「全員集合!」ドリフ・マーケティングのすすめ。
この記事を読んで、あなたが得られるかもしれない利益:「試行錯誤」こそ新しいマーケティングの潮流。AIに任せるマーケティングでは答えがでない、答えは「考えることにある」。マーケティングを利用したHRD(人的資源開発)のすすめ。
世界優良企業がやってる”実験”とは
世界のトップ企業が、いまやっている新しいデータ・マーケティングを一言でいえば、「試行錯誤」です。
コロナ元年の2020年以来、消費者が、その消費行動がガラッと変わってしまい、従来のデータに基づいたマーケティングは役に立たなくなってしまったことがその背景にあります。
もう少し、有力企業のデータ・マーケティングの現状を見てみましょう。
メルセデス・ベンツ
消費者行動に関する答えを求めるため、同社もカギを握るデータを探しています。
グローバル・マーケティング・コミュニケーションのディレクター、ナタナエル・シハンタさん(Natanael Sijanta)は、ある問いを自らに投げかけます。
そう考えて彼は、市場におけるある製品に対して消費者がどのくらい興味を持っているかを調査して、データを出しました。
「このデータって、真に受けてその分だけ、製品を増産して市場に投げ込めば売れるのか」。
今まではそうしていたのですが、いま彼のマインドセットはそう単純ではありません。
彼は、試行錯誤しているのです。
保険大手のプログレッシブ(Progressive Corp)
プログレッシブ社は、コロナ禍の広告戦略をどうするかに頭を痛めています。
同社も、消費者動向のカギを握るデータを探すことに余念がありません。
プログレッシブ社は、いま、外部の広告代理店アーノルド・ワールドワイド(Arnold Worldwideに依頼し、毎週顧客1000人に対して調査を行い、そのヒントを得ようとしています。
ハーシー社
おととい、チョコの王様ハーシーはAIをマーケティングではなく、製造に使うことを思いついたと書きました。
マーケティングに関して同社は、どうやらマシンに学習させる前に、いろいろな仮説を立てているようなのです。
マシーン・ラーニングを機能させるためには、コマンド(命令)が必要なわけで、何でもかんでも集めたデータを解析して、その相関関係を調べろといっても、人間が納得する答えは出てきません。
ハーシーは、カギを握るデータ特定のために、多くの企業が「調査する市場とデータの拡大」を行っていることに目をつけ、アメリカであればこれまで全米のデータで事たれリとしていたのを、現在は50州全部のデータを数えています。
以前は調査しなかった30のマーケットから、35種類のデータをとっています。
それらデータは、今まで調査の対象としなかった項目です。
あたらしい調査項目とは、たとえば、どんなメディア(新聞、テレビ、ラジオ、インターネット、ポッドキャスト、ツイッター)を使っているか、どんな広告を見ているか、今の喜怒哀楽の状況、外出の頻度、最新ショッピング行動、道徳観念などです。
ハーシー社マーケティング・トップの箴言
ハーシー社のチーフ・マーケティング・オフィサー(chief marketing officer )のジョン・ベルク氏(John Burke)はこう話します。
変化した文脈とは、コロナで消費者行動がまったく変わってしまったこと、を示しています。
それは、企業も読めないし、消費者自身も自覚がありません。
だからこそ、コロナ禍のマーケティングは、「このデータがコロナ禍の現在の消費者行動のカギを握るかもしれない」などと仮説を立てて、とりあえずひんぱんに、広範にデータをとるのです。
いま、こうした企業がやっているのは、昔のマーケティングと言っていいでしょう。
でも、仮説をたてるためにマーケターが、一般社員が議論をすることが大事だと思うのです。
AIから主導権を取り返せ
いつの間にやら、AIのほうが人間より優秀だということになっています。
そうじゃありません。
人間はAIという機械に、情報という餌と、問題解決の方向性を与えているだけです。
餌と方向性がなければ、AIはでくのぼうです。
人間のほうが偉いんです。
人間にあって、AIにないもの、それは「仮説力」ではないでしょうか。
仮説力とは、何でもかんでも仮説にしていい、というものではありません。
仮説を立てるまでには、様々な知的葛藤と、明快な論理が、そして集団の合意が必要です。
マーケターのみならず、社を上げて従業員全員で仮説を立てませんか。
これは一つのHRD(Human Resource Development人的資源開発=一人ひとりの社員の能力開発を通じて、組織の能力を向上させること)にほかなりません。
マーケティングの仮説をたてることを、一つの知的訓練としてファシリテーターをつけて、グループで小集団活動をやるんです。
全社を上げたマーケティング活動でもあり、ひとりひとりの能力開発でもあり、これが組織開発(HDR)につながるのです。
マーケティング部門以外に、意外なマーケティングの逸材がいるものです。
そういう天才の力を発揮させましょう。
この試みを「全員参加のマーケティング」と名付けましょう。
「全員集合」だから、「ドリフ・マーケティング」でもいいかな(笑)
今日も最後まで読んで頂き、ありがとうございました。
では、また明日お目にかかるのを楽しみにしています。
野呂 一郎