プロレス&マーケティング第44戦 韓国デモに学ぶプロレス復活のヒント
この記事を読んであなたが得られるかもしれない利益:デモの大国・韓国に学ぶ「発散」という知恵。デモは抵抗運動でもあるが、壮大な祭りでもある。それはプロレス興行にも一脈通じる。トップ画は韓国を代表する世界的レスラー大木金太郎。ハラダ画伯の手になる。
反抗の国、韓国
ニューヨーク・タイムズWeekly2023年11月5日号は、韓国が一面です。
見出しは「韓国、いつも反対運動をしてる国(South Korea, a place of constant protest)」で、ちょっと共感した次第です。
今アジアの代表的な民主主義国、韓国の首都ソウルでは、今日もロックフェスティバルを想像させるような、大規模なデモが行われています。
年配の参加者が目立つ一群は、韓国とアメリカの旗を振って行進、Kポップのヒット曲「カンナムスタイル」を大音響で流し、反共、親米を大声で張り上げ、ユン・ソンニョル(尹錫悦)大統領の支持を訴えています。
一方では何万人もの若者の集団が、近くで「ユン・ソンニョル打倒!」を叫んでいます。
韓国のこうした反対デモは、数十年も続いており、特に80年代群衆が警察と軍隊とぶつかって以来、ソウルでのこうした反対デモは定番になっています。
ニューヨーク・タイムズはこう断じます。
「デモは日頃の鬱憤や不満を吐き出す、国民的娯楽になっている」。
必要悪としての反対運動
ところでデモの標的になっているユン・ソンニョル大統領の支持率は、直近データで32%、26%の岸田さんとそんなに変わりませんね。(笑)
しかし、ユン大統領を擁護するデモもあるわけです。
ある種、政府がこうしたデモに寛容なのは、デモが人々の憂さ晴らしとして機能しているからではないでしょうか。
確かに人々の政権に対する怒りが反対運動につながるのですが、怒りを発散させることで、いわゆる「ガス抜き効果」も少なからず発揮され、政権にとってうまい具合のバランスが保たれているのです。
実際にあるデモ参加者は、こんな本音をのぞかせます。
「なあに、野球場に行くみたいなもんさ。歌って踊って、こころゆくまで叫ぶのさ。日頃の単調な仕事のストレス発散だよ」。
プロレスとデモの共通点
この記事を読んで、プロレスと同じだなあと改めて感じました。
そうです、昭和の僕らがデモならぬ、プロレスに行くのは「猪木コール」をしに行くためだったのです。
今のファンなら、「デ・ハポン!」ですよね。
ご存知内藤哲也率いる、新日本プロレスで史上最高の成功を遂げたユニット、ロス・インゴベルナブレス・デ・ハポン(スペイン語で制御不能な奴らの日本版)の締めのマイクの決めセリフ合唱です。
全日本プロレスは、三冠王者時代の宮原健斗が、「ケントコール」を根付かせつつあります。
もちろん選手名のコールや合唱だけでなく、プロレスの空間の魅力は声を張り上げて応援できることで、それはストレス発散にも、自己表現にも繋がります。
声を張り上げて応援する行為は、選手、団体にとってもファンとの一体感を強める装置として、プロレスビジネスには大変重要です。
プロレス再興には、一人でも多くのファンを会場に呼び込むことです。
「僕も私も、大声で選手コールしたい」と思わせる仕掛けが必要です。
その意味で「デ・ハポン!」の合唱を思いついた内藤哲也は、天才です。
会場のファンは、ロスインゴのファンでなくても、あれ、やりたくなりますよね。
気がついてみると、最後の「デ・ハポン」をやりたいために、チケットを買ったりしています。
コール、合唱で参加意識を高めよ
最近のプロレスはジャパニーズ・ルチャと揶揄されるように、やたら飛んだりはねたりして、ファンがコールしたり、声援を入れたり、合唱するような「間」がありません。
入場は、コールが飛ぶ格好の舞台ですが、つんざくような選手コールはほとんどありませんね。
登場を待ちかねたファンが、自然発生的に選手の名前を呼ぶ、そんなレスラーが出ることが、プロレス界が突きつけられている最も重要な課題ではないでしょうか。
野呂 一郎
清和大学教授
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