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最期の虹。

■母と見る最期の虹と思わずに

この俳句で私は、
久しぶりに「サンデー毎日」(2024年6月2日号)の
週間ナンバーワンである
「サンデー俳句王」を獲得した。
選者は俳人の堀本裕樹 さんだ。

しかし、その評の内容は、
私の俳句とは真逆の展開を見せていた。

■最期の虹になった虹

堀本さんにとっての「最期の虹」は、
まさにお母さまと最期に
見た虹だったのだ。

母と一緒に虹を見ているときは「あ、虹」「きれいだね」という日常の一コマにまぎれてしまうような場面でした。しかし、後から振り返ると、あの虹が母と見た最期の天の七色だったのです。まさかあの虹が最期になるとは。いかに母との時間が貴重であったか。虹を見つめる母の表情が儚く、切なく蘇ります。

「サンデー毎日」(2024年6月2日号)

■「最期」の、ライブラリー

もちろん、私の俳句も
堀本さんと同じような
状況設定で読めなくはない。
しかし私の場合は、
母に虹を見せようと
障子を開けながら、
「これが最期じゃないよな」と
思った虹だったのだ。
「最期」には、そんな二つの
情景があるのだと私は、
堀本さんの評で気づいた。
      *
振り返って、「あれが最期だったんだ」と思う虹。
明日を思って、「これは最期じゃない」と願う虹。

別に母との関係でなくとも、
「あれが最期だった」と思う場面がある。
そんな一人ひとりがいる。
そんな一人ひとりの「最期」の思い出を収めた
ライブラリーが、
心のどこかに確かにある。

振り返るそこに、
あの人がいて、
明日を仰ぐ先に、
大切な人がいて、
やがて自分自身が
振り返られる
人になり、
いつの間にか
最期の虹を
見ている。

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