本12 ステキな奥さん ぶはっ 伊藤理佐
創作意欲が湧く作品がある。
音楽にしろ文章を書くことにしろ絵を描くことにしろ。
ボブ・ディランの音楽をはじめて聴いたとき、恐れ多くも「この程度なら自分もギターを持って歌えるんじゃないか」などと思った中学の頃。
だが、その発想は大やけどの元であった。
知らないって恐ろしい。同時に、怖いもの知らずで大海に飛び込む猛者も
世間にいることは確かだ。それで成功している者も少なからずいることも知っている。
朝日新聞で連載されているこのコラム。益田ミリさんとかわりばんこに掲載されている。
ご両人のコラムがとてもいいのだ。
私は以前、やはり益田ミリさんの本も図書館から借りてきて読んだ。
そして今回あらためて伊藤理佐さんのそれだ。
彼女たちの文章を読んでいると、世の中って悪いことばかりじゃないと、つくづく思う。
どうってことないくだらないことを赤裸々に語ってくれていると、いまここにいる自分ととても地続きな感じがするのである。
つまり身に覚えがあるのだ。
どうってことないくだらないこと、と書いたが、読めばわかるがそれらのエピソードが大層おもしろい。
まあ、おもしろく書くプロだからあたりまえなのだが、あまりにもナチュラルにやってのけているものだから誰もがこういうことを出来ると思ってしまいがちである。
いっけんくだらなそうに見える出来事がちょっとした技でおもしろいエピソードに化ける。それがつまり芸というもので彼女たちはそれをひけらかさない。そのへんにも好感がもてる。
ずーっと読んでいたくなる文章である。
こういうことって、なかなか出来そうで出来ない。
ボブ・ディランの曲をまた聴きたくなった。