岸田スピーチが早めた石破内閣誕生。
この記事を読んであなたが得られるかもしれない利益:米議会での岸田スピーチは失敗。控えめに言って意味はなかった。でも、誰もそれを正しく検証できてないことのほうが、問題だ。高校生、大学生よ、グローバルリーダーの資格は英語力と戦略マインドだって。
トップの英語スピーチの難しさ
先日書いた岸田さんの米議会でのスピーチの件、政治通のあなたは「そうじゃない!」と思ったに違いないんですよ。
借りにも日本国首相が米議会でスピーチするわけで、その内容は国家同士が同意した公式文書になるから、アドリブなんかもってのほか、というわけです。
まったくそのとおり。
ですが、僕の言っているのはスピーチ用語でいうところの、デリバリー(delivery話し方)なんです。
内容は変えずに、エンタテイメントという演出を入れろ、という注文ですね。
国家間スピーチの正しいプロセス
さて、スピーチの原稿を前もって関係者に目通しさせる、チェックさせるというプロセスが必要な場合があります。
ここで、国家を代表してスピーチをするものは、リーダーシップを発揮しなければなりません。
今回の岸田さんのスピーチは、戦略的に考えれば、次のような段取りになります。
米議会スピーチは千載一遇のチャンスだった
このスピーチは、岸田さんが自身の置かれている逆境をはねかえし、ピンチをチャンスに転じる、一大好機のはずでした。
岸田さんはスピーチにかこつけて、自身のリーダーシップを見せつけて、国内の政局を有利に運びたい、と考えていたはずです。
また、日本のリーダーとして、世界に日本の立場を知らせ、コミットメント(行動の約束)をアナウンスし、世界に岸田ありを見せつけたい、そう思っていたはずです。
一方、アメリカは岸田氏にスピーチをさせることに何のメリットもありません。
岸田さんのキャラは先刻承知で、つまらないのは事前に100%わかるし、退屈している議員のなぐさみにもなりません。
ただ、アメリカにとって都合の悪いことをいってもらっては困るので、それだけチェックしたい。
だから、アメリカ側のスピーチライターが原稿を書き、そのまましゃべれと命令する、という体になるのは当然です。
でも、アメリカ側に押し切られて、お仕着せのスピーチをしてしまったことで、岸田さんは「世界にキシダあり」を印象付けることに失敗したのです。
岸田さんのスピーチがあまりに凡庸で、つまらなかったからでした。
つまらないスピーチは、世界に「キシダはつまらない人間」の烙印を押してしまったのです。
最大の悲劇
でも、最大の悲劇なは、御本人は得意の英語で素晴らしいスピーチをした、と得意げになっていることです。
一部のマスコミも「よいスピーチだった」と持ち上げており、日本という国の国際性のなさを際立たせました。
安倍さんのスピーチもそうでしたが、ネイティブに近いレベルの英語力があり、前回述べた5つの成功するスピーチの原則を踏んでなければ、トップのスピーチはやらないほうがいいのです。
誰も、日本では岸田さんのあの米議会スピーチの正しい総括ができていません。
これでは、いつまでたっても日本が世界でリーダーシップを発揮するなんてことはできないと思いますね。
新しい日本のトップに求められる資質とは
ポイントはトップの戦略マインドと英語力です。
戦略マインドとは、対外的な英語スピーチの位置づけと、そこに何を盛り込むかを読むチカラのことです。
もちろん、岸田さんのスピーチには米軍基地問題などのデリケートなことには触れないでおきます。
しかし、平和に貢献するなどと、抽象的な物言いはダメです。
自分ができることを、具体的に言葉にすべきです。
自分の利益と国家の利益をどうすり合わせるか、が現実的な判断になってきます。
英語力に関しては、自分でスピーチの原稿を書けなければダメ、ということです。
自分でスピーチの英文が書けなきゃ、それを情感たっぷりに読めないでしょ。
先日申し上げたように、こういうところでリーダーには英文ライティング能力が、求められるんですよ。
繰り返しますが、僕が考える日本再生は、トップがグローバルになること、それがダメなら若いキミたちが英語と戦略を身につけてトップになってくれることです。
少子高齢化が止まらない日本経済を救うのは、日本がそろそろグローバルに目覚めるしかないじゃないですか。
野呂一郎
清和大学教授