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バイデン暴言は”ロック様”vsジ・アンダーテイカーの図式を創り大成功。
この記事を読んであなたが得られるかもしれない利益:「虐殺者」「戦犯」「大統領やめろ」の罵声こそ、アメリカ社会がバイデンに求めた「正義」だ。更に言うと、これはバイデンの失言じゃなくて、失地回復の千載一遇のチャンス、バイデンは中間選挙に勝つ。バイデンは発言撤回してないのは、米世論の後押し。そういう暴論パート1。世界を滅ぼすかもしれない、アメリカの”正義の味方シンドローム”とは何か。
なぜ政治の話をするのか
僕の連載はグローバル・リーダーシップに関することがテーマだから、政治だろうが、経済だろうが、経営だろうが、リーダーのあり方に関してここで論じるのはアリだと思っています。
また、現代は微妙に政治が経済を動かす時代だと思っていて、時にリーダーや企業は、自分の政治的スタンスを明らかにする必要があると思っています。
さらに、政治でも経済でも、大事なことは巨視的な視野で、つまり部分的なことに惑わされないで、本質を見ることだと思います。
いま起こっている政治的な問題に向き合うことは、物事の本質を問う能力を磨く機会になると思うのです。
さて、今回のバイデン大統領の発言ですが、このウクライナ戦争の本質を考えるための様々な材料を提供してくれたと思っているんですよ。ちょっと箇条書きにしてみますね。
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1.マクロン仏大統領こそ、世界のリーダーかもしれない
2.バイデン発言は単なるいつものくせ、だ
3.バイデン発言はあれでいいし、正しい
4.アメリカが時として頑なな姿勢を見せる”戦略的曖昧さ”とは何か
5.ブリンケン国務長官、いいかも
6.同盟国から表立って批判が出てないののはなぜか
7.ポーランドはじめ各国にのしかかる、難民問題
8.EUは実は結束してない
世界のリーダーに躍り出た?マクロン
まず1のエマニュエル・マクロン大統領のリーダーシップの件ですが、今回彼は西側で唯一プーチンと粘り強く交渉しています。
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バイデンはこの間も「やつは虐殺者“a butcher”」とプーチンを罵りました。
その時マクロンは「そんな言葉は戦争を終わらせる外交的努力をだいなしにするだけだ」と嘆いています。(Macron, worried that Mr. Biden’s comment Saturday and calling Mr. Putin “a butcher” could also complicate diplomatic efforts to end the war.)
今回のバイデン発言に関しても、フランスのテレビ局の取材に答えて、次のように言ってるんですね。
「私ならそういう言い方はしない。なぜならばプーチン大統領との会談を続けるからだ。我々はロシアがウクライナにおいて起こした戦争をエスカレートさせずに終わらせたいのだ、それが目的なのだ」。“I wouldn’t use this type of wording because I continue to hold discussions with President Putin,” Mr. Macron said in an interview with France 3 TV. “We want to stop the war that Russia has launched in Ukraine without escalation—that’s the objective.”
マクロンの粘り強いロシアへの仲介を、皆さんはどう思われますか。
口さがない外野は「プーチンがマクロンのいうことなど聞くわけないだろ」「無意味だ」とにべもありません。
しかし、僕は、今回のマクロンの言動について、「これぞリーダーだ」という思いを強くしているんですよ。
「リーダーとは常に話し合いで問題解決を試みようとする、粘り強さのことだ」、こう言いたいのです。
そのためには虐殺者に対しても、節度と敬意を忘れないのです。
バイデンのリーダーシップはマクロンと正反対
2.バイデン発言は単なるいつものくせ、だ、を考えてみましょう。
原稿にないことを言ってしまう癖が、バイデン氏にはあるんです。
中国と台湾の衝突が、ウクライナ戦争でにわかに現実味を帯びてきました。しかし、アメリカは意図的に知らん顔をしています。
昨年の10月でした。バイデンはつい、言ってしまったのです。
「中国が攻撃を仕掛けるなら、アメリカは台湾に行って救う(the U.S. would come to the island’s aid if it was attacked by China.)」
確かにこういうアドリブを、「認知症のせいさ」とか「リーダーじゃない」と一笑に付す向きもあります。
でも僕はこうした”失言”をバイデンさんの”世間の空気を読んで、それに答えようとする力”と見ています。
マクロンさんならば、「話し合いだ」となりますが、バイデンさんは「虐殺者!」「戦犯野郎!」でしょう。話し合いに持ち込むことなんて考えていませんよ。
アメリカ人の価値観を象徴する”プロレス”
でもこれはアメリカ人の愛してやまない善vs悪、西部劇のヒーロー対悪漢の図式を意図的に創っているのです。
中間選挙を間近に控えて、願ってもない”悪役”プーチンを迎え撃つ、ヒーローが生まれたのです。
それはしかし、新しい言葉、表現が必要です。
それが「虐殺者」、「戦犯」、「権力の座を降りろ」なのです。
さあ、これで世紀の大悪党プーチンをを成敗する、正義の味方バイデン大統領の図式が完成です。
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プロレスファンなら、”ロック様”こと、WWE史上最高のベビーフェイス、ザ・ロックと、世紀の悪役・墓掘り人・ジ・アンダーテーカーの一騎打ちを思い起こすでしょう。
今日の報道だと、バイデン様、いやバイデン大統領は、「プーチンを引きずり下ろせ」発言の撤回は拒否しているようですね。
それでいいんです。
マクロンみたいに、頭下げてでも対話、っていう態度なら、バイデンの政治生命は終わりでしょう。
ワシントンの高官たちは、バイデン発言の火消しに躍起とは伝えられていますが、今回のバイデンのポーランド訪問は成功だと考えています。
心配な、アメリカの”正義の味方シンドローム”
でも僕はなにもアメリカを礼賛しているわけじゃないんですよ。
しょうがねえなあ、アメリカ大統領はいつもええかっこして、正義の味方を気取り、大見得きって、悪をやっつけなくちゃならないんです。
日本にあんなひどいことをしたトルーマンも、いまのバイデンも同じじゃないかなあ。仮想敵を作って自分が成敗するという図式。危険です。
これが世界の悲劇にならないといいけれど。
ちょっとこれ長くなるなあ。
今日はこのくらいにしておきましょう。
今日も最後まで読んで頂き、ありがとうございました。
では、また明日お目にかかるのを楽しみにしています。
野呂 一郎
清和大学教授/新潟プロレスアドバイザー