プロレス&マーケティング 場外編④ プロレス組織論 選手多過ぎ?
この記事を読んであなたが得られるかもしれない利益:米食品大手ケロッグのリストラに見る、組織論の正統。ひるがえってプロレス団体の組織論は「色気」で勝負ってどうして?もうひとつ組織論とマーケティングとの関わりを探る。トップ画はhttps://www.google.com/url?sa=i&url=https%3A%2F%2Ftwitter.com%2Fnoah_ghc%2Fstatus%2F1315305047073255424&psig=AOvVaw3VFK_r7v6N6hj3Meatb_x8&ust=1679393454820000&source=images&cd=vfe&ved=2ahUKEwjZ0-Kjour9AhVF_mEKHfw1AOUQr4kDegUIARDgAQ
ケロッグが身軽に
けさ、ケロッグのコーンフレークを食べながら、整理しなくてはならない古い新聞を見ていたら、共時性なのか(笑)、ケロッグがリストラするとの記事が目に入ってきました。
2019年6月19日の電子版になる以前の紙のThe Wall Street Journalで、記事のタイトルはKellogg cuts jobs as it sells brands(ケロッグが傘下のブランドを売却するに当たり、人員削減)とあります。
ケロッグは傘下のキーブラー・クッキー(Keebler Cookies )と、フェイマス・アモス(Famous Amos)というクッキー・ブランドと、フルーツスナック、アイスクリームを扱う子会社を、イタリアのフェレロ(Ferrero)という会社に13億ドル(1300億円)で売却したのです。
これはコロナ前のニュースでもあり、今の世界経済と結びつけるわけには行かないのですが、ケロッグはこの売却に伴い北米拠点に働く1500人をリストラしました。
なおケロッグの世界で働く従業員の総数は3万4千人で、売却するブランドで働く総数は1900人です。
組織は常に変わらなければならない
ケロッグ社によると、この売却の理由は3つです。
僕はあまりの正論に声を失いましたよ。
これって、組織論ってこうだ、っていう全てでもありますね。
シンプルな組織とは、企業が意思決定して行動するまでのプロセスがわかりやすくて、単純な組織のことですね。
担当者→上司→最終意思決定者みたいな流れ、でしょうか。
それよりもシンプルなのは、担当者が意思決定者であることです。
プロレスで言えば、スカウトがいいと思ったら、採用していいって、感じでしょうか。
より敏捷な組織とは、環境の変化や時代の要請にすぐに対応する組織です。
環境と共存する組織が求められているならば、すぐに組織を上げてISOという業界標準の資格をとってしまう、リサイクルのシステムをすぐに導入するなどです。
プロレスで言えば、事故が起こった時にすぐに原因究明チームを立ち上げ、改善ができるか、です。
適正な人員かという問題は、組織の大きさと従業員数が釣り合いがとれているか、ということです。
ケロッグは3万4千人の従業員を抱えていますが、今回多すぎるという判断をしたわけです。
機械化、IT化、特にAIやロボットを使えば、生産現場はもとより、企業運営のシステムそのものが効率化し、従業員の数は減らせるでしょう。
IT巨大プラットフォーマーの大規模リストラが頻発していますが、まさにITの進化によって、自らがより適正な人員の組織にスリムダウンしていっているわけです。
プロレス団体で言うと・・・、ちょっと今日はこれだけにフォーカスして考えてみましょう。
プロレス団体は選手が多すぎやしないか
さて、プロレス団体は、ケロッグのようによりシンプルで、敏捷で、適正人員な企業を目指すべきでしょうか。
答えはもちろんYesですね。
それは本コラムの目的である、マーケティングをより機能させるためにも欠かせません。
効率的な組織がなければ、モノを売ることもうまくいかないのは道理であります。
さて、シンプルで敏捷なプロレス団体どうのこうのは、また別の機会に考えることにして、今日は「団体の選手数が多すぎないか」というテーマでちょっとだけ考えてみましょう。
最近どの団体でも6人タッグマッチが、多すぎるんじゃないか、と感じます。
別に6人タッグが悪いというわけじゃないんですが、8人タッグとか、10人タッグになると、興ざめです。
明らかに員数合わせ、レスラーが多いから試合機会を与えてやれ、という観客の都合よりも、団体の都合を優先していることが目に見えるからです。
とにかく、今はどの団体もレスラーが増えており、試合に出れる実力があっても毎回出場できないという現実があります。
レスラーは、試合に出てなんぼ、です。
試合に出ることによってプロレスラーのスキルが磨かれていくので、試合に出る、でないはレスラーにとって死活問題と言えるのです。
僕の処方箋は、3軍制です。1軍、2軍、3軍を作って、Jリーグのように入れ替え戦を行うイメージです。
1軍は20名で、ランキングを付け、ランキング21位以下は二軍になりますが、次のシーズンは20位と21位が戦って、勝った方が1軍に行きます。
なにバカなことをいってんだ、プロレスファンのあなたの声が聞こえてきます。
そうですよね、プロレスは勝敗を競っているわけじゃなく、観客に対してのアピールを競っている競技ですからね、たしかにこれは無意味なこと、です。
一人エース制復活を
この問題を考える時に大事なのは、適正人数と言うよりは、選手の使い方、だと思うんですよ。
もちろん、人数と使い方は密接な関係があるのですけれども。
また昭和ファンの時代錯誤と言われればそれまでなんですけれど、「一人エース制」を復活して欲しいと思うんですよ。
例えば60年前に存在した、アントニオ猪木をエースに担いだ、東京プロレス。これは映像すら残っていませんが、今で言う若手がエースをになっていたという体です。
想像できて、ワクワクしませんか、もう猪木が強い弱いじゃないんですよ、猪木がエースとして出て、メインで外人と戦う、っていうシチュエーションだけでファンは興奮しただろうと思うんですよ。
こんだけレスラーが多いと、そういう偶然や冒険は起こり得ないんです。
プロレスファンが今でも一番エキサイトするのは、新団体の旗揚げです。
それは、今までメインを取ったことのないレスラーが、エースになる瞬間です。
例えばUWFインターの高田延彦。
前田日明の影に隠れて表に出なかった、高田延彦のカリスマ性が、見事に発揮されました。高田は「平成の格闘王」の称賛をほしいままにしたのです。ヒクソンに負けるまでの短期間でしたが。
W★INGは一時期、徳田光輝がエースだったことがあります。
だれも知らないかもしれませんが、僕はその短い期間、彼は輝いて、魅力があったと思っています。
色気という問題
プロレスって「色気」だと思うんですよ。
レスラーの色気が見たい。
それは、強い弱いだけではないんですよね。
メインに持ってきたり、一時期エースを任したりすることで、すっごい色気を出すレスラーがいるんですよね。
そういうレスラーは条件があります。
自分一人でも団体を起こそうとする、企業家精神があることです。
新日本プロレスの猪木、UWFの前田、FMWの大仁田、パイオニア戦志の剛竜馬などの風情に、僕は非常に「色気」を感じるんです。
そのオーラは、以前その選手からは発されていない新鮮なモノゆえ、ファンは引き込まれた、そんな側面もあるのではないでしょうか。
今日の結論は、プロレスの選手適正数に関する組織論は、論理的に考えても答えは出ないよ、ということです。
合理的な組織論を推進する、というまっとうな答えはかろうじてあると思います。
なぜならばその正しい答えは、窮屈で退屈な組織論に反抗するレスラーの 反逆魂を呼び覚ますからです、それこそが「色気」の正体なのです。
今日のプロレス&マーケティングを他業種に応用する
1.リードギターを目立たないあいつに任せたら、リハのときとは別人のような演奏をするんじゃないか。
遠慮がちなA君だが、今度の販売会の司会を任せたら、本来もってるエンタテイナー性を発揮してリーダーになってくれるかもしれない。
2.そのチーム5人は多すぎやしないか、3人でやらせろ。
3.女性にふられた、失業した、事業に失敗した。さあ、あなたの隠れた魅力が出てくるぞ。
4.人事は能力じゃなく、色気で決めろ。
結局マーケティングとは、観客を色気で圧倒すればいい。だから人事は能力じゃなく、色気の有無で決めろ。
お後がよろしいようで。
ではまた明日お目にかかりましょう。
明日は何やるかな、最近シリーズが多くて(笑)
野呂 一郎
清和大学教授/新潟プロレスアドバイザー