プロレス&マーケティング第65戦 女子プロレス新法則「混ぜるな!危険」。
この記事を読んでプロレスファンのあなたが得られるかもしれない利益:女子プロレス偽りの繁栄。女子プロレスのマーケティング戦略を、選手たちのモチベーションという観点から考える。
女子プロレスの危機
それはロッシー小川が新団体「マリーゴールド」を発進したことで証明されてるだろ。
それはスターダムだけだろ?って?
東京女子なんか、両国でやってるじゃないかっていうんだな?
いやいや、それはあくまでプロレスファンの視点にしか過ぎない。
女子プロレスは社会的な現象になっているの?
答えはNo!だ。
岩谷麻優は女子プロのアイコンって言ってるけれど、女子プロレス自体がブレイクしてない。
社会現象どころか、選手の顔さえ知られていない。
中野たむやジュリアって誰?
残念ながら、それが女子プロレスのリアルじゃないかと思う。
ゼンジョvsウナギ・サヤカ
昭和の全女は社会現象だった。
フジテレビの全国放送というこれ以上ないバックアップを得て、ビューティ・ペア、クラシュギャルズ、北斗晶、神取忍、ダンプ松本、ブル中野など綺羅星のごとくスターが時代を彩った。
ウナギ・サヤカは彼女たちに負けてないけれど、いかんせん孤軍奮闘、組織的、業界的なプッシュの仕掛けがない。
昔はよかったというつもりはない。
Sareeや鈴季すずは、北斗や神取にひけをとらないし、ビジュアルに関しては隔世の感がある。
要するに、女子プロレスにグランドデザインが存在しないんだよ。
つまり、団体同士が足の引っ張り合いをしていて、業界が一致団結して女子プロレスを、社会現象にしようっていうたくらみがないんだって。
僕はグランドデザインの前に、女子レスラーのことを周りのビジネスマンたちが考えてないんじゃないか、それが一番の問題だと見ている。
新団体マリーゴールドの旗揚げは、いろんな文脈を総合してみると、女子プロレスラー全体の叫びじゃないかと思うんだ。
経営学的にいうと、彼女たちのモチベーションが危機的状況なんだ、ってことだ。
モチベーションの危機
僕の勝手な意見に過ぎないが、女子プロレスの現状に満足せず、モチベーションが下がっているのは、ひとり今回スターダムをやめて、新団体マリーゴールドに馳せ参じた、10数名だけじゃない。
プロレスラーは、プロモーターに頭が上がらない。
特に今の時代は、プロレスブームではないから、なおさらだ。
カネの為にこのマッチメイクを飲んでくれ、というケースは特に近年多かったのではないだろうか。
プロレス界は、いまプロレスラーやプロレスの経験がないビジネスマン、企業家が牛耳っている。
彼女たちの気持ちがわからないのだ。
それでモチベーションが下がっているのではないか。
解決策
混ぜるな、これが僕の解決案だ。
男子と女子を混ぜるな、ということだ。
僕の知っている限り、男子と女子を混ぜてる、つまり男子プロレスと女子プロレスが同居している、資本が共通であるところは失敗する。
はっきり言おう。
いや、もうはっきりいわなくても、はっきりしている。
マリーゴールド誕生は、新日本プロレスが女子団体スターダムを買収したからだ。
失敗の象徴は、東京ドームの男子の興行で、中野たむvsカイリ・セインのタイトル戦を前座でやったことだ。
ひどい試合だったのは、彼女たちにモチベーションがなかったからだ。
男子のドーム興行で、お情けで添え物にしてやる的な、男子のプロモーターが女子プロレスを見下した感があふれた。
「女子がかわいそうでみてらんない」。
僕の周りの女子プロレスを愛する者たちは、そう口を揃えたよ。
男子と女子が一緒に練習なんてしてはならないんだ、そもそも。
それってセクハラだって。
でも経済事情で、女子はそういう理不尽を飲まざるを得ない。
ミックストマッチはセクハラか
シングルでタッグで、男と女が戦う、いわゆるミックストマッチ。
これも、「混ぜるな!」と忠告したい。
もちろん、純粋に強さを求める女子は、男だろうがクマだろうが戦いたいのかもしれない。
しかし、男と女がプロレスという形であれ、組み合うのだ。
ジェンダーどうのこうのの前に、セクハラじゃないのか。
粗れを世の中に見せることだって、今の感覚からすると「セクハラ」だよ。
興行主の利益のために、見世物として行うのであれば、女子レスラーは内心いやでも、ミックストマッチのオファーを受けざるを得ない。
そんなこともあるのでは、と危惧をする。
女子は女子で男子と完全に分けるべき、でも現実は男子と女子が混ざってる。
女子プロレス最大の問題点、マーケティング以前に指摘したいのは、「混ぜるな、危険」ということだ。
男子には、女子特有のデリカシーが理解できない。
マーケティングや戦略以前に、男性社会と共存を余儀なくされモチベーションが下がった女子プロレスラーが、いい試合をできるわけがないではないか。
野呂 一郎
清和大学教授
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