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新プロレスの経済学:グーグル敗訴で思い出した、NWA対アメリカ政府の戦い。

この記事を読んであなたが得られるかもしれない利益:昨日報道された、グーグルが米地方裁判所から独禁法違反の判決を受けた件。コアなプロレスファンならば、かつての世界最大のプロレス組織NWAと米政府の対決を思い出すだろう。米国のビジネス文化が意外にもプロレスと関係があったというお話だ。トップ画はハラダ画伯の手になるかつてのNWA王者・「美獣」ハリー・レイス。

グーグルが米政府に敗訴

米国の首都ワシントンのコロンビア特別区連邦地方裁判所は8月5日、グーグルがインターネット検索・広告市場で競合他社を競争から排除し、反トラスト法(日本の独禁法にあたる)に違反したとする判決を出しました。

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問題となったのは、グーグルがアップルやマイクロソフトなどに毎年数十億ドルを支払う見返りとして、自社の検索エンジンをスマートフォンやウェブブラウザで初期設定する契約を結んでいたことです。

そういえば、皆さんのスマホの検索エンジンって、いきなりグーグルになってたりしますよね。

でもそんなことをしたら、他の検索エンジンを運営する企業が、この分野に入ってこれないですよね。

アメリカって、競争社会だから、競争のない状態つまり独占状態を嫌うんですよ。

昨日僕は、noteの記事で「アメリカはIT大手に甘い。なぜならば税収を稼いでくれるからだ」等といいましたが、確かにそういう面はあります。

しかし、同時にアメリカという国は、何よりも「競争」を大事にする国でもあるのです。

アメリカ司法省がグーグルがインターネット市場で90%のシェアを占めている事実をあげ、「反競争的かつ排他的な慣行」を実施していると主張しググルを提訴したのは2020年ですから、地方裁判所での判決が出るまでに4年もかかってるんですよね。

グーグルは上訴するって言ってますから、最高裁まで行くわけで、これからまた数年かかるんでしょうね。

でもね、最高裁でまた米政府が勝つとはわかりませんよ、なぜならば、グーグルは大金持ちだからです。

世界でも指折りのやり手の弁護士からなる弁護団を結成し、あの手この手で政府をやり込めるに決まってんだから。

そう、グーグルは資本主義のど真ん中なんですって。

NWAという巨悪

昭和のプロレスファンのあなたならば、プロレス=NWAという連想はまさにど真ん中、です。

1950年代、NWA(全米レスリング連盟 National Wrestling Alliance)は30を超えるテリトリー(NWAの息のかかったレスリング市場)を持っており、それぞれにブッキング・エージェント(bookin agent レスラーとの出演交渉契約を担当)が存在し、ライバル団体つまりNWAのメンバー以外のものを徹底的に排除していました。

そしてレスラーたちには、「NWA以外のプロモーション(プロレス団体)の試合には絶対に出ない」との誓約書を書かせていたのです。

1970年代、アントニオ猪木率いる新日本プロレスは、NWAの敵と目され、猪木は当時プロレスの最強シンボルだった「NWA世界王座」に挑戦することはかないませんでした。

猪木、NWA加盟拒否さる、の記事。https://x.gd/NajPz

しかし、米政府はNWAのやりかたを、「シャーマン反トラスト法Sherman Antitrust Act」違反として提訴したのです。

新日がNWAを訴えるという最高のアングル

新日本プロレスがNWAのメンバーになれなかったのは、もちろん当時NWAの有力メンバーだったジャイアント馬場の横やり、いや政治力でしたが、新日本プロレスがNWAを訴えたら、面白かったでしょうね。

NWAを訴えるには米国の訴訟事情に通じ、プロレスがわかり、英語が堪能かつグローバルなビジネス戦略に通じた手練れのブレーンが必要ですが、もしやったら猪木vsアリに匹敵するインパクトを世界に与えたんじゃないかと思うんです。

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これは最高の「プロレスのビジネスへの応用」だと思うんですよ。

NWAのやっていたことは、独禁法違反であり、それを日本の団体が訴えたら、当時の差別が当たり前だった社会でも、かなりインパクトのあるビジネスニュースになったはずです。

いや時宜を得ている分、世界的な話題になったと思いますよ。

これからのプロレス団体は、WWEに理不尽なことされたら、喧嘩は買う、って姿勢じゃないとダメですよ。

世界最大のプロレス団体に、プロレスでなくて正義の剣を振り下ろす。

記者会見を開いて、「WWEよ、逃げるのか!」とやる。

日米のマスコミもいきり立って、両軍をおある。

東スポが「新日側の弁護士として、小室圭さん内定か!」などとガゼを飛ばす。

ついには番外戦として、「日米対抗戦」が勃発。

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最高のアングルじゃないですか!

これからはプロレス団体も、そのくらいの知的バトルを仕掛けないと。

それこそ、今の時代にふさわしいビッグなエンタテイメントですよ。

いまこそアメリカンプロレスと、日本の力道山プロレスが交わるべき時、だと思うんだがなあ。

野呂 一郎
清和大学教授



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