「神の見えざる手」が消えた経済。
この記事を読んであなたが得られるかもしれない利益:現代の実相とは、共産主義の亡霊が資本主義に復讐している、のかもしれないという仮説。グローバリゼーションの誤りを正す。中国台頭のメカニズム。トップ画はhttps://qr1.jp/jbz53o
資本主義は勝利してなかった
1991年12月、ソビエト連邦の崩壊で、資本主義陣営は高らかに、共産主義に対して勝利を宣言した。
世界は概ねそれに同意した。
しかし、それは早すぎた結論だった。
共産主義という亡霊が、さまよっている。
よみがえって、資本主義を呪い殺そうとしているのだ。
中国が世界第二位の経済大国になり、ロシアが世界を武力で屈服させようとしているではないか。
神の見えざる手は嘘だった
経済学の売りって言えば、アダム・スミスの「神の見えざる手」だよね。
つまり、何でもかんでも市場に任せておけば、自然にうまくいく、という考えだ。
しかし、ひんぱんに起きる異常気象はどうだ。
きょうだって九州の皆さんのところは、過去最大級の大雨だ。この数年間で、どれだけ自然災害で日本がダメージを負ってきたか。
海外でも、同じだ。トルコの地震は記憶に新しい。
ダメージ回復にどんだけカネがかかるのか。
日本もそうだが、被災者は故郷を離れざるを得ない、下手すると外国に移住、いや難民になることを余儀なくされる。
パワープラント(発電所)も操業停止、そんなことが当たり前になっている。
放っておいて、自然のメカニズムで立ち上がったり、災害を補填するような産業が立ち上がって、経済的なメイクアップ(補填)ができる、なんてことはない。
神の見えざる手が、地球を守っては、いない。
資本主義自体も嘘だった
資本主義の三種の神器は、オープンマーケット(開かれた市場)、自由貿易、そして最大効率、つまり経済=効率だ。
でも、これがことごとく裏目に出ている。
そう、コロナと戦争でね。
つまり、グローバリゼーションっていう、資本主義陣営の理論的、実践的支柱が崩れちゃったんだ。
グローバリゼーションで、貿易が盛んになれば、足りないものを補い合える。
自国にない珍しいものを輸入すれば、お互いの国に市場が生まれる。
裕福な国は安い賃金で働く人がおらず、100円ショップの製造工場など、作りたくでも作れない。
じゃあ、貧しい国で作ればいい。工場を作れば、労働者が集まる。
工場作ってしまえば、自然に効率が発生し、経済も発展する。
しかし、こうして推進してきたグローバリゼーションが、世界各国の首を絞めている。
コロナで、そして戦争で、医療関係者はマスク、手袋なしで患者の世話をせざるを得なかった。
車の工場は、半導体がなくても、車を作らざるを得なくなった。
製材所は木材がない、スニーカーの小売店は商品のナイキがない。
資本主義は型無しになったのだ。
中国の台頭
グローバリゼーションで最も恩恵を受けたのは中国だ。
郊外の農民は、そのまま工場労働者になった。
世界の工場として、ありとあらゆる物を作り、米国を始め世界に供給した。
中国は豊かになり、日本を抜いて世界第二位の経済大国になった。
経済力を身につけたが故に、中国は世界経済の主役に躍り出た。
結果、米中関係はこれまでで最も抜き差しならぬ物になり、台湾有事がささやかれる中、世界を脅かしている。
中国は貿易マネーで、政治力をも手に入れた。
グローバルサウスと言われる新興国をはじめとする、経済援助を求めるアルゼンチン、モンゴル、エジプトなどに金融支援を行っているのだ。
世界がグローバリゼーションを信奉したのは、貿易拡大を通じ、お互いを理解し、友好を深めることができ、ひいてはそれが平和につながると信じたためだ。
それがどうだ、米中関係は史上最悪、ロシアは戦争を仕掛けている。
どこに相互理解や友好があるのだ。
資本主義は人権問題を輸出している
グローバリゼーションは安い労働を、途上国に作り出してしまっている。
企業は途上国で向上は作るけれど、そこで働く人達の人権、健康、福祉などは考えない。
例えばナイキが、バングラデシュの工場で小児労働をさせていた事実が露見したことは、大きな問題になった。
それは資本主義の闇と言っても、いい。
制御不能なインフレ
制御不能、と言えば、新日本プロレス・ロス・インゴベルナブレス・デ・ハポンの内藤哲也だが、ことはプロレス界に収まらない。
世界中の人々を不幸に陥れているのが、今回のインフレだ。
ここ30年間はインフレが起こっても、各国政府がコントロールできたんだ。
でも今回はそうは行かないんだ。
コントロールできないのは、コロナの後遺症と戦争で原材料、食料、エネルギーの供給が途絶えているからだ。
きょう、アメリカは経済成長の発表をしたけれど、インフレの影響はこれからだ。
高校生の皆さんは、これから経済学を学ぶことになると思うんだけれど、この現実を頭に入れて、自分だけの経済学を建ててもらいたい。
偉そうに言ったけれど、これはニューヨーク・タイムズWeekly2023年6月25日号、As globalization falters, world shudders(グローバリゼーションが揺らぐと、世界もグラグラする)からの受け売りだよ。
でも、ニューヨーク・タイムズの言っていることは、正しいと思う。
今日も暑かったね、明日はもっと暑いらしい。
水分補給を忘れずにね。
野呂 一郎
清和大学教授