暗号資産は催眠術(米トップファイナンシャル・アドバイザーの言葉)
なぜいま女性ファイナンシャル・アドバイザー?
ウォールストリートジャーナル2021年6月24日は別冊で2021年Barron’sが選ぶトップ100の女性ファイナンシャル・アドバイザー特集を組んでいます。Barron‘sとは世界で最も権威ある投資専門週刊誌で、The Wall Street Journalを発行しているダウ・ジョーンズ社の出版物です。毎年恒例の特集ですね。
僕は投資には詳しくないですが、なぜ女性専門家トップ100を出すのか、彼女たちの今の経済に対する思いや投資に関する考え方、コロナの変化をどう感じているかなど、この記事には大変興味のある情報がてんこ盛りでした。
その一部を読者の皆様と共有したいと思います。ファイナンシャル・アドバイザー(financial advisor)という言葉ですが、投資アドバイザーとすると株や債権の売買という意味が強くなります。また日本のファイナンシャル・プランナーよりはもう少し積極的に投資アドバイスをする感じがあり、英語の表記をそのままに、ファイナンシャル・アドバイザーとします。
この特集号のとびら絵はすごく楽しく、サマーホリディを楽しむ人々の中に、やりてのビジネスウーマンが裸足で歩きながらタブレットでデイトレにいそしんでいる、そんな絵です。この楽しげな絵が今のコロナから完全回復しつつある、アメリカを象徴しています。
女性ファイナンシャル・アドバイザー共通の考え
・この1年コロナという未曾有の危機だったが、ファイナンシャル・アドバイザーは過去の経験からクライアントにアドバイスする姿勢に変わりはない
・20年前(2000年)ドットコム・クレイジーの時代はまだみんな忘れてない(2000年、IT株が急騰した件)。あの時、もっとアグレッシブに投資しろと勧めた専門家がいたが、バランスのとれた、慎重で忍耐強いアプローチをして正解だった。ファイナンシャル・アドバイザーは不況、回復期に関係なくこの姿勢を持つべき
・ファイナンシャル・アドバイザーはマーケットの混乱に巻き込まれず、常に長期の視点が大事
・ファイナンシャル・アドバイザーは常にクライアントの資産を守り、責任を持って資産を構築すること。投機的に走ってはならず、市場と駆け引きをしてはならない
・ここ1年次の3つには注意。暗号資産(仮想通貨)のジェットコースター的な上げ下げ、在宅勤務企業の株の高騰、インフレ。これにアドバイスするためには専門家も訓練が必要
・この女性トップ100ファイナンシャル・アドバイザーのランキングは、クライアントの資産管理状況、株式等取引成績、アドバイザーが会社にもたらした利益とクライアントに対するサービスの品質
・投資アドバイスのパフォーマンスは最も重要なファイナンシャル・アドバイザーの評価というわけではない。1000万ドル(11億円)を超える資産を持っている顧客も多く、むしろ資産を保全することが評価になる。ファイナンシャル・アドバイザーの仕事は積極的に投資を勧めることから、コンサルテーション(相談、助言)とファイナンシャル・プランニングにシフトしている
・女性ファイナンシャル・アドバイザーが口を揃えて語る、女性であることの有利は、エンパシー能力(共感能力)、傾聴力、プランニングに集中する力。これは特に現代の新しい環境に有効
・金利が下がったので債権購入は株取引より少しリスキーになったが、ボラティリティ(変動が激しい)時代、バッファ(緩衝材)として持っているべき
・ヨーロッパはパンデミックの観点からはまだ混乱のさなかにあるが、多くの企業はオンラインに切り替え、利益を生み出す体制にある。EU先進国市場は特に有望
・エネルギー市場は、いい
・株取引を脅かす要素はインフレの動向だが、インフレがピックアップしても需要と供給はバランスを取る方向に行くだろう
・もう一つの予想されるシナリオは、インフレ行くところまで行く→労働者が賃上げ要求→経営者賃上げ了解→賃上げ分を企業は商品価格に反映→一つのサイクルになる
・株式取引は見た目ほどカネもかからない。株価収益率は上がっている
・インフレは引退後の資産を減らす大敵と教える
・テクノロジー株は有望、しかし、それを企業の生産性向上に結びつける絵が必要
・パンデミック、気候変動は織り込むべきだが、今後のマーケット動向は楽天的としていい、追い風が吹く
・クライアントがどこに住んでいるかが重要。例えばニューヨーク在住だったら、この1年間アパートに閉じこもっていたはず
・資産を無事に、残った家族に引き継がせることも重要になっている。遺言、健康保険、生命保険を正しく管理しているかも重要なチェック項目
アドバイザーは"常識"を重んじよ
女性トップファイナンシャル・アドバイザーたちは、投資に関係のない態度こそ大事だと口を揃えます。自分たちのファイナンシャル・アドバイザーとしての役割は友人、セラピスト、そしてクライアントから最も信頼されるアドバイザーの一人であること、だそうです。
コロナの影響か、投資に関係ない人生の根本的な問いを投げかけられることも増えてきているといいます。幸せは、歓びは何処にあるの、といったことです。あるアドバイザーは「クライアントが何処に行きたいか、その道を示す手助けをするのが仕事、と言います。
印象的だったのは、詳細はわかりませんが、投資家は暗号資産に催眠術をかけられている、という記述です。
もう一つはあるファイナンシャル・アドバイザーのこんな言葉でした。「私は常識を大事にする。例えば良い企業を適正価格で買う、投資は長期的視野で行う、クライアントがうまくいかないときは手をとってあげる」。
まさにこの言葉は我が意を得たり、ですね。
全体として、今の世界の株式市場の勢い、明るさを感じました。それは日本にいるとあまり感じないことかも知れませんね。やはり、長い暗いトンネルを抜けた人々の希望、期待という感情が爆発しているんだと思います。
アメリカに住んでいてよくわかったのは、アメリカ人は消費を本当に楽しむ人たちだということ。抑圧の期間が長ければ長いほど、その発散は爆発的になるのでしょう。
ファイナンシャル・アドバイザーに限らず、パンデミック後はアドバイザーがブレイクすると見ています。
女性がこの記事で特集されたのは、意味があると思います。記事でもあった通り、女性の共感力、人の話に耳を傾ける力、計画性こそが時代が求める女性力、です。
賛成です。
もう派手な舞台でビジュアル全開でプレゼンする、そんなプッシュ的なのは流行らないんじゃないかと思うんです。
自分が主張するんじゃなく、相手を受け止めて、解決策を共に探り、そして事務的に計画だてて実行するヘルプをしてあげるサービス、が大事だと思うんです。これを女性的と言って何が悪い(笑)。
今日も最後までお読み頂き、ありがとうございました。
また明日お目にかかりましょう。
野呂 一郎