なぜ、高校生のキミのほうが、ガイジン投資家より経済がわかるというのか。
この記事を読んであなたが得られるかもしれない利益:経済の本質がわかるのは、やはりその国に住んでいる消費者だけ、という真実を解説する。世界最高峰のエコノミストである、ニューヨーク・タイムズも日本の経済はわからないという事実。経済は"気”で動く。
キミはすでに経済学者だ
高校生のキミは、これから大学生、社会人になって経済学とか習うと思うんだけれど、アカデミックな理論とかをあがめちゃダメだ。
キミはもう経済学者なのさ。
なぜならば、キミは感じている。これから日本経済が発展するかどうかをわかっているんだ。
えっ?
別にわかってない、って?
違うんだよ、わかっていないかもしれないけれど、何か漠然と感じているはずだ。それが「わかっている」ってことなんだよ。
日本経済を経済学の用語らしきもので解説すれば、こうだ。
GDP(Gross National Products国民総生産)が20年間上がってない、給料も同じ、インフレ率も異常に低い。
要するに、ずっとデフレだったわけだ。
モノの価格をあげようにも、それは結果的にインフレ(物価上昇)を招くわけだけれど、企業はこの30年間それができなかった。
なぜならば、少しでも商品の価格を上げれば、日本人は買わないからだ。
そりゃそうさ、教育費はかかる、寿命が長くなり貯金しなきゃならない、でも給料は増えない。
日用品の価格を上げることなんてできない、日本人にそんな余裕はないからだ。
なぜこんな記事が出るのか
ニューヨーク・タイムズWeekly2023年6月25日の記事だよ、僕がびっくりしちゃっているのは。
タイトルはJapan is again drawing attention from investors (日本が再び投資家の注目を集めている)だ。
この記事の内容はこうなんだ。
これって、自民党が宣伝し始めたことを受け売りしていて、それを信じて、「日本株買ったら儲かるよ」って言ってるだけなんだよ。
確かに教科書的に考えれば、日本が成長市場ならば、「買い」となるだろ。
でも、冒頭で述べたように、高校生のキミはわかっている、その背後の事情を。
しかしさ、天下のニューヨーク・タイムズが、政府発表とか、日本のメディア報道の表面だけを見て、「日本復活→経済上昇→日本株買え」っていうのはどういうことだろうかね。
僕が思うに、これはアメリカに5年弱住んでいてわかったんだけれど、アメリカ人って実に積極的に考える人達なんだよ。
だから、表向きでもなんでも「積極的にコレコレやります、改革します」って明言するだけで、評価するんだ。
イケイケドンドンのメンタリティなんだよ、世界は。
世界とはなんて言ってるけれど、アメリカ人だけじゃないって意味だけれど、これは、僕なりに勉強したり、欧米メディアに40年間接してのことなんだけれどね、世界って言っちゃっていいと思う。
キミはニューヨーク・タイムズより経済に明るい
さっき、キミは理論的に日本の経済は弱いって、論証してくれたよね。
でも、冒頭に言ったけれど、キミはそれよりも頼りになる経済マインド、経済感覚を持っている。
それは皮膚感覚で、日本経済をわかっているということだ。
「日本はこれからも伸びない」。
それがキミの実感だよね。
あえてキミの実感を言葉にするとこうなるだろう。
ちょっと的はずれかもしれないけれど、キミがいま感じていること、それこそが経済の本質なんだよ。
それを2013年度ノーベル経済学賞受賞のシラー博士は、「アニマルスピリット(予想がつかない人間の"気”)と表現した。
でも、その"気”は海外投資家には見えない。
ガイジン投資家たちは、今の日本が珍しくポジティブなことを言っていることを、真に受けているだけだ。
彼ら彼女らが、しかし、いま日本株に興味を向けていることは確かだよ。
だから、今回、高校生のキミが「経済とは気である」のほかに、もうひとつ得られた教訓はこういうことだ。
さて、キミがすでにいっぱしのエコノミストであることがわかってくれただろうか。
これからますます、そのキミの経済マインド、経済の本質を感じ取るアンテナを磨いてくれたまえ。
明日は全国的に雨だとか。
全国の高校生の皆さん、大雨には十分気をつけて下さい。
野呂 一郎
清和大学教授