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プロレス&マーケティング第24戦 ミル・マスカラスの失敗。

この記事を読んであなたが得られるかもしれない利益:日本プロレス界最大の失敗は、仮面貴族・ミル・マスカラスのマーケティングである、という暴論。本当のスターは、生まれつきであるというこれまた身も蓋もない論。

仮面ライダー誕生秘話

きのうかな、NHKで昔の番組のアーカイブ作品をやってました。石ノ森章太郎の分析、みたいな番組でゲストが熱く石ノ森章太郎を語るのですが、一番面白かった箇所が、「ヒーローの父としての石ノ森章太郎」という章でした。

仮面ライダーは、石ノ森先生の作品だとは知っていたのですが、東映から企画会議に参加してくれないかと頼まれたのが、仮面ライダーの原点だとは知りませんでした。

石ノ森はライダーの原型をドクロとしたのですが、テレビ的に過激すぎるということで、妥協してあるデザインで決定したそうなんです。

しかし、石ノ森氏は「グロテスクが足りない」と言って、テレビ放映が始まる直前に、あのバッタのデザインに変えたというのですね。

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もし仮面ライダーがバッタのマスクでなかったら、伝説的なヒーローにはなれなかったでしょう。

仮面ライダーの話を聞いて、思い出したのです、あるマスクマンを。

それは仮面貴族・ミル・マスカラスです。

なぜ、マスカラスが最大のミスなのか

僕が言いたいのは、日本プロレス界は、マスカラスのマーケティング、つまり彼の市場への出し方で下手を打った、ということなのです。

どういうことか。

その前に、僕は仮面ライダーを含めて、あらゆる覆面ヒーローの中で、最高最大のヒーローはミル・マスカラスだ、という者です。

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ミル・マスカラスの前にマスカラスなし、あとにも、なし、です。

よくタイガーマスクとミル・マスカラスはどっちが凄いかという人がいますが、比べてはいけません。

比較の対象にならないのです、二人は全くの別物であり、どっちが強いか、実績があるかなどは、比べる意味がありません。

さて、どこで、日本プロレス界はマスカラスの使い方を間違えたというのでしょう。

それは、マスカラスと、デストロイヤー、猪木、鶴田を戦わせたことです。

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ミル・マスカラスの初来日は1971年2月19日ですから、もう半世紀以上にもなるのですね。

今の若いプロレスファンの皆さんは、マスカラスをご存知ないかもしれません。

タイガーマスクの人気はよく社会現象と言われますが、マスカラスの場合は、ファンが待ち焦がれていた、ある種の「タメ」が効いていたこともあって、ファンの熱狂の爆発度はタイガーマスクを凌駕していた、そう思います。

そのかっこよさとミステリアス加減が、当時のプロレスファンを虜にしていたのは事実です。

これに一役買ったのが、当時の東スポ(東京スポーツ新聞)です。

毎日一面で、ロサンゼルス・オーディトリアムでのマスカラスのファイトを取り上げ、「マスカラス、ドロップキック12連発」「華麗なる空中戦」などとやるものですから、プロレスファンは一度その勇姿を見たい、となったのです。

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来日すると、すぐにマスカラス・アーミーと呼ばれる熱狂的ファンが、常にマスカラスにつきっきりで、彼らに担がれての入場シーンは、いまだかつてない熱狂の証拠でした。

ビルドアップされた肉体に、同じものは二度とつけないというゴージャスで芸術性豊かなマスク、ジャンプしての華麗なリングインに、見たこともない高さのドロップキックに空中殺法、日本全国のプロレスファンが魂を奪われたのです。

実力?当時の中堅レスラーよりは上だが、まだ当時のエース、馬場、猪木には劣る、というところだったと思います。

しかし、プロレスは当時から強さではありません。

そこのところを、当時の日本プロレス関係者たちは、考えてなかったのかもしれません。

タッグで、馬場・猪木と戦わせて、マスカラスは猪木のコブラにギブアップしてしまったのです。

日本プロレス崩壊後は、馬場の全日本プロレスに何度も来日しました。

しかし、プロモーターは同じ覆面レスラーのザ・デストロイヤーと戦わせたり、当時の準エース、ジャンボ鶴田とのUNヘビー級選手権をやらせたりしたのです。

当時のマスカラスでは勝てませんよ、残念ながら。

スターを育てるマーケティングとは

前置きが長くなりましたが、要するに僕が言いたいのは、「なぜ、マスカラスが負けるようなマッチメイクをするのか」というひとことなんです。

とにかく当時のマスカラスは、圧倒的な人気と、前代未聞と言っていいスター性があった。

馬場、猪木よりも、鶴田よりも人気があった。同じ覆面レスラーでも、デストロイヤーなど比較にもなりませんでした。

プロレスの勝ち負けは興行だ、という現実も100%否定はしませんが、それにしても、マスカラスを負けさせる画、というのは日本プロレス界の自殺行為ではなかったか、そう思うのです。

プロレスに限りません、スターは作ろうとして作れるものではないのです

スター、とりわけスーパースターは生まれ持っての才能なのです。

だからこそ、大事に育てなくてはなりません。

僕がプロモーターだったら、マスカラスが負けそうになったら、若手やガイジンを乱入させて試合をぶっ壊しますね。(笑)

まあ、当時は日本人レスラーの”格”を守らなくてはならない等の、難しい事情もあって、仕方なくマスカラスをマーケティングに無謀なマッチメイクに追いやったのかもしれません。

イメージ産業としてのプロレス

プロレスは、イメージ産業なんですよ。

これは勝敗を操作するという意味ではありませんよ、スターはスターとして、興行というビジネスの中で、正しい使い方をせねばならない、ということです。

これは、あらゆるエンタテイメント産業でも鉄則でしょう。

例えば、WBC日本優勝の日に、芸能人は結婚式をしてはなりません。

全ての関心は、侍ジャパンのお祝いに向かわせないとならないからです。

プロレスも、セミファイナルがメインを食ってしまうことを嫌がるレスラーがいます。メインの自分の試合が目立たなくなるからです。

こうした考えは、間違っていません。

ミル・マスカラスは、今だ、日本ではその神格化されたイメージは、衰えていません。

しかし、あんなマッチメイクで負けてなかったら、ミル・マスカラスはもっと日本マット界で輝きを放っていたと思うのです。

マスカラスという商品を上手にマーケティングできなかった、日本プロレス界。

日本プロレス界にもたらされたはずの莫大な利益を失った、その損失はいかばかりだったでしょう。

今日のプロレス&マーケティングを他業種に応用する

1.エンタテイメント産業においては、スターのオーラを持っていることが最も価値がある。

しかし、現代はコンプライアンスの時代。スター候補生も「社会性」に問題があると、周りが引き立てようとしても消される。

今の時代、親も子育ては、そこを考えなくてはならない。

2.スター性と人柄がマッチングすれば最強

ミル・マスカラスは、一部で「ケチンボ」という悪評があったことも事実、しかし、ファンに対しての扱いは神、表向きの振る舞いは満点だったからこそ、日本で重用された。

他の業界でも、「実るほど頭を垂れる稲穂かな」の人材が最強なのは変わらない。

3.モンキーズを忘れるな

その昔、「第二のビートルズ」と言われた、ザ・モンキーズ。実は音楽の実力どころではなく、誰も楽器を弾けなかった。

でもDay Dream Dreamerは世界的大ヒットで、モンキーズブームを巻き起こした。世界最強の「一発屋」と言っていい。

興行サイドが、実力より人気を、スターパワーを重視したからにほかならない。

今日も最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
じゃあ、また明日お目にかかりましょう。

野呂 一郎
清和大学教授/新潟プロレスアドバイザー

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