対中政策でアメリカに提案。
この記事を読んであなたが得られるかもしれない利益:中国政府の官僚たちが抱えるジレンマ。習近平氏の政策運営と人心掌握について。対中の冷戦とも言える状況を克服するため、アメリカに捧げる経営学的な提案。
これで中国に勝てる
結論を言うと、アメリカは文化政策を、つまりメイドインアメリカの文化を、もっともっと先鋭化したらいいんじゃないでしょうか。
別の表現をすると、アメリカ的価値観を中国に、特に若者にアピールすることです。それもインターネットを通して。
誰も言いませんけれども、その意味でTikTok をあんまりいじめないほうがいいのでは。
仮にTikTok がアメリカ人の個人情報をせっせと中国政府に提供していたとしても、TikTok でアメリカ的価値観を中国人にシェアさせることはできますよね。
えっ、お前の言ってることがわからない、って。
すみません、ちょっと先走っちゃいました。
僕の今日の話は、きのうの続きで、日本の官僚の話をしたじゃないですか、きょうは中国の官僚のお話なんです。
ポイントは、いま、習近平氏がやっている”しめつけ”が、中国の官僚たちに過大なプレッシャーを与えていることです、僕には暴発寸前に見えるんですがね。
あくまで中国は、社会の暴発を抑えにかかる、それは確かだと思います。
例えば今回ゼロコロナ政策で、中国全土でデモが起きたでしょ、意外なことに習近平さんは、これを弾圧しませんでした。
でも官僚たちはもう限界です。
ここ3年、官僚たちはコロナで無理くりボランティアをさせられています。
コロナ患者がうじゃうじゃいる中、ワクチンセンターでの列の整理とか、病院でのヘルプとか。
習近平政治が抱える問題点
2012年習近平氏が権力の座について以来、中国の官僚たちはワークロードが増えました。
それは中国共産党の歴史、また汚職をなくすための、お勉強です。
セッションや講義も頻繁に開かれ、受講しなくてはなりません。
もう一つは、人民の綱紀粛正のための取り締まり業務、です。
例えばある官僚はテレビやインターネット動画を1週間で100時間視聴させられて、中国政府の価値観に違反している箇所を報告させられます。
皆さんは、ご存知でしょうか。
Lie flat(寝そべり族)という中国にまん延するライフスタイルを。
要するに無気力で無関心なテイのことです。
LGBTQの映像もダメだし、タトゥーを扱ったものもダメ、いわゆるカウンターカルチャー(counter-culture 反体制文化)と言われるものは全部取締りの対象になるのです。
普通の感覚でOKなものでも、当局は許してくれません。
100時間視聴して違反がないかチェックするという、そのストレスフルな仕事をさせられる官僚は、二倍速で見ても到底追いつかなく、官僚をやめようと思っているそうです。
こうした締め付けが強くなっているのが、現政権の特徴です。
官僚はバラ色の人生ではない
かつて中国において官僚は、"鉄のお茶碗(iron rice bowl)”つまり食いっぱぐれのない職業と呼ばれてきました。
もちろんそこには特権的な(presigious)な社会的地位が伴うあこがれの仕事、というニュアンスもあります。
今年1月、中国全土で初級から上級までの官僚になるための試験が行われました。3万7千の枠に260万人が殺到したのです。
公務員受験は日本よりもはるかに倍率が高く、予備校に通ったり、何千時間勉強したり、何百万円お金を費やしたなどは当たり前です。
しかし、中国経済が競争力を強め、民間が強くなると中国の優秀な若者は、テンセントとかアリババなどの、中国が誇る巨大IT企業に流れました。
官僚の仕事は、若者があこがれる唯一のエリートコースではなくなったのです。
しかし、今の中国は不動産価格の下落で、そしてゼロコロナ政策に見られるような、極端な経済封鎖によって、壊滅的な打撃を受けています。
巨大IT企業も人を切り、民間の仕事が激減しています。
だから、若者はノーチョイスで、公務員試験に向かうしかないのです。
いま、16歳から24歳までの中国の若者のうち、5人に1人が無職です。
中国、相当やばいんです。だから、寝そべり族なんてのがでてくるのも当たり前です。
日本よりずっと厄介な中国の公務員試験
それでも頑張る者たちは、公務員1択でその試験に挑みます。
試験は数学、データ分析、自然科学、経済学の領域から130問の択一問題を答え、200字から1000字で社会問題に関する論文を書かせられ、面接、身上調査その他のチェックが入ります。
狭き門を突破しても、厳しすぎる上下関係、退屈極まりない定形事務仕事地獄が待っています。
それに加えて、コロナでの緊急出動、プロパガンダ部門からの人民の綱紀粛正のためのセンサーシップ(監視)の仕事が加わるのです。
それに加えて、自分たちも共産主義に傾倒するレクチャーを雨あられと受けなくてはなりません。
そのうち、いや近いうちに・・・・
だけど、そこは暴発させないように・・・
だから、アメリカとしては、中国の内部崩壊がいいわけですよ。
それには、北風よりか太陽、です。
厳しい締め付けよりも、中国の若者たちがより、自由な民主主義的な文化に触れることが、中国の自然な改革につながるんじゃないか。
冒頭に申し上げたとおりです。
僕の私見だけじゃなくて、最後、専門家の意見も載せておきましょうね。
オックスフォード大学の社会人類学の先生で中国社会を専門にしている、シャン・バイアオ教授(Xian Biao)はこう言ってます。
今日も最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
じゃあ、また明日お目にかかりましょう。
野呂 一郎
清和大学教授/新潟プロレスアドバイザー