

バックドロップでも食らおうものなら、屈強なレスラーでも一発昇天は間違いありません。

二つのリスクが、このワンマッチの期待度をいやがうえにも盛り上げたのです。

しかし、今回のウナギvs里村には、このようなリスクはありませんでした。

万が一にも里村がウナギに負けるようなことはないし、ハンディ戦でもないからです。

今回の興行が大成功したのは、「時代が”集中”を求めていた」からではないでしょうか。

リスクのない分を、”ワンマッチ”といいう舞台設定が補ったのです。

”集中”とは”殺気”と言い換えてもいいでしょう。

レスラーも、観客もワンマッチに意識が集中すれば、おのずとその試合は殺気を帯びるのです。

里村の「5分で終わらしてやる」という前説も、この試合に殺気を与えました。

デビ婦人出馬との妙な符号

デビ婦人が今年の参院選出馬を表明しました。

この話、ウナギのワンマッチと重なるんです。

なぜならば、デビ婦人の方向性も”ワンマッチ”だからです。

犬、猫を救うという「わんにゃん」政党を立ち上げて、ワンマッチならぬ、ワンイシュー(one issue 争点はひとつだけ)というわけです。

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デビ婦人についている”選挙の神様”によれば、「ワンイシューこそわかりやすく、大衆が集中しやすいたいへんクレバーな戦略。デビは必ず勝つ」とのことで、早くも神様のお墨付きが出た形です。

いろんな政策や主張を掲げる幕の内弁当よりも、シュウマイ弁当の方がおいしく感じる、今はそういう世の中なのです。

野呂 一郎
清和大学教授


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