日本の中高は大学受験への矯正施設なのか
この記事を読んで高校生のキミが得られるかもしれない利益:大学受験でキミが得られるもの、失うもの。高校生のキミの毎日は、社会人になったときのよい練習になっている事実。
高校生のための、”にほんのしくみ”解説
読者のHさんから、こんな感想をもらった。
非常に面白いので、高校生のキミ達にオレ流解説をさせてくれ。
>中高が大学受験への矯正施設
これは実は小学校、いや幼稚園までさかのぼる。
なぜならば日本の教育の目的は東大に受かることだから、そのためにはいい高校に入らなければならない。そのためにはいい中学、そのためにはいい小学校、いい小学校に入るためには、いい幼稚園に入らなくてはならない。
これは道理なんだ。
東大に入るためには、頭が良ければいいんでしょう、じゃあ、幼稚園から学校なんて行かずに、家でお父さん、お母さんに東大に受かる指導をしてもらえばいいんじゃないの。
でも、そうは行かないんだ。
頭が良いだけじゃ受からないんだよ、東大の試験は。
2次試験は記述式だから、受験テクニックじゃ歯が立たないという人がいるけれど、違うんだよ。
記述式だってなんだって「受験のお作法」っていうものがあって、それは少なくとも中学受験からそれに慣れてないと、受からないんだって。
東大受かるためには、この流れに乗らないとダメなんだよ。
そのためには、最低”いい小学校”に入らないとダメなんだ。
流れに乗るためには、受験というシステムに疑問を抱いちゃダメなんだ。
ただの一度でも。
「くっだらねえ、こんなことやらせやがって、意味あんのかよ」、なんて思ったら、もう東大は無理だ。
なぜならば、受験も他のものと同じく、積み重ねだからだ。
高校3年まで、与えられる受験教育に異議を唱えず、従順に従って、いろいろな暗記を積み重ねて高校の受験教育課程を終えないとダメだ。
さあ、キミは東大に受かる流れに乗った、最短距離で。
もちろん学校だけじゃ、この流れに乗れない。
代ゼミや駿台予備校の現役合格コースや、夏期講座、集中講座などにも出ないとならない。
”お受験”の合理性
でも、なぜ小学校から受験校がいいのか。
例えば、私立小→開成中学・高校かっていうと、開成って東大受験のコツを教えてくれるからなんだよ。
気の利いた学生は、開成のカリキュラムだけで東大受かるんだ。(これは元開成生徒に取材済み)
もちろん邪道さ、そんな教育は。
高校は、受験の予備校かぁ?
でも、昨日言ったように、教育も学校もビジネス。
そのビジネスモデルは運動部で甲子園などの全国大会常連になるか、東大合格者を増やすかの二択しかない。
だから、開成方式が受験校で名を挙げたい企業いや学校の、唯一正しいやり方になるんだって。
早慶を東大に置き換えて、早慶に受かる高校っていうブランドを目指す学校も、どんどんでてきている。
東大でも早慶でも、小学校から積み上げてきた受験技術がないと、歯が立たない。どんなに頭が良くてもダメだよ。
東大受験に弱いのは、こんな特徴を持ったキミだ。
なぜ、こういう資質を持ったキミが東大に受からないかというと、基本的に東大でも早慶でも、受かるためには、既存のこの受験というシステムに異議を唱える、その精神がそもそも間違っているからなのだ。
いいかい、受験は正解は一つしかないんだよ。
よけいなことは考えないでいいの。
上記5つの精神だと、正解はたくさん出てきちゃうから、ダメなんだよ。
わかった?
でも早稲田も慶応も、東大も受かった。
でもそのときには、キミの頭脳は、受験勉強に完全に毒されて、ものごとに正解がないと、気が狂ってしまう・・いやこれは差別用語か、じゃあ、おかしくなってしまう。
一つの正解しかない問題しか、解けない頭になってしまう。
その能力をキミは18歳で獲得したんだ、おめでとう。
見事一流校に合格した。
大学を卒業するのは、むずかしくないから大丈夫だ。
いい大学出たから、いい企業が大学名だけでキミを採用してくれる。
受験頭脳が社会で直面している現実
会社に入って、いろいろな問題に遭遇する。
さあ、キミの得意の局面だ。必ず一つだけ正しい正解があるはず。でも自分では考えない。まず参考書で類似問題とその答えを探す。参考書はもちろんグーグルだ。
そして、すぐにスマホを手に、グーグル先生に聞く。
キミはグーグル先生の答えから、無難なものをピックアップしてそれを答えとする。
キミが22年間勉強して来たものを、発揮できたぞ。
僕の答えが会社を繁栄に導く。
ヤッター、栄光の人生だ。
しかし、現実は・・
上司にキミの解決策を出す。
上司はダメ出しした。
「なんだかありきたりだな、市場は昨日と違うんだぜ、こんなインターネットででてくるようなアイディアじゃあ、他社に勝てないよ。」
キミはつぶやいた。
「そんなはずはないだろう。俺は苦しい受験勉強を10年もやった挙げ句、一流大学出た、この俺がダメだってのか」。
彼は、ダメの理由はわからなかった。一生わからないだろう。エリートのプライドがあるから。
ダメの理由がまさか、積み重ねて、磨いてきた受験技術だとは、気づかない。
受験資本主義は本当に”効率的”か
僕はキミ達高校生、大学生がほぼ一人の例外もなく、スマホを手放さないライフスタイルを送っていることを心配している。
北朝鮮の軍隊が、足を高く上げて一糸乱れぬ行進をするようすを思い出してしまう。
誰か一人くらい、スマホ依存してなくてもいいはずなのに、誰もいない。
なぜか。
キミたちは「俺は、わたしはやらない」「俺は、わたしはそれ違うと思う」っていうのがないんだ。
受験矯正施設に入った時点で、その自由は自ら放棄している。
放棄することが、施設入所の条件だからだ。
受験矯正施設では批判せず、議論せず、疑問を持たず、質問しないことが、
隠れたルールだ。そんなことをしたら、受験勉強の効率が悪くなるだけだからだ。
ひょっとしたら受験も資本主義なのかもしれない。
いや、そうだ。
その本質は「効率」だからだ。
最高の効率で手に入れた学歴とやら。
東大を頂点として、それは見事にピラミッドを描いている。
しかし、それがキミを世界との競争で役たたずにしているとしたら・・
矯正施設で大変な思いをして頑張ってきたことが、
キミの生来の才能や感性をダメにし、
日本全体を弱くしていたとしたら・・
いやいや、冗談だよ。
ほら、早く宿題やりなよ、次の試験で
90点とらないと受験クラスに入れないんでしょ。
今日も最後まで読んでくれてありがとう。
じゃあ、またあした会おう。
野呂一郎
清和大学教授/新潟プロレスアドバイザー