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見えてきた生成AIの限界。
この記事を読んで高校生のキミが得られるかもしれない利益:最新生成AIに関するレポート。結局創造的ワークなんて生み出せないけれど、周辺のヘルプはできるよ、という生成AI途中経過。高校生のキミに再び「生成AIに頼るな、危険」論。
創造的な文章は書けない
生成AIをまるで、打ち出の小槌みたいに言う人がいるけれど、そんなわけないよね。
ニューヨーク・タイムズWeekly2023年8月20日号は、A.I. makes inroads in publishing world(AIが出版業界に侵入)というタイトルで、AIがすでに出版界にいろんな影響を与えてる現状について書いてるよ。
記事の結論は、出版界のクリエイターたちは、それぞれAIをどうやって自分の仕事に活かそうか、試行錯誤を繰り広げているということだ。
でもね、記事をよく読んでみると、「すべての出版に携わるものは、AIを使うべきだ」とか言っているけれど、実際にクリエイティブな作品を創るのに成功している事例はない。
それどころか、一部でこういう結論が出ている。
「AIの書く文章は、退屈なだけ」(the resulting prose is boring)
これからは素手が流行る
つまらない、退屈っていうことは、でも実は褒め言葉なんだ。
AIは学習すればするほど、優等生の解に近づくから、だ。
しかし、同時にそれは当然つまらないはずなんだ。
東大なんかの入試でよく出る、「小林秀雄の散文に対するあなたの評価を示せ」的な問題の答えって、視点を色々持ってその観点からいろいろ論じて、それを小賢しくまとめるといい点くれるじゃない、それと同じだよ。
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AIの答えは、だから、ある問題を網羅的に論じ、それをまとめて、いい塩梅に着地させるっていう方向になる。
それはとりも直さず、安パイで無難で優等生的な答えってことだよ。
言い換えれば、個性がないってことさ。
個性がないっていうのは、創造的という概念の真反対だろ。クリエイティブの一番の敵、さ。
だから、AIをやればやるほど、創造的な文章、映像、写真、その他あらゆる作品はつくれなくなるってことさ。
カンのいいキミは、すでにそれがわかっていたよね。
AIは進歩が止まっている
記事では、多くのクリエイターは執筆そして編集のアシスタントとして使っている、と言っている。
実際の例は書いてないんだけれど、想像するに、例えば今キミが犯罪心理に関するテーマで小説を書いている、としよう。
読んでおくべき本を教えて、とか、今後犯罪と人間心理はどういう方向に行くか、などをAIに聞くのはいいかもしれない。
しかしね、これもうまく行かない可能性が出てきた。
それは、世界中のクリエイターが、自分の作品をAIが取り込むことを断固拒否する動きが鮮明になってきたからなんだ。
世界的なクリエイターの組織であるオーサーズ・ギルド(The Authors Guild)は、登録会員の数万人が自らの作品をAIにトレーニングさせることを拒否する宣言をした。
トレーニングとは、自分の作品をAIに提供して、読み込ませ、勉強させることだ。
そうさ、AIに著作権が立ちはだかっているんだ。
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大手出版社も次々に、AIを利用した作品を出版しないと宣言し始めた。
その他まだそこまで決めてない出版社も、早晩、人間とAIのしごとの分担を明確にせざるを得ないだろう。
つまり、世間が言うほど、生成AI革命などというセンセーショナルな変化は、出版界に、創造の世界に起こらないということだ。
最新情報にますます価値が出る
生成AIの教訓っていうのはさ、「常に技術は進歩する」っていう真理を、人類は改めて突きつけられた、ってことだよね。
確かにAIもテクノロジーだから、それは真理だ。
もう一つは、最新情報にますます価値が出る、ってことだ。
なぜか。
それはさ、生成AIが最新情報を取り込むのと、ジャーナリズムが最新情報を世に出すのには、タイムラグがある、ってことだ。
要するに最新情報は、常にマスコミが握っているということだ。
AIのほうはそれを取り込むには、著作権をクリアしなくてはならないし、それをクリアできたとしても、物理的にシステムにとりこむには時間がかかるってことだ。
しかしさ、常に物事を判断するためには、最新情報がなければ、正確にそれができない。
だから、常に世の中に意見や分析を出すんなら、ニューヨーク・タイムズやウォールストリート・ジャーナル紙を読んで、世界の最新情報をつかんでいるキミのほうが、生成AIよりも信頼できる情報提供者ってことになる。
これからは、ますます、最新情報が、そしてその担い手が大事になる。
ジャーナリストが、天下を取る時代になるだろう。
野呂 一郎
清和大学 教授