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白人には効く薬も黒人には効かない、これは事実だ。
この記事を読んで、あなたが得られるかも知れない利益:あなたの飲んでる薬は効くのか?今日打ったワクチンは大丈夫なのか?AIは現代の「印籠」なのか?
時代のキーワードはインクルージョン
高校生の、大学生のみなさんが就活で内定を勝ち取る方法を教えましょう。
それは、「インクルージョン」という時代のキーワードに触れることです。
例えば、こんな質問が来ればしめたもの、「インクルージョン」と答えてください。
「いま最も興味を持っていることは何ですか?」
「あなたの勉強した経営学って何ですか?」
「世界のトレンドは何ですか?」
インクルージョン(inclusion)とは、直訳すれば「含むこと」です。
何を含むのか、それはあらゆる存在です。
それは性差を、年齢を、社会的地位を、人種を、国籍を、宗教を、政治的信条を問いません。
LGBTQを含む性的マイノリティを含む、あらゆる人々です。
現代の社会には、政治にも、経済にも文化にも、あらゆる種類の人間が参加しなくてはならないのです。
インクルージョンとは、究極の差別反対の形なのです。
医学もインクルージョンの時代
医学もインクルージョンの時代を迎えています。
いや、このインクルージョンは、政治や経済のそれよりも、もっとずっと重要です。
なぜならば、人の命に関わるからです。
何のことでしょうか。
薬の臨床実験のことです。
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ここ数十年、薬の効果は人種によって違う、という認識が広まっています。
しかし、現実は新薬の臨床試験の参加者は、圧倒的に白人が多いのです。
例えば骨髄腫の発症は黒人のほうが白人よりも2倍も多いのに、骨髄腫の臨床実験の被験者の黒人は全体の4.8%にすぎません。
2020年の新薬の臨床試験の参加者(被験者)は白人が75%、ヒスパニックが11%、黒人が8%でした。
しかし調査が示すところによれば、人種、民族、年齢、ジェンダー、性別によって薬の効き方が違うのです。
例えば、βブロッカーと呼ばれるある種の降圧剤は白人には効くけれども、黒人にはそうでもないことがわかっています。
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PD-1と呼ばれる免疫抑制剤を処方されたアジア人は、他の人種よりもガンの生存率が高いのです。
黒人やアジア人の新薬被験者はなぜ少ないのでしょう。
マイノリティ(黒人、アジア人を含む少数民族)にとって、大都会にしかない臨床試験が行われる研究センターは、遠くて行けないし、コスト面からも二の足を踏まざるを得ないのです。
結果、被験者は生活にゆとりのある白人ばかり、となるのです。
AIが答えなのか
人種、性差によって薬の効果が違う、アメリカはこの事実を重く見て、製薬会社に、臨床実験にインクルージョンを要求しています。
しかし先ほど言ったように、白人以外の被験者が集まらないのは、構造的な原因があるので、製薬会社は手も足も出ない、のです。
BusinessWeek2023年11月13日号は、Pharma tries AI to boost equality in drug trials (製薬会社が臨床試験に公正を期すために、AIを導入)という記事を発表しました。
そうなんです、予想されたように、臨床試験にマイノリティのデータがないのを、AIでなんとかしようというわけです。
BusinessWeekは、「AIがありゃ過去のデータから、その薬が黒人にも、アジア人にも効くかがわかって、この問題は解決だよ」、と言いたいようです。
AIは印籠じゃない
でも待ってくださいよ。
AIって、過去のデータを使っているだけでしょ。
新しい症状に対して、被験者がいない、つまりデータがまったくないのに、過去のデータをこねくり回して、「はい黒人にも、アジア人にも効きますよ!」って言っても、だまされないぞ!
少なくともオレっちは(笑)
でも、皆さんは信じるんですね、そんなトリックを?
AIは水戸黄門の印籠かよ!
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まあ、それはさておき。
ところで、皆さん、きのう僕が打ってきたコロナワクチン第7弾って、アジア人の臨床被験者でたくさん実験して、効果を確かめたお注射だから、
安全ですよね?
えっ?
「オレも打ったけれど、これから40度の熱が2日位出るけど、後遺症とかないみたいだから、お前も大丈夫だ」って?
信じますよ、あなたとそしてアメリカ。
野呂 一郎
清和大学教授