プロレス&マーケティング第51戦 昭和の女子プロレスが米国進出の衝撃!
この記事を読んで、あなたが得られるかも知れない利益:日本の女子プロレスがハワイ進出!それも「昭和の女子プロレス」というコンセプトで勝負に出た。世界で日本ブームが沸騰しつつある今、日本の女子プロレスが日本文化の新しい象徴として物議を醸している。
ニューヨーク・タイムズが日本の女子プロレスに熱視線!
これはニュースですよ!
The Wall Street Journalはたまに、ビジネスとしてのプロレスを取り上げることはありますが、まさか世界最強のメディア・ニューヨーク・タイムズがプロレスを、こともあろうに日本の女子プロレスがハワイに進出したことを報じています。
この新団体の名前はなんと、Sukeban スケバン(笑)プロデューサーは昭和女子プロレスのアイコン、ブル中野です。
このニュースは東スポ、週プロ(週刊プロレス)といったプロレスメディアも報じておらず、情報はこのニューヨーク・タイムズの記事によるしかないのですが、YouTubeに今回の興行の仕掛け人ブル中野による解説を見つけましたので、まずはこれをどうぞ。
私めが、あえて古舘伊知郎ふうに実況を試みてみたいと思います。
時代をワープするマーケティング
新団体Sukebanのコンセプトは、コミッショナーのブル中野いわく、「日本の80年代の女子プロレスの熱狂をアメリカで再現する」です。
これはいわば、「時代をワープするマーケティング」です。
80年代と言えば、長与千種、ライオネス飛鳥の「スーパーヒーロー」クラッシュギャルズ、ダンプ松本率いる極悪同盟、そしてアジャコング、ブル中野の超ヘビー級ヒールが一世風靡した、熱狂の時代でした。
その熱狂は時代の渇望と絶望を埋めるため、綺羅星の如く全女(全日本女子プロレス)にひしめいた人材が、当然のごとく覇を競った、偶然の産物に過ぎません。(必然かも)
仮に蘇ったとしても、松本某の裏側もネットがすべて暴く身も蓋もない時代に、すっかり醒めた現代人に刺さるのでしょうか。
そのロマンを現代のマーケティングが塩梅したのが、このSukebanというプロレスなのです。
その塩梅、つまり「かくし味」の正体こそ、アートとエンタテイメントなのです。
アートとはファッションのことです。
レスラーに日本アニメのファッションをまとわせる、マンガのキャラを全コピさせてレスラーに演じさせる、表情も声も。
エンタテイメントとはずばり、WWEのマネです。
アメリカの演出家のバックアップで、戦いをショーアップするのがSukebanなのです。
英語でいうとSukebanとは、セオリティカル(theatrical劇場的)な、パフォーマンスです。
あえて卑下して言うならば擬似格闘であり、よく言えば格闘をアートにまで飛翔させる肉体芸術といえるでしょう。
いずれにせよ、プロレスをアートビジネス、エンタテイメントビジネスとしてとらえるならば、この方向はマーケティング的には、王道であり、ニッチ(すき間)といえるでしょう。
でもこういうことを言うと、日本の昭和プロレスファンからブーイングを受けるでしょうね。
アメリカのショープロレスと、日本のストロングプロレスを一緒にするな、と。
そうなんですよ、そもそも日本のプロレスとアメリカのそれは別物だと思っています。
しかし、僕の理解ではブル中野は、日本の昭和女子プロレスの「ストロング」を残しつつ、WWE的な方向にかじを切ったのです。
それはまさに新しい方向であり、勝負論のプロレスとは真逆の方向性ですが、それもプロレスなのです。
そして、日本的なサブカルの匂いとテイストを、それにプラスすることによって、今のアメリカ人に新しいプロレス=WWE+日本文化を提示しているのです。
結果として、アメリカ中が、Sukebanによって日本の80年代にプレイバックする、これをブル中野が狙っているのです。
Sukebanは第一弾のニューヨーク興行が成功し、マイアミでも成功しました。
次回は、この新しいプロレスの波と、僕が予測するこれから来る「世界的な第二次日本ブーム」ついて、もう少し考えてみましょう。
野呂 一郎
清和大学教授
新潟プロレスアドバイザー
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