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あなたは滝沢カレンさんを笑えますか?

■「いみじい」という造語

「いみじい感情」という
室尾犀星「性に眼覚める頃」の一節を
「夏の終りから秋の初めに移る季節」の
「エモい」感覚の表現として語った
先日の「言葉にできない、そんな夜。」。

この「いみじい」は、
(悲し・うれし共に)心が甚だしく動く、
という意味の古語「いみじ」から来ていると
言っていたが、
それでもこれは室尾犀星独自の
造語であることに変わりはない。
しかしこれは、
あくまで文学空間での出来事だ。

■笑ってるあなたが滝沢カレン

誰もが何度も繰り返し発する
ステレオタイプな
言い回しを使うよりも、
よほど個性的だと思う
滝沢カレンさんの日本語は、
「変」だとインターネット上で指摘されるが、
彼女に対するあるインタビューで、
質問する側の言葉遣いを聞いていると
滝沢さんの8割くらいは
「変」な言い回しや
間違った助詞を使っていた。

少なくとも滝沢さんの表現を笑う方の多くは、
それに気づいていない、のではないか。 

■日本語は“マイ日本語”になる

私は、20~40代が平然と使う、
気持ちは分かるけど誤りは誤り、の慣用句を
「フェイク慣用句」と呼ぶ。

「冬にはもってつけの」は某社プレス、
「怒り奮闘」は某アーティスト、
「働きづくし」は某NHKアナ、
「外ゆき」は某シンガー。

この私的な言葉の創作は、
日本語を共通の単語や言い回し、
決められた文法を用いて話すのではなく、
それぞれが勝手に自分で作った言葉を使い、
自分だけに許された文法で話す
「マイ日本語」の誕生を予感させる。

それどころか、

読書時間が減少し、
スマホで言語が刹那的になり、
国語で何を教えているのか分からない
事態が生じるなか、
もうこの「マイ日本語」の雪崩現象は
避けられないとさえ思う。

滝沢カレンの日本語を笑える日本人は、
本当は
もう残り少ない。


※敬語の喪失や語彙の枯渇、平板読みに代表されるアクセントの崩壊、
    複合語の分裂などの諸現象を含む。

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