クリームパスタの奥行、ひと品ごとの驚き。ドルチェまで隙なく、ひと皿ごとに、めくるめく美味にひたる時間。
幕開けの「夏のレモンスカッシュ」の
とろりとした甘さの厚みは、
その日のコースのクオリティを予感させた。
Stuzzichinoと書かれた前菜前の
スナックは、「鰻パイ」(見出し画像)。
那須育ちとは思えぬ、ふっくらと
焼かれた鰻の身を、じんわりと味わってから
サクリとしたパイ生地を合わせると、
その軽さに、なお鰻のタレ焼きの
甘く濃い味わいが浮き立つ。
前菜の、サラダの中に映えるオマール海老を
プリリと噛みしめれば、
レモンのクーリ(ソース)が、
官能的な甘酸っぱさで
くねくねと味覚に入り込み、
舌に絡みついて伸びる。そこに、
美しくナイフを入れられたアボカドを
寄り添わせれば、やわらかな
触感を歯が受けとめたあと、
舌と頬の間でにゅるりと
溶け合う海と土の幸の二重奏が
口のなかであふれる。
そして、
驚いたのは、クリームパスタの奥深さ。
そのクリームのなめらかな舌触りと奥行は、
これまで食べたクリームパスタを
忘れさせるかのように広がり、
まろやかな渦に引ずり込まれていく。
ころりとした海老の甘さも、
アルデンテのリングイネも
取り込んでしまう
豊か過ぎるクリームの濃厚さは、
艶やかに舌を包んで、
喉でもぎゅっと味わったあと、
心地よくその向こうへすべっていった。
薫り満ちる燻製天然真鯛のグリル感が、
焼き茄子のグレープフルーツサルサ(ソース)
の爽やかさと足並みを合わせる魚料理を過ぎて、
炭火で焼かれた立川産
“柔豚(やわらとん)”のロースは、
ゆっくりと肉の繊維を裂く心地よさと共に
旨みある脂の肉味を滴らせながら
いつしかネクタリアン(桃)と、
とろり溶け合う。
ひと皿に共に盛られた
夏野菜のトマト煮込みの冴えを加え、
肉にも引けをとらないマッシュポテトの
ぽってりとした甘味が追い打ちをかける。
レモンの皮とジュースを練り込んだ
フィナンシェを再び焼いたという
香ばしさとほどよい弾力が、
愛しいほどに口を喜ばせた
ドルチェで、
またしても最後に目をひらき、
そして細めた。
「ソラノホテルTACHIKAWA」11階
「SORANO ROOFTOP BAR」。
窓の外にインフィニティプールで遊ぶ
人たちが見える異空間の
カジュアルフレンチ。
もう一度、間違いなく行く。
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