この記事を読んであなたが得られるかもしれない利益:現代の経済の正体が不確実性であるということ。経営学の真髄は「コントロール」であること。もっというと経営学とは「自らやる、事を起こす精神」のこと。以上に関する考察。
不確実性の時代
40年ほど前、ケネス・K・ガルブレイスという経済学者が書いた「不確実性の時代」という本が大ベストセラーになったことがありました。
この本は数式モデルばかりの経済学の本でなく、むしろ歴史書と言っていいくらい、世界史の流れと経済を結びつけて論じていて、わかりやすかったのを覚えています。
この本でガルブレイスは20世紀を不確実性の時代と表現しましたが、21世紀のコロナ禍の今のほうが、不確実性の時代といえるでしょう。気候変動、自然災害、そしてコロナで明日が見えません。
そんな時代に数字や数式で経済、つまり人や企業の営為や出来事や意思決定の軽重を決められるわけもないのです。
明日起こることは、昨日までの延長線上だとは限らない、これが不確実性というものだからです。
不確実とは何かを求めるのが、今の時代の経済学の使命でしょう。
しかし、それは計量経済学や数式モデルの経済学では、答えを出せません。
「答えをくれるのは、経営学だ。」
そう僕が確信したのは、最近読んだあるビジネス雑誌の次のような一節です。
それは、BusinessWeek2021年11月22日号(P76)Fixing the supply chain with M&A(M&Aでサプライチェーンを立て直そう)で、記事はマサチューセッツ工科大学のデビッド・シムチレビィ(David Simchi-Levi)氏のことばを紹介しています。
教授は、コロナ禍で不確実性に翻弄される我々を、こう描きます。
そして、不確実性への処方箋をこう示すのです。
コントロールこそが経営学の真髄
コントロール、という考えこそが経営学の神髄です。経営学はコントロール、つまり、事態を和らげ、収拾する手だてを実行する手法そのものだからです。
コントロールとは、事態を黙ってみているのではなく、行動を起こすことです。それは企業家精神と言い換えてもいいでしょう。
つまり、俺がやる、の精神です。率先垂範のスピリットです。
「企業家精神こそ、経営学なんだ」、この記事で経済学と経営学を比較するうちに経営学とは何かという問いに、私はいま、気づいたようです。
経営学とは、行動の学問です。激流の激しさに手をこまねいているのではなく、なにか手立てを考えることです。自分ができることをすることです。
そうだったのか。
実際に今、コロナで世界的なサプライチェーンが詰まって、どうしようもないじょうたいです。
しかし、経営学は行動を起こしました。
世界最大の小売・ウォルマートと米・住宅建設資材小売大手のホーム・デポは自社でコンテナ船をチャーターし、部品調達のスピードアップを図ったのです。
アメリカン・イーグルアウトフィッターズは
物流2社(エアテラAirTerraとクワイエット・ロジスティックスQuiet Logistics)を買収し、より効率的な在庫管理と翌日配達を可能にするための配送スピードアップを実現したのです。
毎年やられてばかりのハリケーンに立ち向かう企業も出てきました。塗料・コーティング製造大手のシャーウィン・ウィリアムズ(Sharwin Williams Co.)は
これまでハリケーンに何度もやられていた、北米湾岸の取引先への依存を少なくするために、コーティング原料会社のスペシャリティ・ポリマー社(Specialty Polymers Inc.)を買収しました。
経営学とは、「やってみること」、と見つけたり
サプライチェーンが大混乱するという人類が、経済学者がエコノミストが予想もしなかった不確実性が世界を襲い、世界的なインフレという悪魔を呼び寄せつつあります。
経済学は数式でこれを分析するだけです。
でも、経営学はまずアクションを起こすのです。自分で船を出し、新たなサプライチェーンを構築し、M&Aをやって新しい供給網を作っちゃうのです。
今日も最後まで読んで頂きありがとうございました。
ではまたあしたお目にかかりましょう。
野呂一郎
清和大学教授/新潟プロレスアドバイザー