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テスラはトヨタに勝てるのか。
この記事を読んであなたが得られるかもしれない利益:EV車、その本当の成功の理由。テスラの画面をはたしてシニアが操作できるのか、という疑問。ユーザーエクスピリエンス(利用者にとっての経験価値)とは何か。
デジタルという迷宮
2020年にコロナが大流行した頃、日本の保健所は大変なバッシングをされました。
患者のデータのやりとりを役所等とやり取りする時に、FAXを使っていたからです。
なんでこの時代にメールも使えないのかとの非難であり、このことは日本のデジタル化の遅れの象徴ととらえられました。
しかし、家電店に行くとFAXのコーナーはちゃんとあり、むしろ盛況です。
メールは配信されたかわからないし、大量のメールに埋もれて見失われていることも少なくありません。
現物が届くFAXは、案外確実なコミュニケーション手段とも言えるのです。
さて、しかし、デジタル化を求める時代の波は、しかし、待ったなしです。
その象徴が電気自動車、EV(Electric Vehicle)です。
僕も知らなかったのですが、いまやテスラの運転って、スマホの操作そのものなんですね。
iPadのような画面に、設定の条件を打ち込んでいくだけです。
ドライビングモード、エアコンの調節、音楽、車の色まで。
Medel3を見るとボタンとかつまみとかなどまったくなく、全ての操作がこのデジタルパネルに集約されています。
このしくみは、他のEV製造メーカーもほぼ一緒です。
EVシフトが進むBMWは自社の開発したパネルを、”デジタル・ソウル(デジタルの魂)と呼んでいます。
使いやすさという経験価値
BusinessWeek2023年2月6日号P64は、The secret to EV success is in the software(EV成功の秘訣はソフトウェアにあり)とし、消費者の価値観の変化がEVを選ばせたのだと言います。
従来のクルマの売りは、トヨタなども謳った「ファン・トゥ・ドライブfun to drive 運転する楽しさ」で、その立役者はエンジンとトランスミッションでした。
しかし、BusinessWeek誌は、その価値観は「ユーザーの経験価値」にとって代わられた、というのです。
それは、スマホを使い慣れたデジタル世代が使いやすいと感じる、あのパネルにあり、その本体はソフトウェアだというのです。
ソフトウェア内製化を企むEVメーカー
従来のエンジン自動車は、様々な部品の調達が必要で、トヨタなどは豊田市を下請けが集結する企業城下町にしてしまったほどです。
しかし、EV車は部品がはるかに少なくてすみます。
そこにもってきて、いま自動車メーカー各社は、例のデジタルパネルも自前で作るべく大量にエンジニアを雇って、ソフトウェア開発に力を入れています。
コラボするならば、携帯電話メーカーのブラックベリーとかサムソンではなくて、アップルとかグーグルです。
デジタルのスピードメーターとか、パフォーマンスのデータのソフトウェアを開発する能力があるからです。
EVシフトは勝ち組への道なのか
とまあ、エンジンの時代は終わってソフトの時代だよ、などとお話してきたのですが、本当にエンジン自動車がソフトウェア自動車にとってかわられちゃうのでしょうか。
最近トヨタの新社長、佐藤 恒治(サトウ コウジ)氏が記者会見し、「トヨタは全方位戦略で行く」と宣言しました。
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つまり、水素自動車も作るし、電気とエンジンで動くハイブリッド車も、従来のエンジンカーも作るよ、という決意表明です。
トヨタだから出来るというのありますが、日本市場に関してはやはり、主力はエンジン車です。
エンジン車のよさは、使い慣れたFAXに似ているかも、です。
いや、FAXと較べてはいけませんね、EVはソフトウェアが同じならば運転の快適さも同じと言われています。ファン・トゥ・ドライブなんて望みようもないですよ。
そもそもシニアはiPadで動かすクルマなんて無理ですよ。いや、シニアじゃなくても、クルマはエンジン車じゃなくてはという層は存在します。
戦争になったら電気自動車は使えないし、ステーションの数も足りてない、バッテリーができなくなったらどうする、温暖化には寄与するかもしれませんがまだまだ課題は多いのです。
うがった見方をする人たちは、「トヨタつぶしだ」なんて声もありますが・・。
佐藤社長は、EV戦略については詳しい言及は避けています。
今日も最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
じゃあ、また明日お目にかかりましょう。
野呂 一郎
清和大学教授/新潟プロレスアドバイザー