「政策ビラが著作権法抵触」のニュースを解説。賛否両論ある理由はなぜ

9日の栃木県鹿沼市長選で落選した候補陣営が配布した政策ビラのイラストが、人気漫画「スラムダンク」を原作とするアニメ映画のポスターの特徴と酷似し、著作権法に抵触する可能性があることが10日分かった。
引用元: https://www.tokyo-np.co.jp/article/332654  東京新聞

このニュースは、「候補者が政治宣伝ポスターにスラムダンクを無断利用したのではないか」という疑惑を示しています。なぜ「疑惑」止まりで断定されていないのかなども含めて、クリエイター目線からも解説します。


賛否両論の理由

否定派の意見

  • 「明確な著作権法違反であり、悪いことだ」という意見。

肯定派の意見

  • 「あくまでパロディに過ぎない」

  • 「疑惑の時点での一斉報道はメディアの策略」


ここでは、メディアの報道姿勢や政治的な観点での解説やコメントはできる限り差し控え、クリエイティブから見てこれはどうなのか。ということを見てみます。

なぜ「疑惑」止まりなのか

著作権法は原則として「親告罪」です。これは、権利者が訴え出なければ捜査も裁判も行われないというものです。権利者が訴えて初めて裁判所の判断が下り、著作権法違反が確定します。

おそらく事件化までいかない?

今回の場合、相手が政治家であること、政治絡みであることから社会的な影響や、得られる利益の少なさを考えても裁判が行われる可能性はあまり大きくなさそうです。

まず訴える側は一切のメリットがありません。著作権法違反が認められたとしても、スラムダンクの権利を持つ関係者は多く、さらに漫画を主とする出版社であることから、二次創作や既存のグレーで認めているファンアートなどを阻止する結果になります。

この件を訴えるのに、他の同様の件を訴えないとなると「政治的色を持つ」と判断されかねません。何か恣意的(意図的)と思われることは確実です。
一方で、同様の例をすべて訴えるとしたら、スラムダンクのファンアートやパロディはものすごく多く、そのすべてを訴えることは現実的に不可能そうです。


今回の件で訴える側のメリットが少ない理由

  1. 社会的影響: 政治家が相手であるため、訴訟による社会的影響に反して得られる利益(良いイメージになるなど)が少ない。

  2. 利益の少なさ: 著作権者にとって、訴訟による金銭的利益はほとんどない。

  3. 他の二次創作への影響: 訴えることで他のファンアートなども抑制される可能性がある。

  4. 現実的な問題: 多くのファンアートやパロディをすべて訴えることは現実的に不可能。


訴えが通った場合の影響

仮に違反が認められたとしても、すでに落選している候補に対して与えられるダメージはほとんどありません。著作権法違反の訴訟は、民事では著作者が得られる予定だった利益を金額に換算し証明する必要がありますが、今回の件で得られた金銭的メリットはほとんどないと考えられます。


パロディの問題

日本ではパロディを保護する法律はありません。アメリカにはフェアユースという概念がありますが、日本にはそのような法律がありません。したがって、パロディも含め二次創作は本来「著作権法違反」となります。多くのパロディは、著作権者が意図的に訴えないために成立しています。


引用の可能性

引用には一定の基準があり、引用しなければならない理由があり、引用部分がメインにならないようにする必要があります。(※分かりやすく書いているだけで他にも要素はあります)

今回の件でも、もしかしたら「引用またはインスパイアしただけ」と判断される可能性もあります。日本ではパロディの規定がないため、単純に引用が認められるかそうでないか、という著作権法違反かどうかが争われます。


クリエイターへの影響

クリエイターにとって、著作権を持つ側にもなるし、侵害する側にもなりうる重要な要素です。クリエイターは合法だと思って自然と著作権違反をしていることは多々あります。例えば同人やパロディも本来はほとんどが違反状態であることもそうです。


今回の件については、権利者が訴えない限りこの後に何かが起こることはないでしょう。ただ、今回の件はクリエイター関連業界の人たちにとって、著作権に対する意識を高める機会にはなるかもしれません。

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