世界マーケティング7大トレンド④クッキーレス時代のお客様とのつきあい方
この記事を読んであなたが得られるかもしれない利益:クッキーとは何か。ファーストパーティ・データ、サードパーティ・データとは何か。クッキーレス時代のあるべきマーケティングの全貌。
今日は4ですよ。
クッキーって何?
クッキーとは、ユーザーの情報データのことです。
サイトを訪れた日時や回数、メールアドレス、電話番号、などが集約されたデータのことです。
企業はあなたのこうした情報が入ったクッキーを使って、リターゲティング広告を行います。
リターゲティング広告とは、あなたがプロレスファンでグーグルのサイトにあるプロレスファンの広場を訪問すると、あなたに向かって、プロレスグッズを扱う企業がメールや広告であなたを追いかけて来る、あのやり方のことです。
また、企業はあなたのクッキーを買って、あなたのプロレスファン度やどの団体が好きかをじっくり分析できます。
棚橋ファンで新日本プロレスのファンだったら、最近ファミマから発売されたプロレスコーヒー缶の棚橋セット12本2000円を売り込もうとします。
しかし、このクッキーがなくなろうとしています。
理由はもちろん消費者がプライバシーにうるさくなった、いや自分の情報を勝手に使われることに嫌悪感を募らせてきたからです。
結果、グーグルは2023年の後半にはクッキーを廃止する、ということになったわけです。
こうした流れをクッキーレス、というのは、もう皆様御存知のとおりです。
先進ブランドはもうすでにファーストパーティデータに移行
デロイト・サーベイによれば、2021年度からのこの1年で10%以上収益増の企業の61%が、すでにこのクッキーレス時代に対応しています。
それはサードパーティ・データ依存をやめて、ファーストパーティ・データのみでマーケティングし始めた、ということです。
サードパーティ・データとは外部のサイトから発行されたクッキーのことです。
一方、ファーストパーティ・データは自社サイトを訪れたお客様が残した情報です。
プライバシーが世界的な消費者の関心事になっている今、企業はファーストパーティ・データを中心にマーケティング戦略をイチから建て直さなくてはならないことは、すでに現実になっています。
クッキーレス時代のお客様への正しいアプローチ
以下、デロイト・サーベイを読んで、わたしがまとめた提言です
1. 個人でなくて仲間を狙え
サードパーティデータは、データという観点からはそれなりの量が集まったわけです。
個人のニーズを占う材料は十分だと、多くの企業がそれに頼りました。
しかし、クッキーレス時代は個人のニーズを特定することは、カンタンにはできなくなったと言えます。
じゃあどうするか。
サーベイは
「個人からコーホート(cohort仲間、同じテイストを持った集団)にシフトしろ」、とアドバイスします。
個人は特定できませんが、同じ趣味を持つ仲間は特定できます。釣りファン、プロレスファン、サッカーファンなどなどです。
今後は、各ジャンルのコーホート分析を深く進めた企業が、マーケティングの勝利をにぎるでしょう。
2. カスタマーとの絆を強化せよ
ワン・トゥ・ワン・マーケティングが一世風靡した30年前、このマーケティングの合言葉は「新規顧客獲得よりも、既存顧客をメンテナンスしたほうがよっぽど安上がりだ」、でした。
これは真実です。
この基本に立ち返り、これまでの忠誠心豊かなお客様を大事にしましょう。
クッキーレス時代のお客様を大事にするという意味合いは、「お客様をもっと知り、本当は何を欲しがっているかの情報をつかまえる」ということです。
今まで企業は、この情報を真剣に求めることはありませんでした。企業とお客様の新しい関係性が求められる時代です。
3. ファンベースを創れ
前述のカスタマーとの絆と関連しますが、これからのマーケターに求められることは、ファンベースの確立です。
個人の詳細の情報が得れなくても、コーホート情報は得られます。そのためには、ファンを増やしましょう。
ネットでのファンクラブでもいいし、コロナが明けたら対面のファンクラブを大々的にやりましょうよ。コロナ明けがいいタイミングです。
マーケターが月例ミーティングの司会をやり、そこで新製品を試してもらいましょう。お土産もレアなものを用意し、ファンを喜ばせましょう。
こういうこと、今までしっかりやってる企業って聞いたことないよなあ。
上は横浜FCが地元商店街と組んで、FCブランドでお菓子を販売したときの、取り組みです。こういう”巻き込み”もファンベースを創るアイディアです。
4. マルチな情報源を総動員せよ
個人情報が取れなくなったことを、嘆くことはありません。
そもそも、クッキーとやらはアバウトな情報であり、行間なんてどこにも書いてないんですから。
その証拠に、あなたの企業はウェブマーケティングで儲かりましたか?
プロレスファンにプロレスグッズを売りつける、そんな脳なしAIの欠点丸出しの、直線的なファイトしかできないのが、実はサードパーティリスクというものでした。
本当は何を求めているの?
それを知るためには、地道な努力がかえって近道です。
デロイト・サーベイは次の3つを協調して働かせろ、と言っています。
エコシステとは生態系という意味ですが、ここでは収益最適化を目指すマーケティング・システムという意味です。
③は自社のマーケター、取引先、提携企業、従業員、顧客等のステークスホルダー(利害関係者)が、すべて自社のマーケティングスタッフになってもらい、協調し、協働努力でマーケティングをせよ、との意味です。
5.カスタマー・ジャーニーを一緒に探訪せよ
デロイト・サーベイにはしばしば、このカスタマー・ジャーニーという言葉が出てきます。お客様の旅、という意味ですが、要するに気まぐれな消費者の傾向を正しくキャッチせよ、ということです。
これまでは、その答えはウェブマーケティングとやらで、ゲットできたのです。
ウェブマーケティングの正体は、結局サードパーティに丸投げして、データをもらうことだったのです。それも自動的にリターゲティング広告を出してもらえていました。
デロイト・サーベイは、「リセットボタンを押せ」と提案します。
要するに、外部のデータに頼らずに、自分のところだけで集めたデータで、カスタマー・ジャーニーを追っかけ、探索し、それがなにか見つけろ、というわけです。
しかし、こうしたファーストパーティ・データに頼るだけではダメです。
世界マーケティング7大トレンドの残り6つと連動させることです。例えば、トレンドその1のパーパスが脆弱では、意味がないのです。
サードパーティデータが全盛だった、2021年までは、マーケティング=データ、でした。
しかし、2022年以降のクッキーレス時代においては、マーケティングは企業の総合力が試されるリングとなったのです。
今日も最後まで読んで頂き、ありがとうございました。
じゃあ、また明日お目にかかるのを楽しみにしています。
野呂 一郎
清和大学教授/新潟プロレスアドバイザー