迷走するツイッター。イーロン・マスク見果てぬ夢の行方
この記事を読んであなたが得られるかもしれない利益:イーロン・マスクが買収後、進展がないツイッターの今後の見通し。なぜ巨大SNSの経営はそれほど難しいのか。マスク氏の男のロマンはどうなる。トップ画はNHKニュース。
ネットワークビジネスの難しさ
僕は思うんですけれども、マスクさんは、はなからツイッターを儲ける商売にしようとなんて考えてない、と思うんですよ。
どう考えても、いったん傾いたネットワークビジネスをもとに戻そうなんて無理だからです。
テスラやスペースXだって、赤字や借金があってここまで復活させてきたんだから、イーロン・マスクなら大丈夫、投資家の一部はそう彼に期待して、10億ドルくらい貸し出しているところもあります。
しかし、それは無駄な出費に終わるでしょう。
その理由を一言で言うなら、経営の決断が他の業界よりケタ違いに難しい、ということです。
なにせ、1日のアクティブユーザーは2億4千万と巨大で、それもマスクさんがこれまで相手にしてきた電気自動車のテスラや、宇宙事業のスペースXのお客さん層とは全然違います。
テスラやスペースXの顧客層は、見通しがいいですもの。
きちんと分析できます。ガソリンより電気で動く自動車が好きなグループであり、宇宙事業に興味のあるベンチャー企業ら、です。
しかし、ツイッターのユーザーは巨大かつ多様すぎて、分析できません。
せいぜいZ世代が多いかもしれないというくらいで、しかし、今は年代すらも市場セグメントには意味がありません。
だから、マスクさんがある経営決定をするとしても、そのインパクトが読めないのです。
マスク氏が放り出した3つの意思決定
経営とは意思決定のことです。
では、ツイッターの経営における意思決定とはなんでしょうか。
1.新製品、新サービスを作る
これも顧客がわからないならば、作りようがないといえます。
リスクが少ないかもしれないオプションは、他で流行っているコンテンツやアプリを導入することです。
例えばTikTok 。しかし、これだとイーロン・マスクの新規性に期待している投資家を落胆させ、株価を落とす可能性があります。
サブスク?これも何度も報道されていますが、いまだ発表がないのは、顧客層が読めないので、これを導入してどのくらいの収益増があり、どれだけ既存ユーザーが離れるか、はっきりしないからです。
いや、現実的なシュミレーションはあるにはあります。
例えばサブスクをやって1%のユーザーに買ってもらえるとして、年間2億3千万ドルの増収になりますが、ツイッターの2021年の収益50億ドルのたった5%にもなりません。
後で述べるように、ツイッターの戦略は収益の9割を占める、広告戦略にかかっているのです。
ネットワークビジネスは日が浅すぎて、成功失敗事例の蓄積がなく、しいて言えば、新しい試みをやって成功したところはほとんどないのです。
2.モデレーションポリシーを変える
モデレーション(moderation)つまり、コンテンツの内容の審査基準です。
これは、買収前のトランプ大統領のアカウントのバン(ban禁止)問題で大きな社会問題になりました。
要するに社会的に不適切なコンテンツは、審査を厳しくすべきという考え方のことです。
マスク氏は言論の自由を掲げており、トランプのアカウントを復活させましたが、まだ具体的なモデレーションポリシーの変更はアナウンスされていません。
やはり、やったときのプラスとマイナスが見えないので、躊躇しているのです。
3.広告戦略をたてる
ツイッターの収益の9割が広告です。
いま、広告がストップしている状況が続いていますが、これはネット広告を出す企業側の様子見とされます。
イーロン・マスクの次の手が見えない限り、これまでのように広告出稿を続けていいのか、企業が迷っているというわけです。
マスクさんは、申し上げているようにツイッターの新戦略をつまびらかにしていません、というよりもこの件で世間とコミュニケーションすらとっていない状況です。
お手上げなのか、時間稼ぎなのか、判然としませんが、すでにイーロン・マスクの企業家としての信頼に傷がついていることは自明です。
いずれにしても、ツイッター戦略の中核は、この広告戦略にかかっているのですから、マスクさんも何かアクションをとらないと始まらない、ですよね。
そして広告戦略で最も大事なのは、企業イメージです。
ツイッターに広告を出したら、企業のイメージダウン、そんな事があってはならないのです。
でも、今回の買収に伴う、マスク氏の無慈悲なレイオフ(一時解雇)で、ツイッターのイメージは落ちました。
ここらへん、僕はマスクさんの、ネットワークビジネスの理解ってものが足りないなあ、って痛感するんですよね。
今後ツイッターはどうなる?
冒頭でも申し上げたとおり、マスクさんはツイッターで儲けようと考えていないのではないか、それは私の稚拙な分析はともかく、どう考えても立て直しは無理だからです。
そもそも、借金が年間10億ドルもあるんですよ。その利息だけだって、大変でしょ。マスクさんが首切りしたのもしょうがないって言えば、そのとおりです。
すっかり忘れていましたけれど、マスクさんはツイッター買収時に、TEDというスピーチ・ショーですでにこう宣言していたのです。
見事な理想主義の絵に描いたようなロマン、だと思います。
でも、経営学の教科書はこれを叱ります。
「経営とはゴーイングコンサーンである」というのが、すべての教科書の一行目に書いてあるからです。
ゴーイングコンサーン(going concern)とは、永続する企業体と訳されます、
つまり、「あらゆる企業は潰してはいけない、潰れてはいけない」のです。
これが経営学の鉄則です。
今日も最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
じゃあ、また明日お目にかかりましょう。
野呂 一郎
清和大学教授/新潟プロレスアドバイザー
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