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「女性おひとり様専用店舗」でマーケティングを改革せよ。
この記事を読んであなたが得られるかもしれない利益:企業が逃している最大のチャンスがある。それは、女性おひとり様専用店だ。女性おひとり様専用のレストランを創ることで、これからの最大の消費者である、一人女性を知り、彼女から全く新しいビジネスのヒントをもらえる。例えば女性用トイレはどうデザインすべきか、がわかる。
女性ひとり客はマスクト・ニーズ
おとといの記事で、無添加のハムを使ったサンドイッチは、マスクト・ニーズつまり、誰も気がついていないが現実にはしっかりと存在する要求、であると主張しました。
もう一つ、僕は考えるのですが、サンドイッチどころではない、隠されたニーズが存在するのです。
それは飲食店における、女性の一人客です。
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女性が一番困っているのは何か、それは僕に言わせれば、一人で入れるお店がほとんどない、ということです。
もちろん、女性が一人で入れない飲食店など存在しません。
女性が、心からくつろいで、ホッとして、安心して、一人で楽しく食事をできるお店が極端に少ない、ということです。
なぜ、女性が安心できる店がないのか
それは、女性の本当のニーズを知らないからです。
女性が小ぎれいな、美味しいものを、マアマアの価格で出すお店でも、足が向かないのはなぜなのか。
それは「一人で飲食しているところを見られたくないから」です。
女性は、この悩みをあまり大っぴらにいいません。
「ぼっち」であることを広言しているようで、きまりが悪いからです。
サブ的な理由としては、以下があります。
1.女性が落ち着ける雰囲気の店が少ない
女性の好みに特化した飲食店など聞いたことがありません。
美味しい店ならば、男性客でごった返していても行くといういわゆる「オヤジ化」した、グルメ女性も増えてはいますが、依然として少数派です。
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2.女性が好む、健康的な食材を使ったカロリー少なめのおしゃれなメニューがない
女性が好きな味付けをベースにすれば、男性客のニーズにあわないからです。
飲食店は基本、中年男性の好みにあわせています。
3.トイレが狭く、きれいでなく、男女兼用である
ここが最大のポイントです。
某大学で行った女子生徒に対してのアンケートでは、トイレを改善してほしい(お化粧を整えたり、大きな鏡が必要)との要望がダントツでした。
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飲食店に対しての公的な調査結果は見当たりませんでしたが、飲食店における隠された重要ニーズのど真ん中には、トイレがあります。
男性の僕でも、どんなに今風のかっこいい店でも、トイレが狭くて汚い店には二度と行きたくない気がしますね。
Green Leafさんの提言
一昨日、サンドイッチの記事を書いたら、Green Leafさんが「からだが喜ぶ食材で作った惣菜を売りたい」というプランを打ち明けてくださいました。
このお言葉に女性の隠されたニーズが、はっきり読み取れるような気がするのです。
ご自分だけではなくて、家族に、知り合いには、カラダに良いモノを食べてもらいたいということです。
当然、今日の文脈に直すと、からだに良いものは、こころにもよいものである必要があり、それは「女性一人で入りやすいお店」につながります。
結論:おひとりさま女性専門の店を作れ
結局、飲食業界のマーケターは、お一人様女性のニーズがどれほど強いものか見えてない、っていうことです。
でも、飲食店側に、Green Leafさんのような「理想やこだわり」がみえないことも、こうした店が絶無であることの理由でしょう。
おひとり様女性専用の店を創れ、僕はそう言いたいのです。
実は、だいそれた覚悟や理想もいりません。
損得だけを考えても、おひとり様女性専用の飲食店は儲かるのです。
第一の理由は、述べてきたように、一人で人目を気にせず、落ち着いて、楽しく美味しい食事をしたい、というマスクト・ニーズはものすごく強いものがあることです。
もうかりますって!
第二の理由は、時代が求めているからです。
おひとり様女性専用店舗は、あるだけで社会貢献になるのです。
働く女性たちには、オアシスがありません。
空腹で、疲れきった身体を引きずるように、よる10時に会社を出ても、目に止まるのはファミレスと牛丼チェーンしかありません。
一日神経をすり減らしたあとに、気持ちのいい、女性一人客を心からもてなしてくれるお店があったら、どんなに癒しになるでしょう。
第三の理由は、憎むべき男のいない空間が、女性には必要だ、ということです。
言ってみれば、朝の電車の女性専用車両の安心感、でしょうか。
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おっと、これは男性への逆差別ではありませんよ。
ごく一部の社会秩序を守れないバカ男がいるから、女性はいつも落ち着けないでいるのです。
それは、男性の同僚や上司もそうです。
つい10年前までは、男社会で、女性は給料も半分、お茶くみなどの屈辱的な扱いを受けていたことを忘れてはなりません。
今だってそうたいして変わらないのです。
控えめに言えば、今は男が女性差別について勉強して、正しい態度を身に着けつつある過渡期なのです。
でも、日中そうした無粋で無理解な男どもに揉まれて、疲弊しない女性はいないのです。
だからこそのお店のチョイスは、「No男」ということになります。
最後は、マーケティング的なしくみとしての、このおひとり様女性専用店舗の優秀さ、です。
具体的な運用と予想される経緯は以下です。
1.基本的には「女性、おひとり様専用店舗」とうたう
妥協案として、女性おひとり様専用エリアと、一般客を分ける。
2.席が埋まった場合、一般客席に案内する
その場合、まず「申し訳ありません、女性席満席でございまして、一般席のほうでよろしければ。でも、すぐにおひとり様専用席に改造しますので、女性席同様のここちよさをお楽しみいただけます」と言葉を添える。
ここに、この店の最大のトリックがあります。
一般席をスイッチひとつで、パテション付きの一人快適な空間を現出させる仕組みです。
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3.自然に女性だけの店舗になっていく
最初は女性/一般と棲み分けがあっても、あくまで一人女性を大切にするというポリシーと実践を貫けば、女性ひとり専用店として、認知が進み、常に女性で満員になる。
4.おひとり様専用店として安定した経営が実現する
マスコミ、SNSで取り上げられ、自然におひとり様専用店としてのブランドが確立する。
ナレッジの宝庫としてのおひとり様専用店舗
近年の経営学のはやりは、ナレッジです。
ナレッジ(knowledge)とは、辞書で引くと「知識」ですが、ビジネス用語では、「ビジネスに使える知的資産」を意味します。
要するに、ビジネスのアイディア、知恵、ノウハウ、イノベーションなどなど、目に見えない知的なことやもの、です。
おひとり様専用店を運営すると、このナレッジがえられるのです。
なにせ、初めての業態ですから、新しいヒントや考え方が得られるのは、当たり前です。
そして重要なのは、女性相手というビジネス形態からゲットできるだろうナレッジの重要さです。
今まで、マーケティングというマーケティングは、男中心の考え方で構築されてきました。
これがひっくり返る可能性があるのです。
女性という虐げられた、しかし特別の知性を持った存在が、経営側と客側で交錯し、刺激し合うことで得られる知恵が、ビジネスを世界を変えるかもしれません。
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野呂 一郎
清和大学教授