人事の明日を占う④今年、人事担当者は優秀なパートを戦略的に正社員にすべき
この記事を読んであなたが得られるかもしれない利益:労働力不足、人材不足に人事はどう対応すべきか。外部人材を物色する前に、宝の山がある。パート労働者だ。気の利いたスタッフはスカウトして、正社員になってもらうことだ。家庭の主婦が無理?そこをこじ開けることが、人事に求められる。
今の日本の労働環境は、20年前のアメリカ
The Future of Human Resource Managementという本を読んでいると、今の日本の労働市場は、ちょうど2000年あたりのアメリカに、似ていると感じます。
労働力不足が深刻になり、いわゆるコンティンジェント・ワーカー(contingent worker臨時職員)と呼ばれる、パートやアルバイトが正規社員を押しのけて労働力の主役になってきた時代でした。
ITバブルがはじけたのも2000年で、サービス労働力が、アメリカ経済を支えている事実もはっきりしました。
シニア労働者に、いかにモチベーションを与え、戦力にするかも、この頃真剣に討議され始めています。
ウォルマート、世界一の秘密
さて、いま日本ではパート労働者の103万円の壁問題で議論が沸騰していますが、いくらまで所得税をかければ、もっと働いてもらえるかよりも、いっそのこと、正社員になってもらって、がっつり働いてもらうことを真剣に考えましょう。
もちろんこうした取り組みは、すでにいろいろなところで行われていますが、働く側が正社員になりたくないからパートでやっているんだから、意味がないという意見があります。
ウォルマートが世界一のスーパーになった原動力は、「アメリカン・ドリームがそこにあったから」なのです。
優秀なパートを手駒にせよ
読者の、海尾守 中2病:かいびまもる様(https://note.com/witty_zoozoosea/n/n14cefffa4227)より、以下のような貴重なご報告をいただきました。
これを拝見し、「やるなぁ、ケンタのアフリカ人のバイト!」と感激しました。
バイト(まずそうだろう)でも、こういうやる気のある人はすぐ店長にすべきでしょう。
パートタイマーを正社員にするには
ウォルマートの実際を話しても、日本と労働文化や価値観が違うので、あえて、現在の若者が置かれている環境変化にかんがみて、パート労働者を正社員になりたいと感じさせるモチベーションを考えてみましょう。
ある程度長く働かないと、彼ら彼女らは「ここでずっと働きたいな」とは思ってくれないでしょう。
ですから、パートの時点でワーク・ライフ・バランスに配慮した労働条件を与えることがまず第一です。
そして主婦なら家庭第一、学生なら学業第一を認め、家庭や学校をいかなる時も優先というルールを労使で決めましょう。
サービス業で最も忌み嫌われるのが、カスハラ(カスタマーハラスメント客の嫌がらせ行為)です。
このシチュエーションでは、パート従業員が傷つく前に、素早く正社員が間に入るルールを決めておきましょう。
常に、パートには正社員のメンターをつけ、定期的な労働満足に関する意見聴取をし、不満な点は速やかに解消してあげましょう。
そのうえで、「キャリア・チャレンジ・システム」と銘打った、「正社員転換プラン」の存在を匂わせ、「興味があればいつでも紹介するよ!」と誘いをかけましょう。
ポイントは「優秀な人材は囲い込め!」です。
ダブルジョバーを創れ
こう言うと、「無理だよ、主婦をかんがえてごらん。家庭のことがあるのに、どんないい条件でも正社員になんかなれるわけないって!」と反論されることでしょう。
ならば思い切って週休4日制のダブルジョバー契約、はどうでしょうか。
ダブルジョバー(double jobber)とは、「家庭+パート、本業+副業」を持っているひとのことです。
ますます労働力不足が深刻の度を加える一方の日本、いち早くパートに週休4日制を導入して、正社員化し、優秀な人材を囲いこみましょう。
そしてゆくゆくは、貴社が日本のウォルマートになるのです。
人事部員のあなたは、ことしはこのプロセスに積極的に絡みましょう。
野呂 一郎
清和大学教授