世界は終わりそうにない 角田光代 本23 2021-4
いつも思う事だが、角田光代さんの文章は音楽を聴いているみたい。小説はもちろんだが、その音楽性はエッセイでより発揮されているように思える。
本書も、読みながらその音楽性に幾度か鳥肌が立ち感動する場面が何度もあった。
日常の話、本の話、旅の話、食べ物の話。そのどれもが色とりどりでリズムがあって、角田節満載である。
その中で僕がもっとも印象に残ったのは、旅の話だ。
角田光代は海外の所々でいろんな人にいろんなものをご馳走になったようだ。一期一会だから、彼らにお返しをしようと思ってもなかなかその機会も得られない。しかし彼らはいう。僕らも昔、いろんな人にご馳走になった。だからあなたもこの先、僕らにではなく、誰かに奢ってあげてください。それが僕らへの恩返しになります、と。
これは何も旅の話だけではないな。自分はあまり旅をしないが、日頃暮らしていて困ったことがあって誰かに助けてもらった時、その人に恩返しするのは勿論大事だが、なかなかそれも出来ない時に、他の誰かを同じように何らかの形で助けてあげられることが出来れば素敵なのではないか。
それがつまり、自分を助けてくれた人への恩返しになるのだろう。